中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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銀行もリスクを取らねば!

中小企業が最も重視する経営資源はお金である。人や技術も大切だが、金が回らなければ会社は存続できないので当然だろう。そのお金だが中小企業は技術やアイデアを持って会社を立ち上げたものの、資金繰りが下手な社長が多いのは否めない。会計知識がなく苦手意識から金の管理には逃げ腰である。

 

 

 

その為、いざ資金不足になった時に右往左往する社長が多い。ある中小企業から2.000万の融資申請を支援してほしいと依頼があった。事情を聞き決算書を見せてもらったが、特に断られる原因も見当たらないので快く受託した。

 

ただ一つ、何故、その会社の社長はメインバンクからの追加借入をしようとしなかったのかが不思議で、理由を聞くと、今の担当者と気が合わないからとの返事だった。人間関係的にまずいなら将来のメインバンク変更も視野に入れてのことだろうから、仕方ないかなと軽く思っていた私である。

 

その会社から現況をヒヤリングし、過去三年間の決算書と収益予測を元に銀行への提出書類を準備した。また同時に私の過去の付き合いからお奨めの信用金庫を新たな銀行として推薦した。そしてその信用金庫に関係書類一式を提出し、保証協会への手続きなど後は信金担当者に申請してもらった。特に信用保証協会からNGを出されるような案件ではないと思い、楽観視していたものであった。

 

 

 

しかし保証協会からNGの連絡が入ったのである。なぜなのか不思議に思ったが、どうもこの会社は、以前、信用保証協会で虚偽の財務諸表を出したらしく、協会のブラックリストに載っているようである。こうなったらお手上げである。

 

と同時に私にそういう大事なことを言わずに隠している社長に不信感を抱いたものである。メインバンクに追加融資を頼まなかった理由はこれなのか、とも思い、また担当者との人間関係を理由にしていたが、それも自らに原因があったのであろうと疑ってしまうものだ。

 

とはいっても私の大事な人の紹介だから無下に断るわけにはいかず、何とか打開策はないかと考えていた時にある銀行に行ってみることにした。この銀行は最近の預貸率から見ても、融資には積極姿勢だなと感じて、チャレンジする価値はあると思ったのである。

 

 

 

その担当者に一通りの説明を資料を見せながらしたら、けっこう前向きに考えてくれるとの事であった。3日後に、担当者から連絡があり、「100%プロパーは無理だが、当行も半分はリスクを持つのであと半分は保証協会なり他の銀行に当たって下さい」との事であった。結局、保証協会も他行も無理でこの話は立ち消えとなったが、その銀行の自らも半分はリスクを取るといった姿勢には感動した。

 

どの金融機関に話を持って行き、事業の将来性や収益性に基づく返済計画を示しても、異口同音に言われることは、「保証協会付きでなければ無理、担保がなければ無理」、との事だった。担保や保証協会をつけなければ融資せず、自らリスクを背負ってまで会社を育てようとしない銀行ばかりの中で驚いたものである。

 

しかしそれにしても、事業の将来性や成長性に基づく融資姿勢への転換を求められても相変わらずの担保偏重主義の銀行が多い。そんな融資姿勢だったら担当者の能力開発や成長は見込めないので、経済社会にお金を血液のように流して、活動を活発化させる役割を担う銀行として情けないものである。

 

だが残念なことに、そのリスクを取る姿勢が明確な銀行は今はなく消滅してしまった。結局残るのはリスクを背負わない銀行が殆どという悲しい現実である。

 

 

 

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