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味噌らーめんに特化し勢力を確実に拡大する「麺場 田所商店」

味噌らーめんに特化し勢力を確実に拡大する「麺場 田所商店」

「麺場 田所商店(以下、田所商店)」は日本古来の食文化でもある味噌にこだわる味噌屋の息子が立ち上げた味噌らーめんに特化したチェーン店だ。国民食でもあり市場も安定成長し、圧倒的なリーダー企業も不在で群雄割拠のらーめん市場の中で、味噌らーめんとしてのブランドポジションを明確にしている。味噌に特化することで他店との差別化を図り、「味噌らーめん=田所商店」と想起するコアなファンも増加中だ。こだわりのある味噌に一点集中しながら、サイドメニューも拡充しバリエーション豊かで飽きの来ない商品構成に仕上げて集客力を強化。唯一無二の味噌らーめんと、来店客の殆どが注文する看板メニューである「味噌漬け炙りチャーシュー」など、ここでしか味わえないインパクトがある商品で競争が激化する中でも存在感を発揮している。

 

 

田所商店とは!

2003年に千葉県で1号店を開業し今年23年目だ。営業基盤を段階的に確立しながら、2010年以降にはフランチャイズでの展開を本格化。その後、2019年の109店舗から急速に拡大させ、コロナ禍(2020年)でも競合他店が既存店の営業見直しや出店を控える中でも、出店を続け2023年までの4年間で1.5倍に急伸させた。その勢いは今も止まらず今年4・5月の出店予定も入れると国内194店舗(2026年5月末)と驚異的な伸びである。

運営元は株式会社トライ・インターナショナル。「味噌を通して世界の食文化を豊かにする」を経営理念に、味噌らーめん専門店の直営店経営とフランチャイズ事業及び、自社工場での各種味噌・タレ類・食材や加工食品の製造・卸売などが事業内容である。全国の味噌蔵と連携し、地域の伝統と職人の技を未来へつなぐことで、日本の発酵文化の発信に力を注いでいる。社長の田所史之氏は、ラーメン・居酒屋で起業し、バブル崩壊で挫折した経験がある。その後、フランチャイズ事業で勤務した経験と実家が味噌の醸造を家業としていたことで味噌を商材とすることに決め、味噌らーめんに特化した田所商店を開業し、再スタートしたのだ。2025年12月には宮崎を拠点として、140年に渡って味噌や醤油など発酵食品を製造してきた老舗企業である早川しょうゆみそ株式会社の発行済全株式を取得。老舗企業が有する発酵文化と技術を継承しながら、味噌事業を補強している。チェーン売上高(2024年度実績) は166億円(その内、海外売上高10億円)だ。財務状態(2025年3月期の貸借対照表)を見ると、自己資本比率が9.6%と過小で、さらに今年2月には減資を予定するなど、資本の安定性が低い。出店を積極拡大しているチェーンは出店費用などで、借入依存度は高めになりやすい。そのため、田所商店は他人資本を活用したFCによる出店を進めているが、その割には負債比率が高いのが心配だ。事業基盤の強化や店舗のFC店の経営の安定成長を優先し、本部の収益を後回しにしているのではなかろうか。本部とFC店が一体となって目的を実現するためには、中長期的視野に基づき、相互が利益を適正に分配し、将来に備えた財務管理は必須条件。本部が盤石な財務基盤を有していないと、有力なFC店舗の出現で力関係が逆転する事例もあるから要注意だ。不測の事態に備え財務構造の見直しが必要ではなかろうか。

田所商店のこだわり味噌とは!

店舗で用いる基本となる味噌は、北海道味噌・信州味噌・九州味噌・江戸前味噌・伊勢味噌など5種類。ここから各店舗は地域性や市場ニーズに適合させた3種類の味噌を選定しメニューを構成している。

北海道味噌は、塩味がやや強くコクと深みに特徴のある味噌。トッピングは北海道にちなみ、ポテトがのっているなどユニークで、その話題性からSNS効果を発揮。一番人気は北海道味噌炙りチャーシュー麺で、シンプルな北海道味噌らーめんも人気だ。

信州味噌は、全国にある味噌の生産量の約35%を占める淡色でやや濃口味噌の代表的なもので、やや酸味のある芳香を持つのが特徴。トッピングには信州にちなみ、山菜がのっており、人気は山菜たっぷり信州味噌らーめんだ。

伊勢味噌は、岡崎八丁味噌の流れを汲む、豆味噌をベースにした合わせ味噌。熟成期間を長く掛けて仕上げており味は濃厚で特有の渋みを持つ奥深い旨味が特徴の味噌だ。トッピングは三重県にちなみ、あおさがのっている。あおさ香る伊勢味噌らーめんが人気だ。九州麦味噌は、九州地方は麦味噌の主生産地で、温暖な気候のため熟成期間が短く、
甘口味噌が多く色は淡赤色までに限られているのが特徴。トッピングは九州にちなみ、さつま揚げがのっており、大きなさつま揚げ九州麦味噌らーめんが人気だ。

江戸前味噌は、甘みを醸し出す味噌で、たっぷりの麹を使った甘みと少ない塩分が特徴である。トッピングには江戸前にちなみ、大判のりとあさりの甘辛煮がのっており、甘みが特徴の江戸前味噌らーめんが人気だ。

 

 

田所商店のマーケティング戦略を見ると、

商品戦略は、こだわりの味噌を手間暇かけて仕込んだ本格スープと麺は太めの黄色い縮れ麺のらーめんが特徴である。それぞれの味噌に対して「味噌漬け炙りチャーシュー麺」「肉ねぎらーめん」「野菜らーめん」など、豊富なメニューが用意されおり、しかも味噌炒飯や味噌唐揚げなど他店には模倣困難な商品だ。絶妙な濃厚加減で、濃すぎることなく、飽きずにスープを飲めると評価も高い。厚めで歯応えのあるチャーシューや玉子も味噌漬けにし、徹底した味噌へのこだわりを持っている。味噌の産地別や地域ごとの特徴を打ち出し、種類も豊富で飽きの来ないメニュー構成は来店頻度も高める。地域や季節限定の味噌らーめんやご当地の味噌らーめんも販売しており、今は京都雅味噌らーめんや沖縄味噌ラーメンを販売中である。

価格戦略

信州味噌ラーメンは注文しやすい800円、北海道味噌漬け炙りチャーシュー940円~1,240円などとリーズナブルな価格である。らーめんの提供価値と顧客の納得性を重視する田所商店はリピート率の向上に向けてお手ごろ感を重視した価格だ。1000円の壁を意識し、値上げを躊躇するラーメン店ではあるが、客側もこの歯止めがかからない物価高では1000円突破は仕方ないと許容する意識が高まっている。強気の価格戦略に出てくる店も多いが、田所商店はあくまでも顧客視点によるプライシングだ。

販促戦略

店舗では公式LINE導入店で友だち追加すると割引やトッピングサービスが配信される。お笑いコンビのたんぽぽ・川村エミコさん出演のTVCMも放送中だ。親しみやすさと自然体の魅力に加え、川村さんも味噌の価値と発酵食品への関心が高く田所商店への思いも強いから選ばれたようだ。

立地戦略

店舗数は国内194店舗で、北海道・東北8店舗、関東88店舗、中部32店舗、近畿21店舗、中国18店舗、四国3店舗、九州21店舗に出店しており、北海道・東北エリアと四国エリアが手薄な出店状況だ。海外へもアメリカ7店舗を中心に10店舗を展開中。国内は「蔵出し味噌 麺場 田所商店」、海外は「Ramen Misoya」のブランドで展開している。国内のラーメン店市場の立地タイプ別での伸び率は微妙に変化しており、都市型店舗が約45%(伸び率+3.1%)と中心だが、ロードサイドが約33%(同+2.4%)、商業施設が約12%(同+4.7%)、海外展開が約10%(同+6.3%)となっている。やはり海外市場の開拓を、今後の成長ドライバーとするチェーン店が多いようだ。田所商店もまだ数は少ないが海外市場の開拓を図った出店戦略を推進中である。

顧客・店舗戦略

孫の代から親世代・祖父母世代と、3世代にわたり支持される店づくりを徹底。幅広い年齢層のお客さんに支持され未来永劫的な店舗運営をしていく仕組みの確立を目指している。薬膳としての効果がある味噌をどの世代でも美味しく食べてもらえるよう商品化。店内は清潔感があり、快適に食事ができるように店内を設計。店舗レイアウトはカウンターとテーブル席のバランスを最適化させながら、一人客とファミリー客の需要を取り込んでいる。単にらーめんが美味しいだけでなく、接客サービスも含めてトータル商品としての質的向上に向けた各施策を実施中だ。

 田所商店の店舗展開の原動力はフランチャイズシステム!

フランチャイザーとフランチャイジーは運命共同体と標榜し、「共に成長・共に繁栄」をスローガンに掲げている。単にらーめん店の店舗網を拡大するのではなく、「味噌らーめん専門店」を通じて、味噌の文化と共に世界に広めていくことを目的にしたチェーン店だ。他人資源を活用しながら、それぞれが共通目的の達成に向けて、貢献意欲の喚起とコミュニケーションを図りながらブランド力を高めている。フランチャイズ店のポテンシャルを最大限に引き出し、成功の再現性を組み入れたビジネスモデルを提案し、共に成長する事業体を構築。もちろん、チェーンとしての商品力を統一する為に食材調達は指定され制約はあるが、ロイヤリティは必要がないのは、店舗にとってはやればやるだけ自らの利益になるからモチベーションも高まる。加盟金の150万円ももこの儲かるビジネスモデルからすれば、安価で投資回収速度も速いから経営的には嬉しい。2店舗からは100万円だから出店意欲も増すであろう。収支モデルとして直営店約30坪(36席)の実績を紹介しているが、月売り上げ1,100万円、年商1億3,200万円、月営業利益180万円、年間利益2,160万円、営業利益率16.4%の高収益だ。もちろん、様々な不確定要素や立地条件により、実際とは異なる場合があるだろうが、2店舗目を出店するオーナーが多いのは、この高収益のビジネスモデルに追加出資する価値があることである。平均客単価は1,150円、12時間営業で客席回転率は平日9.7回転、休日13.9回転で標準値よりも坪効率は高い。

 

 

田所商店のFC運営上の強みは!

