中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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忘年会に行きたくない若者が増加中!

忘年会に異変が起きている。参加を拒否する若手が増加中だ。テレビ調査によると、なんと85%もの人が不参加を希望しているとの事だ。酔った席でのセクハラやパワハラ、一気飲みや一発芸の強要、が主な嫌な理由らしいが、根本は煩わしい人間関係にあるのだろう。

 

人間性尊重型 大家族主義経営 新しい「日本型経営」の夜明け

人間性尊重型 大家族主義経営 新しい「日本型経営」の夜明け

  • 作者:西泰宏,天外伺朗
  • 出版社/メーカー: 内外出版社
  • 発売日: 2018/10/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

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私的には、社内でコミュニケーションを取るには最適な機会だと思うが、若者世代はそうでもないようだ。

 

会社も昔はこの時期になれば、出席簿が各部署に回ってきて、半ば強制のようなものであった。もし欠席者がいようものなら上司から説得活動が行われていたもの。しかし今、そんなことやったら一発でパワハラとされて、上司も立場を弱くするので、中々言い出しにくいようである。会社の人とは業務以外の付き合いを一切したくない、という若手もおり、それがまかり通る会社もあるようだ。

酒を飲まない、自分の私的時間を大切にしたい」との若手の声を聞き入れ、仕事時間内の昼間に、会社内で宅配などケータリングサービスを利用し、忘年会もどきを開催する会社もあるようだ。因みに宅配会社の売り上げは前年比200%だとのことである。

 

 

 

 

 

 

欧米のようなジョブ型雇用とは異なり、メンバーシップ型雇用の日本では就職ではなく就社である。このジョブ型とメンバーシップ型(*1参照)の雇用スタイルの違いが、忘年会の必要性にも大きく影響している。この当たりの認識にも上司と部下にはギャップがあるようである。

 

また昔のように、経営家族主義(*2参照)がうまく機能し、従業員が一体感を醸成している時にはよかったが、会社の求心力が低下しつつあり、集団主義から個人主義への転換が進むような時には、忘年会への強制参加には無理があるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

終身雇用が崩壊しつつある日本だが、それでもこの人手不足の中、社員の定着率向上を図りたい会社。あの手この手で社員の帰属意識を高める努力を怠らないようだ。だからこういった飲み会を通じて部下とのコミュニケーションを図りたいみたいだが、若者はそういうことに対し嫌悪感を示している。

 

昔は会社内の事だけしっかり勉強していたら一生面倒を見てもらえたが、そうでない今はどこでも通用する能力形成が必要だと認識している。そこで重視されるのは、エンプロイアビリティ(employability*3参照)があるか否かだ。

 

今の若い人は、「会社はいざとなれば自分たちを守ってくれない」という認識の元、自己責任で自分を磨かないといけない気持ちが強く、会社への忠誠心より自己主義の面があるのだろう。

 

それが中高年世代とのジェネレーションギャップを招き、壁をつくってしまうのだ。そういう環境の中で、自分の将来をきちんと見据え、未来設計を描いており、それを実現する為のキャリアパスを設計している若い人が多いのが今の特徴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の50代以上は終身雇用を前提に入っており、企業内特殊能力を中心に能力形成したことで他社でも通用するスキルがない人もいる。そういう中高年世代を反面教師にして、今の若者は早くから意識して自分のスキルアップを図る準備をしているようだ。

 

大学生の頃から資格取得に興味を持つ学生が多いのはこれらの表れだろう。転職市場の発達もそれらを後押ししているようだ。またいろいろな情報を持っているのも若者の特徴で、意識して視野を広げているのだろう。今回の忘年会への参加拒否騒動もSNSやネットを通じて活発に情報収集しているみたいだ。

 

 

 

以前の 日本は、まず自分を一旦は会社に帰属させ、従業員全員が一丸となって経営目的を達成していくことを優先していくものだった。その結果、頑張った成果を従業員達が享受しあい、また会社は従業員を一生面倒を見るという、良好な労使関係を維持する制度がどの会社にもあったもの。

 

しかし、経済が成熟化してどの会社も余裕がなくなたら維持できなくなっている。あの日本のリーディングカンパニーであるトヨタでさえ、終身雇用の維持は難しいと公言しているから、他の企業も雇用に対する考えを改めるのも一定の理解はできる。このように環境が変化している中、忘年会だけは旧態依然を踏襲するというのは、少し無理があるのかなと考えさせられる。

 

(まとめ)

今は、部下ファーストで気遣いしながら若者と接する上司。何かあればすぐパワハラやその場に応じた〇〇ハラと言われ、腫れ物に触るような感じだ。日本は欧米の経営スタイルを採用しつつも、まだまだ集団主義の会社が多いのも事実だ。一人では何もできないから、皆が集まって力を発揮するのが会社の役割だと思う。

 

昔みたいに何でも会社優先主義の時代ではないが、個人より集団に価値を置く思想の日本である。1年に1度くらい、普段接しない人と酒を酌み交わして親しくなったり、皆が集まり普段言えない本音を語ったり、絆を確認し合う事ができる忘年会は必要だと、私的には思うが寂しい話である。

 

 

 

 

*1.ジョブ型とメンバーシップ型

 

ジョブ型雇用は職務に人を合わせる管理手法であり、例えば財務やマーケティングの人材を募集し、それがきる人を採用するのである。一方、メンバーシップ型は人に仕事を合わせる管理手法で、入社した人材の適性に応じて既存の仕事を割当てるのである。

 

要は、欧米のように従業員が割り切って職務記述書に基づき、自分に与えられた職務だけを遂行する個人主義か、日本のように職務が曖昧で何でもやらされて会社に貢献する集団主義かは難しい所だ。

 

*2.経営家族主義とは、

 

経営者は従業員を家族のように接し、従業員は会社を家のような存在に思い、お互いが協力しあって経営目的を達成するもので、家族制度における家父長的温情主義を企業経営に持ち込み、それを経営の運営原理とすることだ。経営家族主義のもとでは、経営者は単に機能的な雇用・指揮監督者であるばかりでなく、家父長のように絶対的権力者として物心両面にわたって従業員の個人の生活面にも介入し、且つ、一生の面倒をみる。

 

従業員はその恩恵を受け取り、個人生活への介入を甘受するとともに、会社に対して忠誠心を捧げて生産に励む。これらを実現可能にする為、また支える基盤としているのが終身雇用制である。経営家族主義では、人の和と人間的接触が重視される。従業員の採用では、能力よりも集団的協調性が重視され、昇進や人事異動は年功主義により行われる。高齢化社会を迎え年功制の弊害が目立つようになり、能力主義・成果主義・実力主義の導入で終身雇用制がなくなりつつあり、一体感のある組織運営が影を潜めるようになっている。

 

 

*3.エンプロイアビリティ(employability)

 

雇用され得る能力のことで、Employ(雇用する)とAbility(能力)を組み合わせた言葉。 一般に転職できるための能力を示し、エンプロイアビリティが高いと、転職や再就職の際に有利になるといわれている。企業内外を越えた労働市場におけるビジネスパーソンとしての価値でもある。社会経済情勢の変化から企業が労働者の長期的雇用を保障できなくなり、長期雇用に代わる発展的な労使関係を構築するために、他社でも通用する能力を開発するための機会を提供するものである。