(2025年8月17日作成記事)
東京商工リサーチの調査によると、2024年の居酒屋の倒産は276件発生し、2年連続で過去最多となっている。物価高騰などで生活が苦しく節約志向の高まりで外食離れが進む中、夜の時間帯がメインである居酒屋はより経営が厳しい状態だ。加えて、業態の陳腐化や若者のアルコール離れ、仕入れ価格の上昇、人手不足と人件費高騰、エネルギーコストの増加、会社の交際費の削減、大規模な宴会の減少、働き方の変化による飲み会の減少など業績悪化の要因は枚挙にいとまがない。元々、コロナ前から居酒屋の需要は低下しており、今後も経済的・社会的要因から回復するとは思えないのが実情。今回は業界に逆風が吹く中で、成長著しく業績を大きく伸ばしている株式会社串カツ田中ホールディング(以下、串カツ田中HD)を取り上げたい。
串カツ田中HDとは!
2008年に創業し、2018年にホールディング化して東証一部に上場した串カツ田中HD。2025年3月1日付で、連結子会社の株式会社串カツ田中を存続会社として株式会社セカンドアローを吸収合併。グループの経営資源の集中と有効活用を図り、事業領域の拡大を目指した新業態の開発を加速させる狙いだ。セカンドアローは、鳥と卵の専門店「鳥玉」、タレ焼肉と包み野菜の専門店「焼肉くるとん」を運営していた。現在、傘下ブランドの店舗数は串カツ田中 332店舗(直営170店舗)、鳥玉3店舗、焼肉くるとん 2店舗、サンドイッチのTANAKA3店舗、新業態の京都天ぷら 天のめし、厚切りとんかつ厚とん、京都和牛とんかつ天のめし、京都すき焼き天のめしは各1店舗となっており、合計347店舗だ(25年7月末時点)。新業態は将来に向けて実験段階中のようである。経営陣の中には、とんかつチェーン「かつや」の元社長で現在は再生請負人として知られる臼井氏も社外取締役として名前を連ねている。
24年11月期(23年12月~24年11月)の決算資料(通期)を見ると、
串カツ田中HDの売り上げは168億6422万円(前年同期比+19.8%)、営業利益は8億4794万円(前年同期比+11,1%)、営業利益率5.0%を計上。今の時期に売り上げ約20%増は驚異的な伸びだ。
事業セグメント別では、
コア事業の串カツ田中の売り上げは、150億7004万円(前年比114.3%)。内訳は直営店売上113億円1501万円、FC商品売上 28億6211万円、ロイヤリティ収入 5億6836万円、その他 3億2455万円)となっており、客数の増加や新規出店により売り上げが増加している。利益も原材料高騰への対策も商流と物流を改革し、安定確保している。国内その他事業は 5億5773万円(前年比128.8%)、新事業のハウスミール事業(総菜の製造と配送)の売り上げ構成比は1.6%程度の2億6866万円とまだ僅かだ。内装工事事業は売り上げ16億1148万円、(前年比233.5%)とグループ内外からも積極的に受注しているようだ。
好調な勢いは今期に入っても止まらない!
串カツ田中HDの25年上半期(24年12月~25年5月)は売り上げ102億9,913万円(前年比128.0%)、営業利益6億7674万円(前年比149.9%)と驚異的な伸びだ。売り上げの約8割を占める串カツ田中の売り上げは83億4725万円(前年比112.4%)、営業利益は6億9950万円。 国内その他事業は売り上げ3億6361万円(前年比146.4%)。新業態の開発で先行投資の負担で営業損失が1億2749万円発生。24年5月に開始した ハウスミール事業はキッチンの生産性向上と稼働率向上が図られ、売り上げ6億1181万円、営業利益3393万円。 内装工事事業は新規店舗出店やグループ外部の受注が増加しており、売り上げは10億7141万円(前年比150.7%)、営業利益は7448万円だった。
看板事業の串カツ田中の特徴は!