FC店舗との強固な関係構築

店舗数の82%(2023年7月時点)がFC店舗と圧倒的にFC加盟店の比率が高い。業界素人でも経営可能なFCパッケージとして開発された商品レシピや運営ノウハウなどを独自の食材と共に提供。そして本部の運営指導で売上が順調に伸び収益力を高められている結果が、出店意欲の高い加盟店を呼び込んでいるようだ。また、7割以上が同一オーナーによる多店舗化による出店である。FC加盟の成功のバロメーターでもある同一オーナーによる多店舗化を実現できていることは、儲ける仕組みが確立されたビジネスモデルであることの証だ。

味噌らーめん専門店のパイオニアとしての市場での位置

味噌の醸造からお客様へ提供する商品まで一貫した流れで、味噌らーめん専門店としてのフランチャイズパッケージを構築しており、業界においてもオンリーワンの存在として認知されている。それだけでなく、歴史ある味噌蔵・醸造所の運営も手掛けており、味噌や発酵に関わる分野の中で高い専門性を有している。代々受け継がれた伝統製法と、それを守り続ける職人の醸造技術・知識・経験やノウハウなど無形資産の価値は高い。

健康にこだわる商品開発を可能とするチーム

管理栄養士からなる商品開発チームにより、乳酸菌やオリゴ糖、穀物酢、果実酢などを素材に加え、免疫力の向上や腸内環境を整える商品を開発。他にも低糖質麺やサラシア等を取り入れて、親子三世代の健康を意識した様々な健康への効能を考えた商品づくりを徹底。健康ニーズの高まる今の時代に合致したらーめんは強みである。

最後に!

2024 年度の国内のラーメン市場規模は約7,900 億円(2024年度)であり、10年前の1.6倍に成長している。圧倒的な市場シェアでイニシアチブを握るリーダー企業が不存在で、群雄割拠の競争環境だ。田所商店の他にも、積極的な出店戦略で店舗数を急伸させ注目されるラーメン専業チェーン店が3社ある。その中で1番の丸源ラーメン(239店)には及ばないが、山岡家(198店舗)魁力屋(192店舗)とは競り合っている状態だ。

中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格上昇や円安傾向が続く中で、将来不安を感じて家計防衛に必死の人は多い。しかし、ここでしか食べられない価値あるらーめんを提供する店には価格は惜しまないといった消費の二極化も進展。付加価値を創造できる店は、価格競争に埋没することなく非価格競争でも優位性を確保できる。そういう店を田所商店は目指している。

高級店と揶揄され客離れが進むCoCo壱番屋の成長戦略は!

高級店と揶揄され客離れが進むCoCo壱番屋の成長戦略は!

「世界で最も大きいカレーレストランのチェーン店」としてギネス世界記録に認定されたCoCo壱番屋(以下、ココイチ)が値上げの頻度と上げ幅率の高さから、客数の前年割れが止まらない。ココイチのカレーは美味しいと認知され、「カレーはココイチ」と絶対的なファンも多いが、節約する人が増える中、高過ぎて行けなくなっているのではなかろうか。外食店にとって客数の減少は営業基盤の脆弱化を意味し、値上げによる客単価の上昇でその場の売り上げは確保できても、店を将来支えてくれる顧客の減少は将来性・成長性の観点から懸念される。

株式会社壱番屋の経営状況は!

ココイチの運営元である壱番屋は約1割の直営店運営とFC加盟店への食材などの卸が中心だ。26年2月期決算書を見ると、売り上げ650億円(前年比+7.4%)営業利益47億円(前期比-4.3%)、と増収減益。営業利益率7.2%(前年比-0.9%)だった。財務基盤は自己資本比率が67.0%と盤石状態を保っている。ROE(資本効率)は8.0%で、当期純利益が前年より−19.2%だっただけにも2.1%低下している。店舗の売り上げは1,183億円(前期比+2.5%)で、その内、84%が国内の売り上げだ。

事業内容は、ココイチを中核にしながら将来の企業成長に向け、新たな業態開発に取り組み、あんかけスパゲッティ専門店「パスタ・デ・ココ」などを自社で開発し出店。海外市場への展開など新規市場開拓にも積極的で、タイ・台湾・韓国などを中心に218店舗展開中でグローバルな事業基盤も強化。2015年、さらなる成長を目指し、強力な仕入れ先と協業先でもあったハウス食品の子会社となっている。経営基盤を盤石にしながら、将来を見据えた成長戦略を推進するため、2023年からM&Aを駆使し多業態戦略にも力点を置き、成長が鈍化するココイチを補っている。現時点(2026年3月末時点)で、ラーメン店・ジンギスカン店など異業態を80店舗運営している。

 

 

 

セグメント別に見ると、

国内事業は、直営店とフランチャイズ加盟店を合計したグループ全体の店舗売上高は、全店ベースで929億円(前期比 +1.0%)となり、既存店ベースでは前期比+0.5%だ。2024年8月に行った価格改定以降、客数が前年の水準を下回って推移する中、幅広い顧客層の来店を促すため に、アンバサダーである俳優・山田裕貴さんが出演するテレビCMを放映中だ。「ウルトラマンシリーズ」とコラボした「ウルトラ創業祭 2026」の開催など、様々な販促活動を実施した結果、既存店ベースの客単価は前期比+4.2%と上がったが、客数は前期比3.5%減となった。今後は、高止まりする仕入価格・物流費・人件費などの様々なコスト上昇や、新規出店費用の高騰などで、厳しい経営環境が続くものと想定し、①飲食店の基本となるQSCの向上に注力、②効果的なマーケティング戦略を立案・実施することで新たな顧客層の開拓、などに力を入れる。海外事業は、全店ベースの店舗売上高は新店の売上が好調であったこともあり、190億円(前期比+2.4%)となったが、為替の影響を除いた既存店ベースでは前期比(-0.4%)を下回っている。出店は台湾や韓国等で新規出店が22店舗あったものの、中国、台湾、タイなどで不採算店舗の退店が20店舗あり、店舗数は218店舗となった。今後も、①市場規模の大きい北米市場に継続して店舗展開、②中国事業の立て直し、などを強化する。国内子会社事業は買収した異業態を展開中だ。主な異業態の展開は 「旭川成吉思汗(ジンギスカン)大黒屋」の店舗売上高は、19億円(前期比+48.0%)と急増。福岡県にも初出店し、店舗数は11店舗まで拡大。「麺屋たけ井」も店舗売上高13億円(同+31.2%)と急増。店舗数は14店舗となり、ココイチのFCオーナーも新規事業として出店している。 「博多もつ鍋前田屋」も店舗売上高12億円で(同+25.9%)と急増。福岡県内に3店舗出店した ほか、本年2月には東京都内に初出店し、店舗数は10店舗に増加。 「らーめん小僧」などを経営する株式会社KOZOUの店舗売上高は3億円となり、7月に「極濃 豚骨らーめん小僧」を愛知県に初出店し、店舗数は8店舗となった。加えて、昨年12月に札幌、東京などで夜パフェ専門店「パフェテリア パル」などデザート業態にも初参入。9店舗展開する「株式会社GAKU」の株式を取得。「1日の〆に食べるパフェ」をコンセプトとしており、妥協なく手作りしたパーツの魅力を、最大限に引き出す組み合わせのパフェだ。価格が2,000円~3,000円と高付加価値の商品で話題となっているようである。現時点(26年3月)では、ココイチの店舗数1,206店舗が圧倒的な店舗構成比を占めており、M&Aで子会社となって間もないから、売上高構成比はまだ低い。だが、伸長度が高いだけに業績貢献の実現はそれほど遠くないと期待している。今後も、①М&Aで取得した各業態の展開を推進し収益の拡大に注力、②継続して新たなM&A案件の成立、などを目指す。

説明したように、壱番屋はコア事業のココイチを磨き上げながら、多業態戦略にも取り組み、収益機会の増大とリスク分散策を推進中だ。その展開に向けては、自前主義ではなく、M&Aにより早期の展開を目指している。自己資本比率も最高だった2023年2月期の72.0%からは低下しているものの、67.0%と盤石な財務基盤を背景に、まだまだ成長投資となるM&A資金も潤沢に保有している。26年2月期のキャッシュ・フロー(以下、CF)を見ると、前期から22億円減少の130億円だ。これは積極的なM&Aによる有形固定資産の取得(支出32億円)と子会社株式の取得(支出13億円)によるもので成長性を高める投資である。投資CFは-49億円(19億円支出増加)となっているが、その投資があった分、営業CFは+55億円と2億円増加だ。M&Aで取得したブランドは著しく業績を伸ばしており、今後の利益貢献で早期の投資回収が期待されそうだ。

 

 

 

ココイチの強みはカスタマイズ化できる商品価値と独自のFC制度!

経営理念共同体としてフランチャイズ(以下、FC)を効果的に活用すれば、他人資源を活用し店舗網を拡大し大きな経済効果が発揮できるが、訴訟が多いのもFC契約でFC運営はけっこう難しい。最近でも、急速に店舗数を拡大したものの、FCオーナーから本部に対するクレームが頻出し閉店が増えている「鰻の成瀬」などが反面教師となっている。そういった中で、9割がFCであるココイチの事業継続率は9割と高い。その継続できる要因は、商品面と運営面に他社では模倣困難な強みがあるからだ。商品面は、ポーク、ビーフなど5種類のカレーと辛味の増減で自分好みのカレーに調整。その日の懐具合や気分で豊富な品揃えのトッピングを選定するなど、自分好みにカスタマイズできるという商品価値の提供だ。 運営面では店舗の約9割のFCが自らの責任とリスクで経営するから壱番屋としては、低いコストとリスクで運営できるからだ。もちろん、FC店舗の維持拡大をしなければ、収益が減少するから支援策には力を注いでいる。加えて運営上の強みは、独立志向の人に最適なブルームシステムがあるからと言っても過言ではない。加盟者は入社時に資金は不要であり、創業意欲はあるが資金がないといった人には最適なシステムだ。開業時に債務保証制度もあり、経営で一番悩む資金面において本部のサポートが強力なことは魅力だ。さらに独立後には、オーナーが経営を継続できるよう収入面も手厚い仕組みがあり、やりがいが持てる制度だ。ココイチでは、まず正社員として入社し安定した収入がある中で、店舗のオペレーション、人材マネジメントや経営ノウハウをしっかり学習してから独立するから、開業リスクと不安は少なく、壱番屋も安心して店舗を任せられる。また、FC店への食材の卸売りが収益だから、通常のFCなら必要なロイヤリティも必要ない。壱番屋からすればFC店という安定的な販路を確立できて、店舗が儲かるように支援し店を継続してもらうのが収益の安定に繋がり、Win-Winの関係が構築できる。

 

 

 

カレー単一事業から多業態戦略に転換するか!

