中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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日本と中国はもっと仲良くせねば!

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海外旅行者に人気の通天閣

 

 

中国が東京電力福島第一原発にたまる処理水の放出に反発し、日中関係に不穏な空気が漂っている。日本としては、大国である中国と良好な関係を維持しながらビジネスを展開することが最適だと思うが政治的な問題が付きまとい、なかなか円滑に進まないのが現実である。


日本産の水産物の輸入を全面的に停止した上、反日的な世論も一時、異例のエスカレートを見せていた。中国側としては、日本に圧力をかける狙いがあった一方、振り上げたこぶしを下ろすような弱腰の姿勢を見せれば、国内世論の矛先が自分たちに向かいかねないという懸念もあったのかもしれないが、中国のこうした姿勢は両国関係にとってマイナスでしかなく、お互いにメリットは少ないであろう。

 

私のクライアントに中国人の経営者がおられる。その中国人経営者のそもそもの事業目的は中国人富裕層向けに医療ツーリズム(人間ドック受診+旅行のパックツアー)を提供する事業を日本で展開することであり、4年前に日本で会社を設立した。

 

しかし、コロナにより、その目的をなかなか果たせなくなってしまったのである。

 

注目されつつあった日本でブームが起こりそうであった医療ツーリズムが、コロナでそれどころではなくなったのである。とりあえず、会社維持の為に他の事業を急遽行っていた。そして中国からの行動制限の解除を待ち続ける状態であった。

ここにきて、ようやくコロナも収束し、海外からの旅行者も増えつつあったが、一番の訪日客数で、医療ツーリズムの標的顧客である中国からの旅行者の行動制限がなかなか解除されず、時間を要すると懸念されていた。そしてこの度、ようやくその目途が立ったので、受け入れ体制の整備を急ピッチで行っていたのに、日中関係が最悪となり、それらの問題が再燃し、足かせとなっている。

 

コロナ前の中国人富裕層による日本の「医療爆買い」がコロナで皆無状態に陥ったが、そのコロナが収束後、再びその需要が爆発しそうであると、その社長は期待していただけに肩を落としている。

 

 

 

 

 

中国人社長が取り組む医療ツーリズムの具体的な事業内容としては、

末期がんの治療や美容医療の施術など、それまで主流だった「検診ツアー」から一歩進んだニーズも高まっており、医療に対する需要が旺盛な中国人富裕層に対して手厚いサービスを提供し、収益を得るつもりである。

計画している商品・サービスとしては、ゴルフ付きの人間ドックや一般的レベルの人間ドックを用意する。価格は総額100万円程度からの価格を想定。医療ツアーの受け入れ業務や医療通訳士の育成を行うからそれだけ高額になるとの事である。

提携した総合病院で、VIP対応の医療スタッフが対応し、人間ドックのほか、オプションで大腸CTや頭部MRIなどの検査も可能にする。また同時に、観光などのアレンジにも対応して日本を謳歌して帰国して頂くものにする。ツアーは社長が企画し、販売は中国各都市の旅行代理店と国内旅行代理店に委託するようだ。

 

コロナ前は、中国人観光客が、日本の家電量販店や百貨店などで商品を大量に購入する「爆買い」がものすごい勢いで日本の店も潤っていたが、コロナでそれらがすべて消滅し、日本の店は存続に危機に晒されていた。中国人観光客の興味の対象が買物だけでなく、食や文化に移っていることもある中、新たな爆買い傾向が顕著になっていたのが医療分野であった。中国人観光客がわざわざ日本の治療体験に来る理由は、日本の医療品質に対する信頼の高さである。

その人気の医療ツアーの中で特に目立つのはがん検診だが、美容整形・腰痛・緑内障・花粉症なども人気である。ある中国人男性は医療ビザを使い、2~3ヵ月に1度、日本にやってくるそうだ。

日本のがん診断システムは世界で一、二を争う高いレベルを有している。がんの治療を行うためには、早期発見こそが一番重要だが、それを知った中国からの観光客からの検査予約が非常に増えている。中国の富裕層は長生きするためなら出費は厭わないといった印象である。それだけにこのニーズに対応するビジネスを展開していかねばならない。このように、日本における“感動的な治療”に触れた彼らが自国内で口コミを拡げることで、今後もさらなる医療目的での訪日が増えると推測される。

中国と日本の医療機関には根本的な違いがあり、中国人富裕層には日本で医療を受けたいというニーズが強いらしい。過去を遡れば、中国人富裕層の訪日医療ツアーは2000年代から始まっており、2011年の東日本大震災や2012年の尖閣問題で一時は退潮傾向にあったが、それが個人旅行者の増加とともに、近年再び脚光を浴びていたのである。

