中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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焼肉店の高齢店主から店を譲受!

焼肉店の高齢店主が腰を痛めたことをきっかけに体力・気力共に低下し、事業継続が困難になったので廃業を検討していた。

 

しかし、廃業するには賃借物件をスケルトンにして貸主に返す契約だったから、相当な廃業コストがかかりその負担が大きく悩んでいた。

 

 

店によくきて店主とも気心が知れている客が、「それなら自分にやらせてほしい」と店主に譲渡を希望した。しかし、その客はやる気はあるが、開業費用が全くないといった経済状態。

 

 

聞くとけっこう年収がいい会社に勤めており、コツコツとお金を貯める性格で、しっかりした経済観念を持つ40歳だが、実家の借金を立替えた為に、今はお金がない状態らしい。

 

店の常連さんでもあり、お互いをよく知っていたので、店主もこのまま引き継いでくれるなら、造作物・厨房機器・什器備品は無償で譲渡し、建物の賃貸借契約だけ別途、ビルオーナーと締結してくれたらいいとの事で、譲渡希望者からしたら破格の条件なので、大変喜んだものだった。

 

形態にもよるが、通常、焼肉店を開業するなら、焼肉ロースター設置とダクト工事にかなりの初期投資が必要で、坪当たり100万は必要とされる。

 

それが開業後10年を経過しているとはいえ、タダでもらえるということは非常にラッキーな話である。

 

また、賃貸借契約では、差入れ保証金350万、賃料36万、仲介手数料40万程度が必要とされたが、新店主はそのお金も用意できない状態だった。

 

そこで旧店主は、「差入れ保証金の350万は分割で私に返済することとし、ビルオーナーには自らが差し入れた保証金をそのまま充当してもらうことにして転貸借といった形にしてもらう」といった交渉をしてくれ、仲介手数料と在庫商品の買い取り、釣銭5万は、別途自らの退職金+営業後の収益金でこれも旧借主に2回に分けてで支払うといった契約にしてもらった。

 

一般の起業であればそれなりの退職金である程度、開業資金の原資になるが、新借主の勤務していた会社は給与の一ヶ月分しかない退職金だったので、預貯金もない状態の新店主はそういう条件をお願いして、旧店主には納得してもらった。

 

 

 

一式揃っており、譲渡価格を安くまた分割支払いで契約を締結してもらい新店主にしては千載一遇のチャンスである。自分の店を持てた新店主は信頼して店を譲渡してくれた旧店主を裏切らないよう、必死に働き1年で完済し、お互いが安心していた。

 

店の屋号もメニューもそのままで、末日に旧店主の営業が終了し、間に入替えの休日を入れず、翌月度1日から新店主の営業にさせてもらった。

 

地域住民には告知せずそのままサイレントなオープンにさせてもらい、広告費など本来必要な費用をかけず、また内外装などの余計な費用も一切かけなかった。

 

それらはお金に余裕ができてから必ずやろうと考えた。

 

元々、新店主は調理師免許を有し、バイトで飲食店の厨房経験も豊富であったおかげで、肉を切るのはうまかった。そういう調理技術と旧店主がおいて行ってくれた各メニューのレシピがあったので、問題なく料理提供はできた。

 

調理補助や接客スタッフもそのまま店に残ってくれたので、運営自体は何の問題もなくできた。

 

 

ランチも営業し、ディナーも工夫したことでし客単価も上がり、売上も急増したものであった。とにかく現金をかき集め、旧店主の支払いなど出金を極力遅らせる取引を踏襲し、入金を早めた工夫の回転差資金により、現金を毎日できるだけストックした。

 

 

そして、不測の事態に対応できる資金管理を徹底した上で、旧店主への支払いを確実にしていった。

 

旧店主の様々なサポートもあり、また、新店主も不退転の決意で挑んだだけに、何とか予定よりも早く1年で弁済できて旧店主は大変驚いていた。

 


 

 

 

今は一国一城の主として頑張ることができた新店主は旧店主に大変な感謝をしている。旧店主も費用の負担なく廃業できたので、新借主には感謝しているとの事だった。

 

お互いがウィンウィンの関係になれて良かったものである。