カレー専門店のイメージが強い壱番屋。さらなる成長を目指し、成熟フェーズのココイチと早期の成長フェーズ入りが期待される異業態のブランドポートフォリオを最適化。そして、それぞれのブランドが有する独自の組織文化を融合させながら、グループ力の強化を狙っている。顧客にグループ店舗の販促やクーポンを配信し、外食機会を創出するといった顧客シナジーだけでなく、コスト・生産・販売・物流でも効果を発揮し、グループ全体の士気も高まりそうだ。壱番屋とFC店の結束力は高くそれはFC脱退率からも如実に表れている。しかし、それも好調な業績があって維持できるもの。今後、FC加盟店支援は多業態への転換も含めた幅広い支援が可能で、こういった新業態の提案までできると、さらに壱番屋とFC店の絆は強くなりそうだ。事実、この新業態の好調な業績を見て、既に2人のオーナーが新業態に出店するなど、壱番屋としてもFC店への支援内容が増えている。

多業態で成功するには!

その多業態を成功に導くためには、「誰に何をどのように」と業態コンセプトを明確にし、強みは何で、どのようなニーズに対して、どうやって競合他店との差別化が図れた価値の持続的な提供ができるかが重要。ココイチのような成熟フェーズでは効率性を追求し利益確保が重要となるが、成長フェーズの業態であればオペレーションも売上至上主義となる。各ブランドが属する市場で、競争相手に対して自店の強みをぶつけ、いかに競争優位性を確保するかが課題となる。品質を優先し価格は従属条件にするか、その反対にするか需要と競争の実態に適した対応をしなければならない。戦略が似通い同質化戦略に陥りやすいケースでは、自店の認知度を高めると共に、競争店とは違う特徴が出せるか否かが生き残りの決め手だ。

消費者の多様なニーズに対応するには、それぞれの市場に適した業態を投入しなければ機会損失が生じるから、経営資源の豊富な外食大手は既に多業態戦略を推進中だ。経営資源が分散し効率性は低下するが、リスク分散になるはず。単一業態だけに依存し特定の市場や客層に偏った業態は市場の変化に脆弱である。変化が生じやすい外食市場に多業態で対応していたら、特定業態が不振に陥っても他の業態でカバーが可能。自社で業態開発能力がなくても、M&Aを活用し時間を節約しながら多様な業態のポートフォリオで成長を目指すのが時流。消費者ニーズが多様化、高度化した現在は各市場や各客層に最適な業態を当てはめ、陳腐化した既存ブランドを新コンセプトの店舗に入れ替えて、収益性を高める必要性がより高まっている。ブームやトレンドに適合させた業態を細分化した市場ごとにタイミングよく投入することも当然。多業態展開する外食企業は、時流に合わせて新業態を開発し、ポートフォリオを組み替えながら業績を立て直しており、いい参考になる。システムや運営ノウハウは共通化でき、且つ調達、物流、店舗オペレーション、人材育成、店舗設計などをグループで統一することで、コスト削減や出店スピードの向上につながり、範囲の経済を発揮できるのは経営的にも大きい。

最後に!

カレー専門店やインド料理店などを含めた「カレー店」の倒産件数は、2024年度に過去最多を更新した。原材料費・人件費・光熱費・賃料などの上昇が続き、価格転嫁が難しい小規模店ほど負担が大きくなっている。日本国内ではマクドナルドの約3000店舗を1.6倍上回るネパール人が経営するインネパ料理店で提供されるカレーの存在感は驚異だ。今回、入管法改正で、経営管理ビザの要件が厳しくなり、激変緩和措置で3年の猶予はあるものの、経営環境は厳しくなってきており、日本での永住や事業経営を諦めて帰国する人も増えているが、今後の動向が気になる。カレーといっても今や単純ではなく微妙なスパイスの組み合わせや独自性あるスパイスカレーなどの本格志向へのニーズも高まっている。カレーの本場インド人も評価する日本のカレー店は相変わらず人気が高い。そのカレー市場でココイチは脅威となるライバルが存在せず、追随者に圧倒的な差をつけて首位の座に君臨している。値上げで高くなったと実感しながらも、ココイチのカレーが食べたいというコアユーザーはまだまだ多い。

止まらない物価高騰に将来不安による家計防衛策の強化で人々の節約志向に拍車がかかっている。限られた外食需要も、とことん安さにこだわる「価格志向」から、高くてもよい品質の料理が食べたいと「高級志向」と、消費の二極化が進展しているが、中途半端に高く商品価値に見合った価格設定になっていない店は客数の減少に歯止めがかからない。お客さんは相次ぐ値上げで店を選別する眼が厳しくなっている。この物価高騰など諸コストが上昇し利益が圧迫される中、多様なニーズに対応した業態を展開し収益機会の増大とリスク分散を図らないと、外食市場で生き残るのは困難と推察される。

カジュアルイタリアン「カプリチョーザ」

 

 1978年の創業以来、「美味しい」「量が多い」「お値打ち感ある品揃え」の商品を、10代後半~60代、お一人様~お子様連れの家族客まで幅広い層から支持されてきた「カプリチョーザ」。店名の由来は、イタリア語で"気まぐれ"という意味の言葉で、「イタリア料理は大勢でワイワイ言いながら食べるのが楽しい」など、そんな陽気で明るい南イタリアのトラットリア(大衆食堂)タイプのイタリアンレストランである。1985年、株式会社伊太利亜飯店華婦里蝶座とフランチャイズ契約を締結し、全国展開を開始した。本場イタリア仕込みの味わいをカジュアルに楽しめるレストランとして、長期に渡ってWDIグループのコアブランドとなっている。

運営元の株式会社WDIとは!

WDIWorld:ワールド「世界」・Dining:ダイニング「食空間」・Inspiration:インスピレーション「ひらめき」)グループは1954年4月設立。レストラン経営及び運営受託とブライダル企画・運営を事業として、売上高は319億円(2025年3月期)と過去最高を更新し、東証スタンダード市場に上場している。WDIは、外食産業の黎明期であった1972年に外食店第1号店として、「ケンタッキーフライドチキン 六本木店」を開店。外食事業に参入して以来、50年以上に渡り「ダイニングカルチャーで世界をつなぐ」を企業理念として、「本物の味」「個性と品格のある空間」「心のこもったサービス」を掲げている。外食を取り巻く経営環境が厳しい中、WDIグループは各ブランドの独自性を強め、高付加価値路線を推進。各ブランドの価値向上を図るため、「Q(クオリティ)S(サービス)・C(クレンリネス)・A(アトモスフィア「雰囲気」)の向上」、「従業員が誇れる職場環境の構築」、「お客様と感動を共有する体験の提供」を行動指針として活動を強化。傘下には26の飲食ブランドを有し、6ヶ国・159店舗(2026年3月末時点)を展開している。来店目的や様々な利用シーンに、グループ内のカジュアル&ダイニングレストランで対応し顧客の囲い込みしている。イタリアン・和食・中華・カフェなど多種多様なジャンルの店が、専門性の高いメニューをフルサービスで提供。店舗数の約6割を占める「カプリチョーザ」以外は、殆どが1ブランド1店舗のみの単独店舗で、多くても5~6店舗である。多くのブランドを展開しながら多店舗化せず、希少価値を醸成させているのが特徴だ。オンリーワンとしての存在価値を発揮しながら、自分へのご褒美や大切な記念日などハレの日に利用するといった特別感を演出するステータスの高い店舗が多い。直営店は97店舗(国内84店舗、海外13店舗)展開中だ。多様な店舗の運営ノウハウを知的資産として蓄積しているのは競争上の優位性である。

直近の業績を見ると、

2026年3月期(1月~12月)の第3四半期売上高255億円49百万円(前年同期比+ 6.5%)営業利益8億96百万円(同+59.4%)と増収増益だ。前期2025年3月期(通期)は増収減益だったが、収益力の強化策が功を奏したようだ。原価率は28.9%と30%内未満で低く安定している。食材の高騰が深刻な情他愛の中でも前年に対して0.8%の微増でとどまっている。販管費は前年より1.9%改善されてはいるものの、原価高騰分もあり本業の儲けである営業利益率は3.5%となった。前年同期比より1.2%改善されてはいるが、適正値である10%には大きな乖離がある状態で、まだまだ課題がありそうだ。財務状態は、自己資本比率は33.6%と50%未満だが、飲食店業種にしては安定性を確保している。

カプリチョーザはFCを活用し多店舗展開!

カプリチョーザの店舗は国内90店舗(直営36店舗、FC54店舗)海外3店舗(直営2店舗、FC1店舗の計93店舗あり、店舗の約6割をフランチャイズ(以下、FC)が占めている。エリア別では、北海道・東北エリア8店舗、関東エリア41店舗、中部エリア6店舗、近畿エリア32店舗、中国・四国エリア5店舗、九州・沖縄エリア5店舗の出店体制だ。FCオーナーになる条件は、WDIの経営理念に共感し、FCシステムを理解してくれる「法人組織」に限定。安定性、将来性、及び収益性の高い4つのFC業態があるが、「カプリチョーザ」ブランドが出店の中心だ。「カプリチョーザ」ビジネスに熱意を持ち、食文化感、本物志向、ホスピタリティへの理解と共感を得たFCのみ出店が許される。性急な出店拡大はせず確実路線で店舗網を構築している。

提供するビジネスモデルの内容は

二等立地でも集客して採算がとれるブランド力があるのも強みだ。高い賃料で固定費の負担が大きいと損益分岐点の高さから持続的な経営を困難にする。そういった飲食店の課題を解決し早期投資回収、安定的な収益確保が可能な店である。ブランド認知度、差別化された商品力、幅広い客層、独自の立地診断ノウハウなどは、事業の多角化を目的に外食未経験の法人も投資価値が高いだろう。標準モデルとしては、平均月商800万~1000万円、平均客単価約1,800円で、標準原価26.5%、標準人件費30%の設計で飲食店のKPI(重要業績指標)であるFLコストも適正値の60%の範囲内に抑えた費用構造である。原価が低く安定しているのは特筆すべき点である。単一業態で経営資源を集中し効率運営するチェーンでの低原価率はよくあるが、多業態で経営資源を分散させ、尚且つセントラルキッチンを設けていないチェーンで、顧客満足を得ながらこの低い原価率は、高評価に値する。

イタリア料理店の市場環境は!

