中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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迷走する「いきなりステーキ」

厚切りステーキをリーズナブルに楽しめる、高級感あるステーキを庶民でも食べれるようにしたパイオニアだと標榜していた「いきなり!ステーキ」がここにきて大苦戦である。

 

2013年の開業以来、急拡大してきたが、業績不振から全国で44店舗と大量閉店する。全国501店舗のうち、26店舗が2020年1月13日に一斉閉店。その後、18店舗が閉店する予定で合わせて44店舗が大量閉店するとの事だ。

 

 

 

先日は異例なお願いが話題になり、ネット上でも批判されていた「いきなり!ステーキ」

 

ここ最近の業績不振にやたらと注目が集まっていたが、「このままではお近くの店を絞める事になります」と地域のお客さん達にダイレクトに訴えかける常識から逸脱した行為には驚かされた。

 

いかにも自分達がステーキを庶民風にアレンジした業態開発の先駆者だと、言わんばかりのアピールにも同業他社は批判していた。この告知で、上から目線での訴えに不快に感じるお客さんも多いと聞く。

 

従業員達もいい迷惑だ。普通に商売すればいいのに、やたらと話題性づくりに力を入れた店舗政策だ。本業であるステーキの品質を高め、リーズナブルな価格で提供する事をひたすら極めればいいのに、どうも横道にそれる店である。

 

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この騒動に関しても、社長の独善的リーダーシップから、何でも社長が決め他の連中はイエスマンだらけなのだろうか。普通は、周辺の人間の誰かが、この一連の社長の暴走を止めるもの。東証一部上場でこれほど大規模な会社になれば、社長の暴走をけん制する抑止力的な力が必要なのは当然だと思う。企業統治はどうなっているのだろうか。

 

 

 

経営力は戦略と管理の一体的推進である。戦略で積極出店をしても、その管理を出店スピードに連動させてやらねば、現場は混乱し、お客様の不満が増えるだけだ。

 

その不満が口コミ・ネットコミで浸透する速度は早い。この経営の原理原則を徹底して、強化しながら市場を深耕しないと、酷評を地域に浸透させ、自分で自分の首を絞めるだけだ。

 

自分達の失敗で業績不振に陥ったのに、お客さんや従業員に何とかしてもらおうとする姿勢には違和感を感じる。

 

多くの利害関係者がいる東証一部上場企業の社長としての自覚と責任はどうだろうか。

 

 

 

しかし前回の告知事件で従業員も働きにくかったと聞く。あの告知は店で働く従業員達に、「この状態では店を閉めますよ。仕事を失いたくないなら必死に働きなさい。もっと自分の知り合いを客として来店させなさい」と強要しているようだ。

 

はっきり言って今は仕事はいくらでもあるから、こんな仕打ちをするなら逆効果だったと思う。従業員が今、次の仕事をどうするか悩んでいるようで、店の運営どころではないとも聞く。

 

店の危機感をお客にアピールした、あのなりふり構わない行動は通常考えられない。お客さんに何を求めていたのか。そして、その結果としての大量閉店。自分達で積極出店しすぎたことが、業績不振の原因の一つでもあるはずで、要は自業自得である。

 

 

 

 

 

 

 

外食業界は廃業率が非常に高く、1年未満で閉店した割合は34.5%、2年以内で閉店した割合は15.2%。合計すると49.7%となり、約半数の飲食店が2年以内に閉店しているということである。

 

さらに、開業3年では約7割が廃業し、10年後も営業している飲食店はわずか1割程度と言われている。こうやって、次々と新店舗がオープンする一方、どんどん潰れているのが、飲食業界の実態で新陳代謝が激しいものである。

 

 

業態開発に成功して人気店になっても、他店の追随を受けやすい外食。先行者利益を得る期間も短い。模倣されやすく業態の陳腐化サイクルが早いのに、強気で過剰な出店戦略。

 

歩いて4分にも店があるというコンビニのような自社内競合。その結果、大量閉店を余儀なくされた「いきなりステーキ」。

自己資本比率も5%を下回り、財務の安定性が欠けてきたが、現金商売という事業特性からまだ何とか運営できる現状だ。

何とも不思議な会社の物語である。