中小企業診断士/行政書士 中村事務所

飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士です。事業承継の支援も致します。

経営家族主義の良さを活かした雇用管理を!

お盆の真っ只中、8月15日に従業員のストライキの為に、営業ができなかった佐野サービスエリア。資金繰りが厳しい事が発覚し、納品を渋った仕入先に「業者ごときが調子に乗るな」と己の能力不足は棚に置き激怒する傲慢社長にみんなはついて来ないのであろう。

 

普段から仕入れ業者や従業員をモノのように扱い利用し、また上から目線で見ていたのだろう。だからすぐに本音が出るのである。愚か者の心は言葉に現れるものだ。

 

 

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店の為に奮闘し社長に意見する支配人や部長さんなど現場のリーダー達を解雇した為、従業員が反旗を翻した。しかしこの「鉄の結束」は見事なもので、急遽、労働組合ができ水面下で、みんなが緻密な連絡を取り合い計画していたのであろう。

普通、大概は誰か裏切り者が出たり、その行為の反対者が妨害したりするものだが、この一致団結力は素晴らしい。よほど、社長が嫌われ、支配人や部長の人望があったのであろう。

 

このお盆の稼ぎ時に、只でさえ資金繰りが苦しい会社にとっては致命傷である。こんな者が社長をするから多くの不幸な人をつくるのだ。こんな仕入れ先と従業員が一体となってストライキをするなんて「前代未聞」である。もっと事前に何とかならなかったのか不思議だ。

 

 

中小企業診断士 過去問

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社長と言うのは上司もいないし自分の裁量で何もかもできて、気楽なものと思っている人もいるが、雇用責任など多くの責任を持ち大変な仕事である。「社長の器以上に会社は大きくならない」という名言があるように社長次第で会社は大きく変わるもの。社長の人間力(人格・手腕・熱意)で会社の栄枯盛衰が決まる。

 

 

また社長は、経営を軌道に乗せる為、従業員達に厳しいことを言わないといけないし、仕入れ先との交渉でも有利な条件を勝ち取ろうと無理を言う時もあるだろう。人にいい顔をしたり、好かれようと思ったりすると社長としての職責を担えなくなる。そうやって社長は経営していく上で、総ての責任を自分で負うものだから、孤独になるものでもある。

 

 

 

私も多くの中小企業社長と接してきたが、中小企業の社長と言っても色々なタイプの人がおられる。国内に358万社(者)ある中小企業だから当然であろう。業種業態ごとに見ても、個性豊かでユニークな社長が多い。またこれらは、先祖代々の家業を継いだ人、自ら立ち上げた創業経営者、とでは経営に対する考え方や価値観が違うのは当然である。経営理念も先祖代々のものか、自分でつくったのか、で異なってくる。

 

先祖代々の家業を承継する後継者は、家業の有形無形の経営資源を引き継ぐので、既にアドバンテージがあり、優位であるのは間違いない。もちろん、家業を継ぐということは、先祖代々続いた歴史と伝統ある事業内容だけに、後継者自身があまり自分色を出せない辛さがある。

 

自分でやりたいことをさせてもらうという条件で後継者になったとしても、まずは親が敷いたレールに乗り一通りやってみる必要はある。そうでないと従業員や取引先などがついてこず不満を持たれるだけだ。時間をかけて革新をした方が良く、まずはやりたいことは封印して、今の業務を従業員達と共に確実にやっていく事だ。

 

一方、一から立ち上げた創業社長は何もない状態から会社を創り上げたので、相当の苦労があったであろうが、自分のやりたいように会社を運営できるメリットがある。過去のしがらみもなく、自らの経営理念や信条をベースに経営できることは、制約条件のある後継者社長から見れば羨ましい話である。

 

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昔を振り返ると、終身雇用・年功序列・企業別労働組合といった戦後、日本経済を復興させた制度は、社員の組織への帰属意識を高め、良き集団主義を支えるツールの一つだった。これらが経営家族主義を形成し全社一丸となって会社経営をしてきた。

 

今の時代、これらの制度がそのまま使うと弊害が生じることがあるが、条件付きで再評価することも必要だろう。昔、父に連れられ会社の運動会に参加した時、暖かみがあり和のある会社だなと感じたものだった。従業員の家族も巻き込んだ一体的経営の素晴らしさを目の当たりにしたものだった。

 

終身雇用制度と年功序列制度は、これまでの日本企業において特徴的な雇用制度であった。日本企業はこれらの制度によって発展し、また社員はその恩恵を受けてきたもの。社員や家族の生活はこれらの制度に保障され、またその恩を感じて会社の成長に自らを犠牲にしてでも、貢献したものであった。

 

 

 

そのことが結果的に会社とや員の信頼関係を強固なものにして、日本企業の発展につながった。しかしながら近年の急速に変化する環境に、会社側がこれら制度を維持することが難しくなってきて、どこも雇用管理の刷新を進めている。

 

これら制度の長所を活かし、短所を見直して、今の時代でも活かせる雇用管理制度を確立しなければならない。これらの制度を完全否定するのではなく、自社で効率的に活用できる形で、導入していけばいいだろう。

 

<終身雇用制度> これまでの日本における雇用制度の、大きな特徴の一つ。終身雇用制度により、大企業は正社員として採用した新卒者を定年まで雇い続ける。社員は研修や教育を受け、会社にとって最適と思われる部署へ配属される。企業側は経済状況が厳しくなっても、労働者の解雇や一時解雇を行わないようにして、社員には安心感を持っていい仕事をしてもらうようにした制度。

 

<年功序列制度> 終身雇用制度と共に維持されてきた制度で、社員の給与は基本の初任給から始まり、勤務年数が上がるにつれて給与も上がる。同じ会社で我慢して勤続年数を増やせば待遇が良くなるので、転職抑制による社員の囲い込みにはメリットがある制度。

 

 

 

 

いつの時代も雇用管理の根本は変わらない。従業員に思いやりのある処遇と成長を促す仕組みさえあれば、会社と社員は成長するものである。そうすれば会社も良くなり、社員もそれらの家族も幸せになる筈である。「企業は人なり」、この当たり前の言葉をどこよりも認識し、うまく制度化した会社が、競争力のある安定成長する会社になるだろう。