イタリア料理店は1990年~1991年の「イタメシ」ブームと共に拡大し、いまや日本の食文化になくてはならない市場だ。市場が拡大した要因は、①リーズナブルな価格とお洒落な雰囲気で食事を楽しむことができる店が多い点、②日本人が好む麺(パスタ)が料理の中心となっている点、③オリーブオイルや有機野菜などを使うイタリア料理が健康志向と合致している点などである。中小企業整備基盤機構の調査によると、年代・性別で見て利用率が最も高いのは、20代女性と40代女性の74%であり、続いて30代女性(71%)、50代女性(68%)の順に利用率が高くなっている。また、男女ともに、概ね若い年代ほど利用率が高い、という傾向も見られる。イタリア料理市場では、値上げしない宣言で、ダントツな人気の「サイゼリヤ」、ゼンショーグループの「ジョリーパスタ」や「オリーブの丘」、「ユニシアホールディングス(旧串カツ田中)」が買収したイタリア料理店「PISOLA」など、競争相手が多い。中でも、ゼンショーは外食業界で唯一の1兆円超え企業であり、豊富な業態とブランドを展開しており、ブランドポートフォリオ戦略とマネジメントに優れている。グループ内で、商品の重複など顧客への提供価値が似通ったブランドを整理統合し、カニバリゼーションの解消や成長が鈍化したブランドの転換を推進しており、成長が期待される「オリーブの丘」への資源の再配分が、これから活発になりそうで脅威な存在だ。 

カプリチョーザとは!

独特のコクと甘さを持つオリジナル・トマトソースが人気で、品質の高いトマトと乾麺のパスタをイタリアから直輸入している。模倣困難性を高めて差別化の壁を高めながら、美味しくて高品質の商品をリーズナブルな価格で提供。顧客満足度を追求しながら、低く安定した原価率を実現し店の採算性も高めている。特徴でもあるボリュームたっぷりな料理は、インパクトの強さによる話題性、お値打ち感、皆で取り分けて食べられるなどワイガヤも演出し、楽しい時間を過ごすことができる。客側のメリットだけでなく、店側も調理の作業効率が高くなり提供も含め生産性が向上するなど、双方が利益を享受している。

毎年、創業祭として、7月の毎週木曜日17時からのディナータイム限定で、創業当時からの看板メニュー「トマトとニンニクのスパゲティ」を全サイズ定価の半額販売している。来店されたことのないお客さんを低価格で入りやすくし、まずは一度食べてもらうことで店の提供価値を理解してもらうことを優先している。半額のお客さんは半額の時しか来ないと思われがちな外食の定説を払拭する自信もあるようだ。

店の特徴は、

 手作りへのこだわり

カプリチョーザはセントラルキッチンを持たず、店舗内での仕込み・調理・盛り付けまでを基本としている。調理スタッフがレシピに基づきノウハウ熟練技術の蓄積で、注文ごと「一品入魂」で料理作りを徹底。

 トマトへのこだわり

カプリチョーザの味の要はイタリア産トマトをじっくりと煮込んでつくる甘味とコクのあるトマトソースである。原料のトマトは、イタリアで栽培され、厳選されたものを使用するが、その毎年収穫される完熟したトマトは、カプリチョーザが衛生指導する工場で、色や形、大きさなどを検査して、基準を満たしたトマトだけを厳選。その年のトマトの水分量、糖度、酸味に応じて濃縮度や酸度を調整、最終加工し、日本へ輸入している。

 人気の高い定番メニュー

「カプリチョーザ」の定番メニューはいずれも創業者・本多征昭氏が生み出したもので、創業以来のレシピを守って提供している逸品料理だ。特に特製トマトソースは、まろやかでコクがあり、これをベースに作り出される料理の数々は、多くのファンを惹きつけて離さない他店では模倣困難なメニューである。特にトマトとニンニクのスパゲティは、創業以来、不動の人気No.1が特製トマトソースを使い秘伝の調理法でトマトの旨みとニンニクの香ばしい風味を最大限に引き出したカプリチョーザの代名詞的な一品である。他にも、シチリア風ライスコロッケ、ミートソースかけやイカとツナのサラダが中毒メニューと評価が高い。

 新メニュー提案力の強化

基本メニューのブラッシュアップを図りながら定期的にグランドメニューを改定し、また、お客さんの声など市場ニーズの変化に応じて新たなメニューなど、顧客への提案をタイムリーに行うことも怠らない。

原価率を低減させながら顧客満足度も高める商品力

店舗の効率化を高めるセントラルキッチンがない中で、パスタやピザなど比較的、低原価の食材が中心とは言え、食材にこだわりながら、ブレなく安定した低原価率を可能とする仕組みの確立と、原価管理技術の高さは店の強みである

 商品に価値を付加する接客と店舗演出

単に料理が美味しければいいという店ではなく、ホスピタリティ溢れる接客による快適な雰囲気づくりやお洒落な外観・店内の演出など飲食店の本質を極めたトータルでの品質向上を追求した店となっている。

*これらの強みが他店との差別化を図る上での要素となっているようだ。

最後に!

米の高騰などもあってパスタやラーメンなど麺類市場に他業態チェーンが参入する事例も増加。価格帯が1,500円~2,500円程度の人気のあるパスタをメインにしたカジュアルレストラン市場への参入も増えており、カプリチョーザも安泰とはしていられない。多ブランド戦略で成長を目指しているWDIも、各ブランドがそれぞれの役割や標的顧客が曖昧になると、どのブランドも類似した価格やメッセージでブランドごとの差別化が訴求できなくなる。そして、マーケティング費用も分散して、どのブランドも育成できない最悪な事態に陥ってしまうから、ブランド乱立で自滅することを回避するブランド戦略が重要。WDIの場合は崇高な経営理念の下で、ビジネスチャンスがあるからと闇雲に出店せず、戦略と管理の一体的推進で経営力を強化している。今後もこういった堅実経営の実践でさらなる成長が期待される。

 

勢力を拡大する英国風パブ「HUB」

 

コロナ禍では外食の中で最も影響を受けた「居酒屋・パブ業態」だが、直近(2026年3月度)の売上は前年比104.8%(日本フードサービス協会発表)と回復傾向を維持しているようだ。店舗数もコロナ禍の営業自粛で休業や閉店に追い込まれて大きく店舗を減らしたが、前年比を上回り始めており、下げ止まり傾向が顕著だ。コロナ収束後(2023年5月)の業績の推移を見ると、「パブ/居酒屋」の2023年実績では前年比134.9%と急速に回復してはいるもののコロナ前(2019年比)に対しては66.5%と程遠い状態だった。しかし、2024年実績105.5%、2025年実績104.0%と確実に回復基調にあり、しかも今年に入ってから1月~4月も前年超えを続けている。「居酒屋・パブ業態」を取り巻く環境は、自宅呑みの浸透、若者の酒離れ、飲酒運転の取り締まり強化、大口の宴会需要の低迷、物価高騰による節約志向の高まりなどの弊害要因はあるものの、今後の巻き返しが期待されている状態だ。しかし、全ての「居酒屋・パブ業態」が伸びている訳ではない。かつて人気を博した大型の総合居酒屋チェーンの復活は、難しそうだ。これらの業態は、規模の経済を発揮し価格に関する価値は提供できたが、商品・サービスに特徴がなく品質に対する価値の提供に於いては独自の強みを発揮できなかったため多くが淘汰されていった。客側も払しょくできないデフレ経済の中で、どこに行ってもビールなどお酒の味は同じだからチェーン居酒屋の安さは魅力だが、特徴がなく低価値の料理をわざわざ食べに行く価値を見出せないと判断されたのである。だから、新たなコンセプトを持ちメニューに独自性と話題性を演出し、それを多店舗展開により得たスケールメリットで競争優位性を確保できた店だけが生き残っている状態だ。例えば、ネオ居酒屋(ネオ大衆酒場)のように、従来の大衆居酒屋に、現代的な価値観やトレンドを注入した店が代表的。こういった店は、洗練された料理、こだわりの食材、独自のドリンクメニュー、SNS映えする内装や盛り付けが特徴で、業績を伸ばしながら店舗数も拡大しているようだ。

 

 そういった酒類を販売の主とした業態が外食市場で復活するトレンドの中でも、英国風パブ「HUB」は好調な業績を背景に積極路線で市場を開拓中だ。運営元の株式売社ハブは、1998年、株式会社ダイエーホールディングの子会社として設立。だが、元を辿ればダイエーの創業者である中内功氏が1980年に渡英の際、英国PUB文化 に感動し、日本で広めたいとの想いからグループ内で事業化したのが始まりだ。そもそも、サラリーマンのたまり場として日本で普及していたのは「食べながら飲む」スタイルの居酒屋文化だった。そういった中、「飲みながら会話する」スタイルのパブ文化を定着させ、長居はせずに1杯か、2杯飲んでその日をリセットし、明日の活力にする場を提供したいという思いから始めたパブである。最初はキャッシュオンデリバリーという運営スタイルが日本人に馴染まず、店舗を増やすことは難しかった。その後、親会社の解体や数度の営業譲渡など紆余曲折があったが、それらを乗り越え組織を刷新し、現在の勢いある企業に進化しているのである。「英国PUB文化を日本において広く普及させるため 英国風PUBを通じてお客様に感動を与える「感動文化創造事業」を展開する」が変わらぬ経営理念で、みんながポジティブになる場の提供を目指している。同社は、2005年、新業態として「82ALE HOUSE」1号店も開業し、昨年20周年を迎えた。ちなみにブランドに冠している82は中内功氏の誕生日である8月2日とのことだ。同社は2023年、東証プライムから東証スタンダード市場に変更。大株主として、デジタルエンターテインメント事業が主力の株式会社MIXI 20.02% 、ロイヤルホストなど外食事業が主力のロイヤルホールディングス株式会社 14.83%など著名企業から約35%の資本参加を受け入れているが、株主総数自体は右肩上がりと堅調に推移しており、2020年2月期と比較し2倍となっている。店舗数は「英国風HUB」94店舗、「82ALE HOUSE」15店舗、「HUB+82」1店舗の計110店舗(2026年2月末時点)だ。

競争環境は!

