中小企業診断士/行政書士 中村事務所

飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士です。事業承継の支援も致します。

ゼロゼロ融資の返済が始まり倒産件数が増加!

売上は回復しつつあるが、コロナの3年間で自粛経営を強いられマイナス分が残る中、融資総額42兆円のゼロゼロ融資の返済が始まり、倒産件数が増加しています。

 

今年上半期は前年比で1.8倍となり、また、物価上昇や人件費上昇と人手不足が加わり、建設業や飲食業・宿泊事業者など倒産予備軍が増えている状態であります。事業主さんは毎日の倒産ニュースを見て、「明日は我が身」と心配されておられるのが実情です。

 

その「ゼロゼロ融資」ですが、中小企業が金融機関から融資を受けるときに、元本は「信用保証協会」が保証し、利子は都道府県が支払ってくれるというシステムであり、コロナによる不測の状態を何とか解決し急場をしのぐには、その成果は一定程度あったと考えていいのでしょう。

 

コロナが始まった頃、みんなが経済活動を自粛して、政府も緊急事態宣言ということで、2020年の4月、5月ごろに企業に対して資金繰り支援が必要になった訳です。それをいかに迅速に、そして大規模に行うかといった観点からしますと、この「ゼロゼロ融資」というのは、緊急事態から中小企業等を救うためには仕方なかったことでしょう。

 

これがなければ各事業者は大変なことになっていたと思います。しかし、借り手の側からすると、借り入れの条件が甘く、信用力に問題がある中小企業も簡単に借りられ、身の丈に合わない借り入れを行ってしまったリスクがあったのも事実です。

 

それに加えて、コロナが長期化して本来であれば市場からの退出を余儀なくされる企業まで延命化させてしまい、限られたパイの奪い合いが続いて、価格競争から抜け出せない状態を作ってしまったことも問題であった。いずれ返さなければいけないお金なのに、その為の対策ができないまま今日を迎えてしまったのです。

 

金融機関側の問題点としては、長らく金融機関にとっては低金利時代である面、恵みの雨みたいなところがあったと思います。なぜならば、リスクを背負うことなく確実に収益を得られるという部分があったから、どこの企業かを顧みずに審査に時間を取られることなく、国の支援を元に過度に貸し付けるといったモラルハザードの問題というのが見受けられました。

コロナ前、既に政府系金融機関から借入れ過多だった企業が、コロナによる緩い審査での融資が可能だという状況に於いて、追加の借入を申請したら、面談もなくスムーズに借り入れができたという小規模企業もありました。確かにこのころの金融機関はパニック状態だから仕方がなかった面もあります。

 

コロナにより、直接的なダメージを受けた企業もあれば、以前より厳しい状況にあり、コロナで追い打ちを食らってしまった企業、加えて、コロナがなくても倒産状態にありコロナの緊急経済対策を千載一遇のチャンスと利用し資金を確保した企業があるのも事実です。それらを整理し区分化し、取捨選択して救済策を講じる必要があります。

 

コロナ前から経営が苦しかった事業者がコロナによる政府の手厚い支援に便乗し、「ゼロゼロ融資」で資金繰り支援をうけて延命している企業まで助けることは難しいですが、コロナといった外部環境の大きな変化により、優れたビジネスモデルを持ちながら、資金が枯渇して廃業せざる負えない事業者は、絶対に救済しないといけません。

生産性の低い企業が生き残ってしまい、生産性の高い企業が、ゾンビ企業を温存させる手厚い支援により、過剰競争からなかなか抜け出せない状態を変えなえればなりません。本来であれば、早急に廃業させて新たな産業に挑戦すべきだと推奨させる必要があるのですが、補助金や無利子融資のおかげで、古いやり方を踏襲する体質をの保持し、永遠に前例踏襲主義を貫く会社に業績の回復は期待できません。

 

ゾンビ企業の定義は、業績が悪く回復見込みが立たないにもかかわらず、債権者や政府の支援により存続する企業という事ですが、中小企業の生産性向上のため、生産性の低い中小企業の淘汰による経済の新陳代謝が促進される必要があるのは仕方ありません。

あらゆる要因で物価が高騰し、生活者は苦しい思いを強いられています。その為に政府は、「賃上げ」を進めていますが、企業が高い賃金・給料を支払うには、労働生産性を高めなければいけません。労働生産性の低い企業が減少し、労働生産性の高い企業が増加しなければいけませんし、その為の新陳代謝が必要です。

 

新陳代謝が阻害される理由は、①ゾンビ企業が商品・サービスを売り続けることによって、市場の供給量が減少せず、値下げ圧力が働くことで、成長すべき企業が事業を拡大させることができない、②ゾンビ企業が労働者を雇い続けることによって、成長すべき企業の方に人材が移動できないこと、等が挙げられます。

 

今、考えれば、まさかコロナがここまで長期化するとは思っていなかったでしょうが、それにしても42兆円の総融資額は大きいものです。焦げ付きによる国民へのしわ寄せがないように、対策を講じなければなりません。

 

これを機会に事業を再構築したり、経営力を強化したりしなければなりません。その為に、支援機関(中小企業活性化協議会など)や専門家を活用し、各事業者のより一層の再生に向けての努力を期待したいと思います。