同店は大衆的な串カツ屋で競争が激化する大阪西成区で先代の田中勇吉氏が独自に開発したレシピを伝承しながら、店を磨いてきた。「串カツ田中を世界に」を目標に、2008年12月東京世田谷に1号店をOPENしたのが始まりである。同店は呑み客だけでなく食事客の来店も多く、繁華街店舗では串カツを片手にビールを楽しむ会社員、郊外型店舗では食事やたこ焼き・ソフトクリームづくりにチャレンジするお子様連れの家族連れなどで賑わっている。幅広い客層に対応するメニュー政策で、居酒屋需要とファミレス需要の両方を取り込んだ串カツ専門店だ。昨年末に実施した創業祭など各種キャンペーンの実施、4月から販売した新名物「無限にんにくホルモン串」の効果が出ている。直営店は売上+18.2%と著しい伸長だ。その成長は客数が+16.3%と伸びているのが要因だ。客単価はほぼ横ばいの+1.7%となっており、この物価高騰で他店が値上げに踏み切る中で、価格を上げずに客数増で売り上げを伸ばしたことが功を奏したようである。
商品価値は!
串カツの基本となる衣・油・ソースはすべてオリジナルである。チェーンとしての統一性を順守した店舗運営で、どの店でもブレがなく味は安定している。メニューは串カツを中心に、一品料理や食事メニューも充実しており、田中のかすうどんも好評だ。子供たちにはソフトアイスなどデザート関係も喜ばれており、宴会コースで食べ放題・飲み放題プランもある。また今は新名物「無限ニンニクホルモン串」の販売が絶好調で、販売3か月で累計販売数500万本を突破する人気メニューだ。この商品を目当てに来店されるお客さんも多く、お酒と相性抜群でお酒好きにはたまらない酒の肴だ。SNS上でも「本当に無限に食べられる!」「お酒のお供に最高!」と、多くのお客さんをやみつきにさせている。
ロスリーダー品を効果的に活用した価格政策
節約したいからと割高感がある居酒屋を避けて家呑みが増える中、来店しやすい目玉商品を訴求し吸引力を強化している。また、単身者世帯比が高まる社会構造の中、独り呑みが高まっており、そう人にはコスパの高い「せんべろ」があることが、店の選択基準となっている。同店の平日18時まで実施している「ハッピーアワー」は、ジムビームハイボールとこだわり酒場のレモンサワーが、1杯90円(税込99円)で堪能できて財布にも優しく、最強のコスパとされている。これらも客数増加に大きく貢献しているようだ。
また揚げるというシンプルな調理に限定されていることもあり、コックレスを基本とした運営でローコストオペレーションによる運営を実現している。その低コスト化で安価な価格を実現できている。このコスパの高さが競争力の源泉で支持される理由であろう。
ターゲット(客層)は!
ご家族、会社員、一人客など様々な客層に浸透し、飲み会、食事など様々なシーンでご利用されている。客層別売上構成比で、多い順から見ると、家族連れ34.3%、会社員・男性グループ16.1%、一般男女グループ 20代14.0%、一般男女グループ 30代~13.2%、カップル・女性客グループ9.3%となっている。
出店戦略は!
業態の特徴から様々な立地に対応が可能であり、人口10万人以上の規模であれば採算が取れると判断。現在の出店立地をタイプ的に分類すると、住宅街77店舗、大規模繁華街12店舗、繁華街180店舗、駅施設27店舗、商業施設16店舗、ロードサイド26店舗となっている。出店地域は、北海道25店舗、東北21店舗、関東 242店舗、中部 85店舗、中国 31店舗、関西 223店舗、四国 8店舗、九州 27店となっており、需給バランスに応じた適切な出店体制だ。
今後に向けて!
串カツ田中は今後の更なる業績向上に向け、DX×人事戦略による収益改善、FCビジネスの強化、急速に拡大するインバウンド需要の取込、などの対策を講じている。特に店舗は「人と運営の仕組み」で栄枯盛衰が決まるから、DXの推進と人材の効果的活用に、より力を注いでいる。ES(従業員満足)=CS(顧客満足)の基本を徹底し、人材の質的向上を図り生産性を向上させる施策を講じている。現在、働きがい改革の一環として、KTリーグを開催中だ。これは各店が「笑顔で頂点を」を運営テーマにして競わせることで、店舗の活性化と顧客満足度を追求している。また地域密着型を前面に出し、地域貢献や地域の人々に未来永劫的に愛顧される店づくりに向けても活動を強化中だ。また、スポンサーとして店舗への支援や店舗と共に地域活性化に向けてコラボしてくれる団体・企業との連携も強化。店舗従業員はスポンサー企業のロゴ入りユニフォームを着用して営業、スポンサー側従業員には割引特典を付与するなどより関係を強固にしている。笑顔×地域活性化を店舗運営のテーマにして、今後も更なる成長が期待できそうだ。