ハブの競争相手はライバルパブ店だけではなく、居酒屋やバーなどアルコールを主体とした同業態、低価格でアルコールメニューを拡充したファミリーレストランなどお酒の提供とくつろいだ雰囲気を提供する異業態、コンビニやスーパーで買ったお酒を公園や休憩スペースで飲むサラリーマンなどにお酒を販売する異業種、物価高騰で節約志向の高まりから外食を控える人の飲食予算。要は同業態間・異業態間・異業種間・予算間の中で競争が激化しているのである。だから、いかにHUBでしか得られない店舗での体験価値を高めて差別的優位性を図るかだ。

業績(2026年2月期)は、

売上高113億35百万円(前年比+6.6%)営業利益5億34百万(前年比+17.9%)。

(2022年2月期)24億円→(2023年2月期)76億円→(2024年2月期)98億円→(2025年2月期)106億円→(2026年2月期)113億円と売上高はどん底状態から回復中だ。収益状態(経常利益)も続いていた赤字が2024年2月期に黒字転換し、(2024年2月期)2.6%→(2025年2月期)4.1%→(2026年2月期)4.7%と順調に伸びている。

限定されたフードメニューとアルコール主体の業態特性から、原価率は29.8%と低く安定しているが、経常利益率4.7%は外食業界の中では若干低い収益状態だ。パブはフードよりドリンクの比率が高く原価が低い分、営業利益率は居酒屋などフード中心の店より高くなりやすい。HUBはメニューを酒のつまみ的な簡易メニューが中心で、しかも品数を限定しているため、原価だけでなく仕込みや調理する人件費もカットしやすい。レベルの高いメニューを提供しようとすると、高い賃金の熟練調理人が必要だが、そういった必要もないから経費負担が軽減される。KPI(重要業績指標)であるFLコストを見ると、原価(F)29.8%、人件費(L)34.2%と計64%となっており適正値(許容範囲)である60%を4%超えている。その結果、労働分配率(粗利益に占める人件費の割合)も48.8%と飲食店の適正値とされる35%~40%を大きく上回っており、ここが低収益・低生産性の原因ではなかろうか。

27年2月期は売上高120億円、営業利益6億円を目標としている。

自己資本比率はコロナ禍で底辺を漂っていた(2022年2月期)の33.6%から(2026年2月期)50.7%と増強されており、財務基盤は盤石となってきた。ROEは19.5%と標準値の10%の2倍近くあり、経営効率と投資価値が高い。将来の事業展開に向けた内部留保の確保に努めながら配当性向30%を目安とした業績連動型の配当を行うことを基本方針とし、株主重視の姿勢を打ち出している。

最も重視する既存店客数の動向は、前年イベントとの集客効果差が客数前年割れの要因となる月が発生し上半期は前年を僅かに下回った(前年比99%)が、10月以降は堅調に推移し、下期は前年を上回り(前年比+2.5%)、通期で100.7%と前年を上回った。営業の原動力となる客数も確実に確保できているようである。客単価は適切な値上げもあり、通期で102.8%と前年を上回っている。

「HUB」の特徴は

店舗数の約75%を占める「英国風HUB」は、世界的なスポーツイベントを店内放映し、試合観戦の興奮を共有しながら仲間との社交体験を深められる場所として存在価値を発揮している。スタジアムのような迫力ある映像と臨場感のある音響により、自宅で観戦するのとは全く異なり来てよかったと改めて感じる熱狂的な体験が可能。特に重要な試合や国際大会では、観客全員で声援を送り合うなど、同時観戦を通じて店内の一体感を醸成させている。社交や共感の場でもあり、初対面の人とでも共通のスポーツの話題で盛り上がれ、会話や交流のきっかけとなり店を通じて新しい友人を作ることが可能であり、地域に於けるコミュニティの場が減少していく中で貴重な存在だ。

フードメニューは看板商品であるフィッシュ&チップス、チキン&チップス、ラムケバブ、ピザ、ローストビーフ、など、洋風のお酒に合うアラカルトメニューが中心。ピザやスパゲティもあり、ランチタイムはランチメニューも提供。4品料理付きドリンク飲み放題も用意されており、しっかり飲みたいというニーズにも対応している。今年の夏は2026年ワールドカップがあるから、みんなが店に集まり酒を飲みながら盛り上がることが予想される。

「HUB」「82」の違いは!

「HUB」「82」共に同じ英国風パブだが、「HUB」がカジュアルでリーズナブルな大衆パブであるのに対して、「82」はウイスキーやエールを中心としたやや大人向け・高価格帯のバーに近い落ち着いた雰囲気を醸し出したパブだ。内装の雰囲気・客層・ドリンクの価格帯・品揃えで違いを出し、市場の棲み分けを行っている。

「HUB」はターゲットがバー初心者や若い社会人に設定し、入りやすい価格と雰囲気で集客。ビール、カクテルなど定番中心のドリンクで、フードは軽食・つまみ中心、価格は比較的リーズナブル、スポーツ観戦や立ち飲み、2次会など短時間利用に向く店。「82」は30〜50代の「違いのわかる大人」を主なターゲットにし、ドリンクはウイスキー、エールを充実させ、フードはお酒に合わせたつまみが中心、若干高めの価格設定、腰を落ち着けてウイスキーを飲み比べるなど、じっくり飲むシーン向き、といった違いがあり、「82」は「HUB」よりやや落ち着いた雰囲気を醸し出している。

「創業50年ビジョン(2022-2030)」の達成に向けて!

その中間(2025-2027)である今期にやるべきこととして、日本全国の人流拠点をターゲットとした出店戦略「SmasH47(出店ターゲットを47都道府県に拡大し厳選した200店舗体制の構築」を軸に、①全国を対象とした出店体制を強化し、新規客を誘致、②既存店舗の体験価値を高め既存顧客の来店頻度の促進や客単価アップで売上増大を目指す、等の活動を強化している。それらを実現するため、「企業は人なり」を前提に、原動力となる人材育成も強化。処遇改善により能力と意欲を高め、従業員の満足度を向上させながら、優秀な人財の確保と定着で組織の活性化に繋げ安定成長に向けた事業基盤の強化づくりに力を注いでいる。店舗では「客数増」を挑戦キーワードとして、ターゲットを絞ったマーケティングを実行し顧客とのエンゲージメントをより強固なものに構築中だ。

今後も企業価値の最大化を目的に!

体験価値創造施策の一環として、商品力の強化策として、(ドリンク)HUBシリーズ、ハイボール、 ノンアルカクテル等の売れ筋カテゴリー強化。(フード)インバウンド客に好評のフィッシュ&チップスに続く高付加価値フードメニューの展開。新規客誘致策として、IPやスポーツコンテンツ、競馬場などへ期間限定出店を実施し、幅広い層へ「HUB・82」の認知度を高める機会を創出。メンバーズシステムを中心に新規客をメンバーズへの登録を促し既存客のリピート促進にも注力。メンバーズシステムの会員数は順調に増えており、総メンバー会員数709,556名 (前年差+17万9千名)、アプリ登録者数 290,878人(前年+6万6千名・登録率41.0%)メンバー売上構成比(39.8%)となった。メンバーアプリ限定クーポンを配信し来店動機を高め来店頻度を向上させている。店舗価値の向上策として、店の売りである放映では放映時間帯やコンテンツを拡充し、多様なファン層やインバウンド客の観戦需要を確実に確保。加えて、インバウンドを対象としたメンバーズカード施策も継続し、多角的な集客チャネルの強化に取り組んでいる。これらの施策を通じた店舗での体験価値向上を図るべく、各企画に連動したテーマ性豊かな新商品を投入し、多くの顧客から支持を得ている。商材の訴求力を高めるキャンペーンメニューを月次で展開し、飽きの来ない店づくりにも注力すると共に、店舗運営では接客サービスおよび提供品質の更なる向上を目指した日々の改善活動を徹底。マーケティング施策に於いては、メンバーズシステムに蓄積された顧客データを精緻に分析し、顧客属性に応じたパーソナライズなクーポン配信を実施するなど、デジタル活用の最適化に努めている。

出店戦略としては、2025年4月、初のJR駅改札内店舗(エキナカ)Jリーグチーム「ジェフユナイテッド市原・ 千葉」とのコラボレーション店舗を複数出店するなど、店舗数は110店舗まで増加した。JR商業施設内への出店も増え出店戦略「SmasH47」を着実に推進中だ。初のJR駅改札内店舗(出店戦略も2025年度 3店舗(投資額)1.9億円だったが、2026年度の投資額は8店舗 5.9億円を計画。また、メーカータイアップ店舗ラッピングなど、店舗にブランドラッピングをすることで新たな雰囲気の演出と収益性の向上を実現するなど、他社との事業提携も強化し、蓄積してきた価値を磨き続けると共に新たな感動体験を創造。営業や財務など各機能戦略を効果的に統合し、出店戦略「SmasH47」を具現化するため、今後の全国展開を見据えた体制を構築し、市場に於ける存在感の発揮に努めていくようだ。

 

餃子の王将の動向に目が離せない!



 

「餃子の王将」は、1967年創業で今年59年目を迎える京都を発祥の地とした老舗外食チェーンだ。中華ファミレスの単一事業に特化しており、2026年3月期(通期)の直営全店売上高は 1,066億72百万円(前期比105.2%) と過去最高を更新し、5期連続で増収を達成するなど成長が著しい。しかも、FC店への出荷売上を含む全社売上高は、2期連続の1,100億円超えで1,163億52百万円である。収益状態(2025年3月期決算)も、営業利益109億円、営業利益率9,8%と高水準だ。多業態でリスク分散する外食企業とは一線を画しており、利益創出力のあるビジネスモデルを有し、持続的な成長を実現している。その利益の蓄積もあり、自己資本比率も76.2%(2025年12月末時点)と盤石な財務基盤だ。店舗数は726店舗(2026年3月末時点)。ここ2年間の推移を見ると、総店舗数の約75%を占める直営店は2024年度(開店11店舗、閉店5店舗)、2025年度(開店2店舗、閉店2店舗)と+6店舗伸ばしているが、FC店舗は2024年度(開店2店舗、閉店11店舗)、2025年度(開店6店舗、閉店6店舗)とスクラップ&ビルドを繰り返した結果、FC店舗は9店舗減少し、現在177店舗となっている。

今後の成長戦略として店舗戦略は、この好調な業績を背景に、需要が大きく未開拓地域が多い関東圏へ今後5~6年で出店を強化し、店舗数を現在の1.5倍に増やす計画を昨年11月に発表済みだ。埼玉県にある製造工場の稼働率向上、物流効率化、エリアでの認知度向上などドミナント効果を発揮するようである。現在、その埼玉では、全国区の「餃子の王将」(36店舗)より、「ぎょうざの満洲」(54店舗)に店舗数で負けているのが実情だ(2026年4月時点)。そういった点も含め、東日本を重点的に深耕し1000店舗達成を目指し、全体最適化でブランド認知度のさらなる向上を狙っている。積極的に店舗網も拡大し、関東圏で先行する日高屋と幸楽苑の後塵を拝している今の競争地位的状態を打破する狙いだ。全国展開を円滑に推進するには東京での成功で知名度と収益力を向上させることが重要。東京を中心とした関東での成否が、今後を左右する試金石となるだろう。

好調そうに見えながら懸念材料もある!