日本で受ける検診は精度が高いと評判で、中国で見つからない癌が日本では見つかるとも言われている。中国の大手企業のなかには幹部限定の福利厚生として、日本で人間ドックが受けられる制度を設けている会社も存在する。

 

がん検診について言えば、中国にも日本と同レベルで体内を撮影できる機器はあるのだが、その画像を見てがんかどうかを診断する医師のレベルは、日本のほうが優れていると言われる。しかも、がんの陽子線治療など一部の先端医療に関しては、日本で治療を受ける方が中国よりも安価に済む場合がある。安くて品質が高く、サービスも充実。安全性も高いとなれば、中国人富裕層が訪日医療ツアーに大挙するのは当然といえば当然だろう。

コロナにより中国から日本への入国制限により、来日中国人はゼロになってしまった。日本医療爆買いは入国制限が解除されたら、また爆発しそうで、その収益機会を逃さないように体制を整備していきたい。

価格面に於いては、外国人患者は通訳を交えて会話するため、医師にとっては意思疎通の手間と時間が日本人以上にかかってしまう。さらに、人間ドックで使う検査機器の利用代金として、日本人向けより高く設定していることがあるようである。

 

通訳料金は別途必要で、半日で5万円前後、1日の場合10万円ほどになる。加えて、病院からホテルまでハイヤーでの送迎サービスを利用すると、往復10万円かかる。このため、日本人だったら30万円程度の1泊2日の人間ドックを外国人が受ける場合、通訳や送迎料金などを含めると、総額100万円ほどかかるのである。だから健康になれるならお金をかける意識の強い中国人富裕層を標的顧客にして付加価値の高い医療サービスと旅行ツアーを販売していく予定である。

 

競争面に於いては、中国にある富裕層向けのツアー会社や不動産を扱いながら医療ツアーを販売する兼業会社がある。(不動産業者には富裕層の顧客がたくさん集まってくるので、医療ツアーの営業がしやすいようだ。)

 

2000年代以降、経済産業省・厚生労働省・国道交通省などの関係省庁が連携し、観光立国方針の下、インバウンド観光振興の支援・助成事業を実行し、2010年にメディカルツーリズムの推進を加えた。加えて、新たに「医療ビザ」の発給を行い、日本での長期滞在、治療を可能とした。

 

結果として、2011年 70件から2019年 1,653件へ増加し、中国大陸からは約80%を占めている。また、医療ビザ以外の訪日ビザ緩和特に中国籍への対応やマルチビザの取得、日本法人開設などの業務、投資ビザで日本に滞在時にメディカルチェックや診療、治療を受ける人が急増しているようだ。

 

2019年の訪日者実数3,188万人で消費額が4.8兆円であり、2020年4,000万人を予想していた事から、コロナが収束し、入国制限が緩和された前の状況に戻るなら、今後また拡大する余地は充分にあると推測される。

 

これら医療ツーリストで、お客さんが治療や入院の前後に周辺を観光することで、飲食店や宿泊施設、観光地などでのインバウンド需要の増大も期待されるなど、医療業界や旅行業界の発展だけでなく、日本経済全体への効果が見込まれているということが大きい。

 

競争相手としては、タイに於いて、中国人患者がタイで医療サービスを受けやすくなったと聞く。もともと、安価で質の良いサービス多言語対応などから今までもメディカルツーリストに人気のタイだったから、BDMSとの連携によって中国人患者がタイへの渡航に必要なビザの取得の手伝いや通訳、空港からの送迎などのサービスが受けられるようになる為、今後は、より多くの中国人が医療目的でタイを訪れることが推測される。

 

加えて、競争業者として、中国にある富裕層向けのツアー会社や不動産を扱いながら医療ツアーを販売する兼業会社があるのでこれらとの差別化が必須だ。(不動産業者には富裕層の顧客がたくさん集まってくるので、医療ツアーの営業がしやすいようだ。)

 

社長としては、社長自らの人的ネットワークをフル活用し、良質でリーズナブルな価格設定による医療&観光ツアーを企画販売できる強みがある。もうすでに打ち合わせ済みで早く入国制限が解除されるのを待つのみである。

また事業の協力者と業務提携し、更なる運営基盤の強化に努めていくと頼もしい限りである。様々な協力業者と付加価値の高いオプションを加えて単価の上昇と顧客満足度の向上に注力していくようだ。

3年超に渡り苦しめられたコロナによる行動制限がようやく解除され、本来の事業目的が遂行できると社長は喜んでいる。必ず成功できるよう、私としても全力で支援していきたいと思う。

だから、その後押しとして日中関係の改善が早急に求められるのである。