昔は高度経済成長期、従業員は入社したらまずは会社に自分を帰属させ会社に忠誠心を持って自らを犠牲にしても会社の為に貢献していき、会社はその従業員を生涯に渡って面倒を見るといった強固な労使関係が確立されていたものである。
そして無用な社内での争いを回避するために年功序列制度を採用して、従業員達に長く会社で働けば時間の経過と共にスキルア法が図れ会社での位置づけも役職と共に上昇していくといった制度を定着させたものであった。
しかし成熟経済に入り、そういった制度をどの会社も維持できなくなり、人事評価も年功制度から能力制度へ変更。また能力はあっても発揮しない従業員が増えた事で実力主義と成果主義に変わってきている。人口減少による労働力不足に苦しむ現在も、再度、終身雇用や年功制度に戻ることはないだろう。
トヨタ自動車の豊田章男社長は今年5月に「終身雇用の維持は難しい」と発言しており、同社が日本型雇用の見直しに乗り出しているのは間違いない。トヨタは日本の企業を先頭を走るリーディングカンパニーの役割を担う企業だが、そのトヨタでさえこれからの終身雇用は難しいと言っている。
だから、他の企業も同様の考えを持つ事は避けられない状況になっているのだ。各社は、好業績なうちに早期退職を実施したり、優秀な新卒社員に対して高額の年収を提示するなど、従来の雇用形態にこだわらない対応を行うようになっている。終身雇用や年功序列を基本としたいわゆる日本型雇用は、本格的に解体に向けて動き出す可能性が高い。
そんな状況だから会社に尽くしても会社は生涯自分や家族を守ってくれない。
働き手も自己責任の時代だから、転職してスキルアップと人脈形成を図るのは必要になってくると思う。最近は、働き手の意識も大きく変わり出している。
リクルートワークス研究所による「全国就業実態パネル調査」によると、「これまで一度も退職したことがない」と回答したのは雇用者全体の31.8%で、正規雇用の男性は48.1%、女性は38.0%だった。非正規雇用では男性が15.2%、女性が10.9%となっているようだ。雇用者全体で見た退職回数は、1回が17.9%、2回が14.7%、3回が12.1%、4回が6.5%、5回が5.8%、6~10回が7.1%、11回以上が1.9%となり、これらのデータからも既に終身雇用の流れが衰退していることが分かる。
事実、私も2度転職をした。1度目は人間関係で離職、2度目はしたい事が出来たからである。1度目の人間関係による離職の時は、つまらない人間関係で神経をすり減らすなら環境を変えて思い切り仕事に専念したいと思ったからだ。
2度目は今やっている仕事を自分が天職として将来に渡ってやっていけるかと悩んでいる時、自分に合う仕事を探し出しこれは合っていると確信し、その道に進む為に離職したのである。
もちろん、どの仕事も長続きしないといった過度な転職は会社にとっても迷惑だし自分にとってもメリットがない。そういったことを踏まえて、自分の適性と働く目的を明確に定めたら、勇気を出して挑戦することは重要だ。たった一度の人生では後悔のない職の探索をしてほしいものである。