安定成長し順風満帆に見える「餃子の王将」ではあるが、今年に入ってから客数と売上の伸びが鈍化し、51か月続いていた直営既存店売上高の前年超えが2025年12月で途切れてしまった。今までは値上げによって伸び悩んでいた客数を客単価の上昇で前年を超えていたが、ついに前年を下回る結果となっている。新店を含む全店売上高は過去最高を今も更新中とのことだが、直営既存店の伸び率は今年に入り1月99.9%、2月99.5%、3月97.9%と3カ月連続で前年割れなのが実情だ。

もちろん、前年まで5期連続で過去最高を更新するなど驚異的な成長率だったから、上回り続けることは困難なことである。よほど何かの追い風で市場が拡大し、競合環境が優位になるなど需給バランスに変化が生じなければ、持続的な成長トレンドを堅持することは困難なことは当然だろう。

 

 

  会社の説明によると、1月は前年もメディア露出による大幅な客数増加(前年同月比+10%)によって、直営全店売上高が+18.6%という異常に高い実績だったことへの反動と、今年は記録的な寒波による客数への影響があったこと。2月は積雪等の天候不順による外部要因があり、特殊要因を除けば達成可能だったこと。3月は土曜日が1日少なく曜日差を調整すれば達成していたと、原因は明確になっている。3月は「2026大感謝祭」の販促効果があり前年割れが続いていた客数の減少状態は解消し、前年同月比+1.1%と増加したようだ。

「餃子の王将」は経営陣の動きも活発!

「餃子の王将」は環境変化には迅速にかつ柔軟に対応するといった展開力を有し、あらゆる施策を駆使して困難を乗り越える企業姿勢への評価は高い。2年間で5回の値上げをしたが最後の値上げである25年2月以降の客数減少に備えた対策として、積極的な商品政策と販促政策を講じてはいたが、今年に入ってからは、各種販促施策の頻度をさらに加速させている。その矢継ぎ早に講じる施策によって業績的には何とか持ち直しそうな気配だ。盤石経営だから、業績の若干のブレにもっと静観の構えでもいいのではと思うが、経営陣の繰り出す各種施策は活発である。

講じた施策は、

販促施策として、TVCMや各種媒体を通じて認知度向上に努めている。1月のテレビ番組TBS系列「ジョブチューン」は放映の波及効果が高く、1月31日には創業以来の過去最高売上となる4億64百万円を記録するなど、パブリシティ効果をうまく活用し売上増につながったようだ。また、顧客基盤の盤石化に向け導入している「2026年版 ぎょうざ倶楽部 お客様感謝キャンペーン」も実施中で、顧客の囲い込みと顧客ロイヤリティを醸成させる仕掛けを強化中だ。これは毎年実施しており、会員ランク(シルバー5%・ゴールド7%・プラチナ10%)と利用金額に応じた割引率を設定し、ロイヤルカスタマーの増大を目指している。こういった既存客の来店頻度の向上と頻繁なテレビCMの実施でブランド認知度の向上などで新規客の誘致で客数の増加を狙っている。今年に入ってからは、1~3月の3カ月連続で「スタンプ2倍押しキャンペーン」を実施し、月後半の集客力を強化。加えて、前年12月に創業祭として実施した会計金額税込500円毎に、税込250円割引券を1枚プレゼントする企画を3月にも5日~6日の2日間限定で、「2026大感謝祭」と題して実施。加えて、アプリ会員向けに月・火に「お客様感謝200円引きクーポン」、「週末お持ち帰り限定300円引きクーポン」を利用動機・曜日別限定で配信し、アプリ利用の促進と来店頻度の向上を図るなど顧客へのアプローチを積極果敢にしている。

商品政策も、既存メニューのブラッシュアップを図りながら、高付加価値商品であるプレミアムメニュー「新極王7シリーズ」の販売を強化。「餃子の王将を極める」をコンセプトとして販売しているが、その中でも特に人気の高い「極王酢豚」「極王麻婆豆腐」「極王鶏の唐揚」の3品のジャストサイズを組み合わせた「新極王人気3品ジャストサイズセット」も、お試し価格として3品の単品合計価格より税込200円お得に販売した。こういった高付加価値メニューにも力を入れる一方で、790円(税込)の高コスパメニュー「餃子の王将ランチ」も販売し、低価格ニーズに対応し予算に制約のある会社員の誘致にも力を入れている。

かつての値上げで学習した経験を今後の施策に反映!

物価高騰を前提にした店舗運営を余儀なくされる中、餃子の王将も2年間で5回の値上げを実施したが、「今までが安すぎた」と理解を示してくれる常連客も多かった一方で、キャッチコピーである「安くて美味しい」が消えつつあると不満の声があったことも事実だ。単品では満足できないお客さんにとって定食やセット商品を注文すると1000円を軽く超え客単価も1300円近くになっているから、気楽に行けた店ではなくなりつつある。ランチなどの日常の食事では利用できなくなっている会社員も増加し、客数の伸びが鈍化している。本来なら、ブランドロイヤリティ(店舗への忠誠度)の高い常連客を囲い込んでいるのが店の強みで、多少値上げしたくらいでは揺るがない顧客基盤を有していたが、インフレ状態で節約志向が高まる中、「餃子の王将」でも集客は楽でない状態だ。そういった中、最後の値上げを実施した2025年2月以降は基本メニューの値上げは封印し、新たに投入した高付加価値商品「新極王(ごくおう)7シリーズ」の投入や毎月の新メニューの販売でメニューに刺激を与えながら対応している。今まで「安い・うまい・早い」といった大衆路線で人気を博してきたが、高付加価値メニューを導入し高くても高品質な料理が食べたい顧客層を開拓中だ。大衆路線が推進力の源泉だった店だけに、一瞬、商品政策で迷走しているのかと思ったが、今年のスローガンである「プロの技と、プロの味と、プロの誇りを」をより強化するための新たな取り組みであり、またやり切れる経営資源を有している自信の表れだろう。価格に敏感でない層の開拓で客数の減少を客単価の上昇で補えることも狙っているおり、このプレミアメニューの投入で、店側は単価アップ、客側は良質な中華を堪能でき、ハレの日の特別感も味わえるなど双方がメリットを享受できるので葉と推察する。

 

現場のやりがいの創出が競争優位の源泉!

 本部がチェーンとしての統一性を遵守させるため、各店舗の基本メニューは同じだが、原価など本部から決められた予算を順守すれば店舗独自のメニューを開発できるといった運営上の裁量権を認めて自主性を引き出している。それが店舗にやりがいを与えているのだが、店舗マネジメントには相当の経営知識や店舗運営技術が必須だ。これらを実現させるため、価値創造の源泉である「人」への投資として人材育成には相当力を入れている。料理人を育成するための王将調理道場、店舗のマネジメントを学ぶ王将大学、などの教育システムを充実させ、常に人材の質的向上を図っている。接客サービスは、DX化でロボットを活用する外食チェーン店が増える中、あくまでも人を中心としたホスピタリティある接客を目指し、外部講師を招いて接客トレー ナー研修の実施、清掃マニュアルのブラッシュアップによる徹底した衛生管理など従来の弱点克服に力を注ぐ。セントラルキッチンでほぼ全工程を製造し、店舗では最終仕上げや調理ロボットを活用するなど効率化を追求する外食チェーン店が多いが、店舗での手作り感を重視している。そのため、調理人の知識・技術・意欲が料理の味を左右するので、こういった研修は必須だ。個人営業の町中華店に特有な個人の技術や経験には依存せず、まだ組織的対応されているから安心・安全感があるチェーンとしての特性も持ち合わせている。一人客からファミリー客まで、幅広い客層と様々な利用シーンで活用されており、値上げをして高くなったイメージがあっても、町中華店よりまだまだお手頃な価格だ。また店内飲食だけではなく、コロナ禍で来店客の減少を補ったテイクアウト需要も定着し、現在も好調で業績向上に貢献するなどデリバリーも含めて複数の販売機能を有しているのも強みだ。

 

「餃子の王将」の今後の課題は!

運営的には、異なる立地タイプ・店舗規模に加え、直営店・FC店と多様な経営形態を「餃子の王将」ブランドで画一的に管理するのは難しい中、店によって商品・接客の提供品質にばらつきがあるのが実情で、クリンリネスは特に改善の余地が大きい。それをなくすために研修や実地訓練をやっているが、可能な限り、チェーンとしての統一性を遵守し、どの店も同じという安心感や期待感を裏切らない店づくりを追い求めないといけない。メニュー政策的には、①これから増加が期待される一人呑みのお客さんに対してジャストサイズメニューは豊富だから酒の肴的にはいいが、アルコールメニューが弱い。②狭小店舗に於いてはカウンターの席間隔やテーブル間隔が狭くゆっくり寛げない③極王メニューの投入後、中華の定番メニューだったチンジャオロース・八宝菜、肉団子がなくなり、また豚キムチやキムチ炒飯・キムチラーメンなども店舗によっては消滅しており、メニュー数が少なくなって選択肢が狭まった、などの声もあり、改善余地がありそうだ。

最後に!

外食業界では人手不足が深刻で、採用時の競争力の向上や社員の定着化に向け、待遇改善が欠かせない。「餃子の王将」は、人を大切にする企業として、報酬アップや正社員の育成に積極的に取り組んでいる。この会社の人財に対する姿勢に従業員エンゲージメント(愛社精神・会社との絆)は高まっており、これらが持続的な成長を達成する推進力になっているようだ。ブランドとは顧客からの信頼の証である。顧客が何を期待し信頼し続けるか、現場の声をリアルタイムに吸い上げ、スピーディに各種施策を講じるのが「餃子の王将」の強みだ。今後も外食企業としてさらなる価値創造に向けた努力を期待したい。

 

フードコート専門業態を確立し今後の成長戦略を描く「牛角焼肉食堂」の成否はいかに!

