中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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かっぱ寿司問題!

「カッパ寿司」問題が世間を賑わかせている。同じ業界の経営陣が営業秘密持参でライバル社の社長に就任していたら業界の秩序が乱れるのは当然であろう。特に外食業界は雇用の流動化が活発で会社に対する忠誠心が少ない人が多い。

 

だから平気で裏切って同業に転職する人が後を絶たない。7400億円ある人気の回転寿司市場。過剰な競争の中で手段を間違ったようだが、老若男女と幅広いお客さんに支持されており、特にお子さんはいつも楽しみに来店されている回転寿司。そういったお客さんの期待を裏切らないように願いたい。

 

 

外様がライバル社の営業秘密を武器に「かっぱ寿司」に招聘された。生え抜き社員はこの現実をどう受け止めたか。新卒で入社しこの会社一筋に頑張ってきた社員、社長や会社に対しても忠誠心が高く忠実にイエスマンとし、自らを犠牲にして頑張ってきたのに、卑怯な手口で目標としていた社長の座を奪われたら、すごい挫折感と招聘を選択した創業社長を恨むであろう。

 

私も外食チェーンで勤務していた経験がある。勤務していたその会社の創業オーナーはブランド好きで有名外食企業で実績を上げた著名な経営者をヘッドハンティングして営業本部長として自らの下に就けてきた。招聘する際は三顧の礼でお迎えし結果を出せなかったら1年サイクルで更迭するといった冷徹な方であった。だから大概の古参社員や時期幹部候補生はお客さんを見て仕事をするのではなく、自分の保身と出世欲の為に社長を見ながら仕事をするといった悪しき社内雰囲気が定着していた。

 

異例の大出世をとげた原動力は、不正に入手したライバル会社の営業秘密というが、そもそも不正競争防止法による営業秘密とは、①秘密として管理されている[秘密管理性] ②生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報[有用性]であって、 ③公然と知られていないもの[非公知性]と定義しており、この3要件全てを満たすことが必要らしい。

 

だが、今回の仕入れデータがこんな事件になり逮捕されることになるほど必要だったのだろうか。商品部や購買部に行けばいくらでも持ち出せるのではと思うが回転寿司業界では相当に重要なデータだったのであろう。

 

外食チェーンにある運営マニュアルや調理レシピは特に重要な営業秘密として管理されていない外食店は多い。模倣が容易で流行るとすぐに追随される外食業界。知的所有権で保護することまでは費用対効果から勘案してしていない。しても商標権くらいであろう。

そんな業界で、離職者が調理レシピ、創業来の秘伝のたれやソース、サービスマニュアルといった本来秘密にしなければいけないものを転職先に平気に渡す中堅クラスの社員は多いと思う。営業秘密に関する意識が低いから罪悪感もない人もいたと思うが、今から考えると怖い話である。

でも、ここまで企業イメージを低下させるほど営業上必要だったのかが不思議である。自社のイメージ低下による客離れで発生する機会損失により生じた売上の大きな損失、また、はま寿司に対する損害賠償額を考えると、取り返しのつかないことであろう。自らの今まで築き上げたキャリアも台無しである。

 

写真はスシロー。

2021年の回転寿司業界の勢力図を見ると売上で1位・スシロー、2位・くら寿司、3位・はま寿司はいずれも1000億円を超えているが、続く4位のかっぱ寿司は約648億円と話されている。しかも最近のかっぱ寿司は、業界大手一人負けとも言える大幅な赤字が続いており、その巻き返しに倫理観の欠落したことをしてしまったのであろう。

 

昔は回転寿司と言えば「かっぱ寿司」でTVのCMでも頻繁に流れていたので絶対的な位置づけを持っていたと思う。それだけに今回の事件は寂しいものである。一度、失墜した信用を取り返すのは相当に大変だが、頑張ってほしい。