 

 

焼肉は「食べ放題」の普及で市場が活性化されてきて30年以上が経つ。食べ放題チェーンの店舗数を見ると上位5社の中で店舗数を増やしているのは現在2位の「焼肉きんぐ」だけだ。食べ放題チェーンや低価格の焼肉店は輸入食肉への依存度が高く、今の円安状態が続くとより一層厳しくなる推察される。輸入牛の仕入れ値は20年前の倍以上、部位によっては3倍以上だからだ。加えて、他のコストも軒並み上昇し、店の採算が悪化しており、焼肉きんぐだけが突出した勢いを有している現況である。焼肉きんぐが他のチェーンと比べて圧倒的なのは、その成長速度だ。2007年に1号店オープンとまだ20年にも満たない後発チェーンでありながら、店舗数2位にまで躍進しており、その勢いは今も続いている。そういった焼肉市場の中、先行していたのは店舗数1位の「牛角」だ。かっぱ寿司や大戸屋など多くの著名ブランドを有し、多業態戦略で国内外にFC店も含め2,602店舗(25年6月末時点)を展開する外食大手のコロワイドグループの中核事業である。傘下の焼肉事業を運営するレインズインターナショナルが1996年に創業した「牛角(開業時は焼肉市場・七輪)」は今年30年目の節目を迎える。7年間で1000店舗にまで急成長させた焼肉チェーンだったが、現在、牛角ブランド自体は店舗網の再構築フェーズにあり、既存店舗のテコ入れや整理などを進めている。食べ放題専門店も展開しながら、今は新たな成長業態である「牛角焼肉食堂」に経営資源を重点配分。既存業態と新業態を調整しながら、焼肉市場でトップの座を堅持している。 

 

牛角焼肉食堂とは!

 

成長を加速させているのが、日常的に気軽にフードコートで焼肉を主とした食事ができる「牛角焼肉食堂」。同店はフードコート専門店として開発された業態で、熱々の鉄板焼肉定食や焼肉丼を中心に冷麺や石鍋チゲなどを提供している。焼肉市場が特別感ある非日常消費と日々の食事である日常食の二極化が進展する中、同店は焼肉を日常食として700円から1,000台を中心にした価格帯で多くの人に手軽に焼肉料理を提供する店舗だ。現在、87店舗(2026年2月時点)出店しているが、その内3分の2は小売業2強の一つであるイオン系のショッピングセンター(以下、SC)だ。エリア的には北海道・東北が15店舗、関東26店舗、中部22店舗、近畿16店舗と出店数全体の9割を占め、中国・四国・九州は手薄となっている出店状況である。昨年(2025年)は30店舗を新規に出店し、今年(2026年)は100店舗を超える勢いだ。日常利用の「牛角焼肉食堂」と、お祝い事などのハレの場や特別な外食での利用を目的とした「牛角」。両ブランドの市場に於けるポジショニングも明確にしながら店舗戦略を進めている。

 

フードコートには多くのメリットがある!

 

ディナーや週末に集中しがちな需要特性の焼肉業態よりも、時間帯や曜日指数を気にしない営業で売り上げが安定するメリットがフードコートにはあり、より運営の平準化が可能で作業効率が高まる。実際に、平日ディナーに単価の高い外食需要が発生することは少なく、お祝い事などハレの場が頻繁にある訳でもない。また、満足度が高過ぎて経済的にも負担の大きな食事は何度も行けるものではなく、適度に満足し予算的にも負担が軽い食事の頻度は自然と高くなるもの。焼肉は単価が上がるが、あまり上がり過ぎると高かったというイメージが残り、次の来店までの間隔は長くなってくる。その点は一食完結型の定食スタイルはお手頃価格で食事ができるから来店頻度が高まるだろう。 フードコートはSC自体の集客力を利用し、他のテナントと共に顧客提供価値を向上できるのも魅力だ。食べ放題店や専門店よりも安価な価格で吸引力を強化し、食材の回転率が上げていつも鮮度の高い商品を提供しながら、食材を無駄なく使うことで安定原価を実現できるから、利益を確保しやすいのではなかろうか。

 

 フードコートを取り巻く環境は!SCの現況と今後の動向は!

 

 少子高齢化や人口減少によ市場が縮小する中、利便性の高いネット通販の普及度合いが高まり、従来のSCは集客が困難となっている。事実、SCの総数は減少傾向にあり、2018年の3,220施設をピークに2019年以降は6年連続で減少し、2024年末は3,037施設となった。2022年以降は年間35前後で推移していた新規開業数も、2025年には新規開業数が過去最少の18施設まで落ち込んでいる。新規開業SCは小型化が進み、テナント構成も変化し、テナントも衣料品の割合が低下。飲食店やサービス業種の割合が増加。2024年には飲食が27.2%、サービスが23.7%を占め、非物販が半数以上だ。一般社団法人日本ショッピングセンターによると、統計開始以来で過去最少となる見通しで、閉店数が新設を上回るという「純減」は7年連続とのことだ。その原因は人口減少という社会的な側面や、建築資材・人件費の高騰といったコスト面の影響も大きいようである。SCは自然発生的に形成された商店街と異なり、一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体だ。ブランド力のある店舗を誘致しテナントミックスを最適化し、他のSCとの差別的優位性を確保している。消費者ニーズに応えるコミュニティ施設として都市機能の一翼を担い街づくりの活性化には欠かせない存在だ。そのSCで重要な役割を担う存在になってきたのがフードコートだ。フードコートと言えば、多種多様な店が連なり価格も低価格でさっと食べてすぐに帰るとイメージを抱く人が多い。でも売り上げの割に高い賃料の負担が多いフードコートでは撤退するテナントが続出。同質化しやすいSCの差別化手段として、また、集客の目玉として新たなコンセプトによる独自性のある運営をする進化したフードコートも増えている。飲食店の情報サイトである「ぐるなび」がプロデュースした各地の人気店の味を再現しているご当地グルメを集めたフードコートは話題だ。今はSCの差別化手段としてのフードコートの果たす役割が大きくなっている。

 

 フードコートへの出店メリットは!

 

通常、坪当たり100万は必要な開業費用である既存の焼肉業態とは異なり、初期投資はかなり抑えられる。その結果、投資回収速度も速く、投資効率の高いビジネスモデルの設計だ。

 ランニングコストも、SCの集客力の利用、余裕ある共有の客席スペースの活用、セルフサービスでホール人員の削減による人件費の抑制、SC自体が販促するので店舗独自の販促コストや手間が省ける、等のランニングコストの削減にも寄与する。また、天候に左右されず安定した来客数を見込める、類似業態の店舗が隣接することが少ないため競合が限定される、等の魅力もあるようだ。 もちろん、フードコートに出店する店舗には、運営上の制約や想定通りいかないと採算性の問題が生じることがあることのリスクは仕方ない。でも、SCのフードコートは異なる個々の食のニーズに対応できるからグループ客やファミリー客などからも選ばれている現状を利用しない手はないだろう。

 

 定食市場の競争環境は!

 

客単価から見ても定食レストラン市場の競争は激化している。定食チェーンだけでなく、定食メニューを拡充する牛丼チェーンや和洋中のファストフードも競合店だ。また、最近は平日のランチ営業を充実させる焼肉チェーン店が増えている。牛角を創業した西山知義氏が率いる焼肉ライクも脅威な存在だ。

 焼肉食べ放題店も仕入れコストや人件費が上昇し物価高騰で節約志向の人が増えている中で各店が値上げで対応してきたが、これ以上、価格を上げると客離れを起こす心配から、値上げを躊躇している。今は値下げした新メニューの販売や大幅な割引で歓送迎会の繁忙期前を凌いでいる状態で、ランチの集客にも力を入れてきている。焼肉は本来ならディナーに集中し、経営資源を集中させた方が効率的な経営になるのは言うまでもない。しかし、安定した売り上げが求められる今は、同じ賃料を払うなら費用が高くなっても長く営業した方が得策と考える店も多い。この一方を追求するともう片方が犠牲になるトレードオフの関係でどちらを重視するか経営判断は難しいところだろう。焼肉業態は売り上げの平準化が困難でバラつきが大きい業態特性がある。お客さんの入りが乏しい平日のディナー対策として、繁閑に応じてメリハリ運営をして対応するか、売り上げの安定化を狙いランチ営業に力を入れるか、どちらかだ。実質賃金の低迷と物価高騰で節約志向が高まる中、真っ先に削られるのが外食で、その中でも単価が高いディナーが最も削られるから仕方ない。削られやすい外食だが、外食慣れした日本では全く行かないというのは考えにくい。久しぶりに人と会う機会があれば、せめてランチや低価格店くらいには行こうという人が多いはず。まだまだ安定的な需要があるのはランチでディナーは開けてみないとわからないといった水商場的なもので、これらの傾向は失われた30年と共に根強いもので外食店の課題でもあった。焼肉の来店頻度は一般家庭の平均で、月に一度とされている。その焼肉を単価の低いランチで食べてもらうのではなく、アルコールも入り単価が上がるディナーで食べてもらいたいというのが店の本音だ。しかし今は集客が難しく、とりあえず、お手頃価格のランチをフロントエンド商品として集客し、バックエンド商品であるディナーへの誘導を狙っている。ランチで店の味や雰囲気を味わってもらい、ディナーの割引券を配布し来店動機を高める仕掛けだ。当店の焼肉を本格的に堪能したのなら夜にお越しくださいというのが店側の思惑だろう。でも、昼夜の価格差が大きいと、昼しか来ない人も多い中、日々店を回す運転資金の確保のために昼も営業している店は多く、客側にとってはランチの選択肢が広がっている。店側も昼に店全体の良さを理解してもらえば、焼肉など高額料理はハレの場で利用されることが多いので、頻繁の利用は無理でも祝い事など特別の日に利用してもらえる可能性は高いから、それを期待し定食メニューに力を入れているのだろうし、今後も続きそうだ。

 

最後に!

 

  元気なシニアが多く今後も肉類を好むシニアが増える中、焼肉は無性に食べたくなる存在感ある食事だ。今から58年前の昭和43年(1968年)に大阪の焼肉チェーンが始めた焼肉定食だが、今は多種多様な飲食店でもメニューとして定番化されているほどである。そういった中で、「牛角焼肉食堂」の提供価値を認めてもらいメインブランドの牛角に誘導できるかは、これからが勝負だ。

 

店舗数1位のすかいらーくHDのガストを追随する2位サイゼリヤ!

店舗数を減らすガストと増やすサイゼリヤの今後の動向は!

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高度経済成長社会の中でファミレス市場の成長と共に事業規模を拡大してきた「すかいらーくホールディングス、(以下すかいらーくHD」」。時代の変化に適合させるため、様々な業態の開発とブランドを構築してきた。しかし、デフレ経済が長きに渡り定着する中、低価格ニーズに合致した店づくりとして、価格競争力を武器に低価格路線のファミレスである「ガスト」を主力ブランドとして積極展開しファミレス市場では店舗数1位だ。そのガストもここ数年は緩やかなインフレ状態の経済の中で、市場環境の変化に適合させた店舗のブラッシュアップを進めている。商品もメリハリ消費に対応したメニュー政策で顧客提供価値を高め、価格もインフレに対応した価格改定を通じて客単価アップを狙い、今までの薄利多売の店舗政策の脱却を図っている。一方、値上げしない宣言で節約志向の高いお客さんを中心に吸引力を高め、業界2位の店舗数を誇るのがサイゼリヤだ。物価高騰に耐え切れず、値上げする外食店とは一線を画し、値上げしない宣言をしたサイゼリヤは愚直なまでに低価格を追求し、より一層の集客力を高めており、それに連動し業績も好調である。世界中の人々に美味しくて健康的なイタリアの家庭料理を安価に提供することを顧客提供価値として取り組む中、原価率は約42%とやはり低価格の維持のために高めだが、販管費の抑制で経費を調整しながら確実に利益も確保している。

 

同じファミレス市場で競っているが、多業態を展開するすかいらーくHDの中核とはいえ一ブランドであるガストと単一事業であるサイゼリヤ。2025年度にガストが11店舗を減少させる一方で、サイゼリヤは21店舗を増加させている。その結果、ガストは1,236店舗、サイゼリヤは1,064店舗と店舗数が肉薄している。この増減の差は業績ではなく、すかいらーくHD側はグループ経営上の都合もあるだろう。しかし、その理由が成長ブランドに業態転換し、エリアごとのカニバリゼーションを防止するためとのことだが、それだけだろうか。業態の陳腐化サイクルが短縮される中で、ガストの打ち出す政策と顧客ニーズの乖離はないだろうか。ガストは低価格路線を脱却して付加価値を創出する方向へ路線変更しており、低価格での提供で圧倒的な優位性を有するサイゼリヤとの価格差が広がっているのも理由ではなかろうか。そういった点を踏まえて、双方の違いを見てみたい。

 

 すかいらーくHDの業績は好調だ!

 

2025年12月期第三四半期累計(1-9月期)も前年比で売上高が+15.3%、営業利益が+23.7%と増収増益で過去最高益を達成。営業利益率も7%確保して収益性も安定しており、ROE(自己資本利益率)も10.3%と資本効率を高めている。伸長要因は、メニュー・プロモーション(コスパの高いメニュー、外食の楽しさや体験価値を高めるメニュー)など商品力の強化と店舗中心経営(店舗マネジャーの営業力の向上)といった販売力の強化が功を奏している。外食産業は人手不足もありDX化を進めているが、基本は労働集約型の産業だ。スタッフの能力と意欲の向上が業績を大きく左右する。他業種と比較して低報酬という外食の労働環境の中、店長の年収を最大1000万円超とする人事制度を導入。正社員のモチベーションを高めると同時に、運営の主戦力であるクルーの質的向上と定着化も推進中だ。また、公正な評価と適正な処遇の徹底と共に、店舗マネジャーに昇給の権限と責任を付与し現場で柔軟に対応させ、計画的に従業員を育成することで店舗組織の盤石化を進めている。

 

M&Aも駆使し、成長フェーズでの優位性を発揮!

 

現在、すかいらーくHDは傘下に6つの子会社、28ブランド3,107店舗(2025年12月末日)を傘下に持つ。それぞれの市場ニーズに合致した業態を配置し全体を最適化させながら、収益機会の増大とリスク分散を図っている。傘下のブランドを「ファミリーダイニング」と、「カジュアルダイニング」とで分類。各ブランドをどの方向に進めるかは顧客の動向と潜在的な可能性を分析しながら決定し、経営資源の適切な配分と管理を徹底している。ポートフォリオの空白地帯を資さんうどんや新業態開発とM&Aで補完し、隙間のないブランドポートフォリオを完成させる計画だ。それぞれ異なるコンセプトと顧客層を持つ複数のブランドを展開しているが、各ブランドの強みを最大限に発揮するため、画一的な施策ではなく、ブランド特性に合わせた戦略を立案し実行中だ。傘下のブランドで、幅広い顧客ニーズに対応できるようグループ内で顧客の囲い込みをしており、それぞれのブランドが明確なターゲット、提供価値、ブランドイメージを持ち、各ブランドの認知度向上と顧客ロイヤルティの強化に努めている。

 

卓越したガストの商品開発力、著名ブランドとのコラボ商品も人気!

 

ガストの商品戦略は多様なジャンルの料理を豊富に揃えている。活発な商品開発でメニューを定期的に刷新し、飽きのこない品揃えで再来店を促しているが、これだけの新商品が次々と開発できるのは、蓄積された商品開発ノウハウがあるからだ。現在、推奨販売されているのは、好きな小皿料理3品がドリンクバー、スープバー付きで約1,000円で食べられる平日限定の「ガストフィットメニュー」、それを進化させた「ガストフィットメニュー2」は、平日の客数増に貢献しているようだ。また、999円ステーキというコスパの高い商品も販売し、再来店を促している。現在、期間限定で「やまやフェア」を開催中。特に「博多明太もつ鍋」は人気で、その他、博多明太唐揚げ定食や明太ドリアメニューも好評のようだ。

すかいらーくHDは、値上げによる粗利益率の改善、食材ロスの低減、部門横断的な原価低減プロジェクトで講じた対策などで、仕入れ価格高騰の影響を抑制した結果、第3四半期連結の原価率は33.1%と前年比で0.9%の悪化となったものの、最小限の上昇に抑えており、原価管理能力は高い。

出店戦略では、新規出店で店舗数を拡大する中で、カニバリゼーションを防ぐため、業態とブランドの再配置中だが、しゃぶ葉も若者を中心に人気で、著しく店舗数を増やしている。2024年初めの店舗数は279店舗だったが、現在(25年12月末時点)は324店舗と2年間で45店舗増と相当な勢いだ。立地の偏在性の解消が必要なガストからの業態転換も進めている。成長ブランドへの育成を加速させている資さんうどんと共に重点的に経営資源を配分しているようだ。

 

節約志向の高まりで外食頻度が低下する中、サイゼリヤはなぜ2桁成長できるのか!

 

サイゼリヤの既存店売上高と客数は50カ月連続で前年を上回っており、その伸長率も40カ月連続2桁成長と驚異な伸びだ。客単価も微増ではあるが安定して伸ばしている。競合他店が物価高騰を値上げで乗り切る中、値上げしない宣言をして、低価格を求める顧客ニーズに対応。客数減を客単価アップで売り上げを維持する店とは対照的に、経営の合理化で外食店を取り巻く危機的環境に適合させている。この値上げせずに顧客視点の営業姿勢をお客さんから評価されているようだ。コスパ最強と評価され、大概の店が閑散としている平日のディナー帯でも連日盛況でウエイティングができる状態である。25年8月期決算では、海外部門も含めた連結(連結消去分は除く)では、売上高2567億円(前年比+14.3%)、営業利益155億円(同+4.3%)、営業利益率は6.0%とこれだけ低価格で販売している割には、しっかり確保している。費用の内訳を見ると、売上原価率は41.9%と0.7%悪化したが、販管費率は0.2ポイント改善させており、営業利益率は0.6%悪化してはいるものの、増収増益だ。セグメント別に見ると、国内事業は売上高1,729億円(前年比+18.1%)、営業利益503億円(同+83.9%)、営業利益率は2.9%。海外事業は、売上高949億円(前年比+6.8%)、営業利益105億円(同-13.6%)、営業利益は前年よりも低下させているが11.0%と高く、2.9%と低い営業利益率の日本事業と比べると稼ぐ力を有している。客数の構成比を見ると、国内68.4%、海外31.6%の割合だ。日本事業は今期(26年8月期)に入っても好調で、既存店ベースの9月~12月累計は、売上高+17.4%、客数+14.7%、客単価+2.3%と伸ばしている。店舗数も1,064店舗(25年12月末時点)と前年同期比で+21店舗と順調に店舗を増やしている。メニューに刺激を与えマンネリ化防止のため、既存メニューも定期的に刷新し、フードメニューの充実と新規デザートメニューの販売で来店頻度も高めているようだ。これらの取り組みの結果、2026年8月期(第1四半期連結9月~11月)の売上高は、703億円(前年同期比14.7%増)、営業利益は47億円(同18.9%増)、とかなりの伸長だ。また、将来を見据え、さらなる売り上げ拡大に向けて、モーニングメニューの販売を始め、順次、販売店舗を拡大する計画である。

 

国内事業も海外事業と共に業績好調が続く!

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以前の国内事業は薄利に苦しんでおり、それを海外事業の収益で補うなど海外依存度が高かった。でも今は国内事業も収益性が改善されている。国内外連結で増収増益だ。財務基盤も自己資本比率は64.5%と盤石だ。現在、国内店舗数は1,060店舗、海外店舗数は657店舗 海外の店舗数比率は38.3%(25年11月末時点)である。

この好調を支える要因はやはり、安さを前面に打ち出しながら集客力を高めていることが大きい。また「ファストカジュアル」としての存在感を発揮しており、客単価約860円は、回転寿司やハンバーガー市場とも競っている。その絶対的ポジションを堅持するための努力も怠っていない。例えば①値下げ宣言で低価格を約束②メニュー数を絞り調理負担の軽減と在庫の削減など業務効率を向上③国内外の出店体制の強化によるスケールメリットの発揮④川上~川下までを自社で垂直統合するなど事業基盤を盤石にしている。 

 

商品力と価格競争力に絶対的な優位性!

 

美味しくて健康的なイタリアの家庭料理を低価格で提供できる最適な品目数とメニュー構成になっている。定番メニューの品質改善を進めながら、新メニューを投入して商品全体の価値を向上。定期的なメニューの刷新で来店の動機付けをして来店頻度の向上を実現している。メニュー数を絞り調理が単純になれば、店側はメリットが多いが、一方で客側にとっては商品の選択肢の少なさで充実度を欠き不満要因となる。店側と客側の効果と効率が対立する中、現状のメニュー数が低価格で美味しいイタリア料理を食べたいニーズの客側には最適のようだ。 

 費用対効果を勘案しながらのDX化の推進!

DXの推進として、顧客の携帯端末を使った注文方式やセルフレジなど必要最低限のDXへの取り組みではあるが、顧客の利便性の向上と業務効率の向上、従業員の負担軽減で生産性も向上させている。会計も低価格だから現金払いが多く資金繰りも円滑だ。広告を一切せず、クーポンなど割引券の配布をしない。スマホアプリもなく販促費などの費用をかけていないから、販管費を抑えられている。原価が約40%と高い分を他の経費で調整し利益を確保している。

 

最後に!

 

1970年創業のすかいらーく、1973年創業のサイゼリヤとほぼ同じ時期にスタートした両店。付加価値を高め適切な値上げを実施するガストに愚直なまでに低価格を追求するサイゼリヤ。異なる戦略で違いはあるものの、約50年以上の歴史を有する両社の今後の展開を注視していきたい。