ラーメン店「幸楽苑」をチェーン展開する幸楽苑ホールディングス(本社・福島県郡山市)が6日、4月までに収益の低い51店舗を閉店すると発表した。
幸楽苑は全国で約500店を展開しており、この数字は全店舗の1割に当たる。
飲食チェーン店の大量閉鎖といえば、ペッパーフードサービス(東京都墨田区)が運営するステーキ店「いきなり!ステーキ」が、昨年11月に全店の約1割にあたる44店の閉鎖を発表したばかりである。
「幸楽苑」の閉店する51店舗は東北5店、関東14店、北陸甲信越1店、東海27店、関西4店。一部店舗は昨年12月に既に閉店している。
SNSには大量閉店を悲しむ声があふれる、一方でこの判断に理解を示す声も多く、ツイッターには「苦戦してたからしょうがないか」などの投稿もあった。
相次ぐ飲食チェーン店の大量閉鎖に、「幸楽苑が大量閉店。いきなりステーキといい、飲食の難しさを感じる。これからも多くのチェーン店が閉店していくだろうが、これが消費税増税の産物」といったツイートもあり、業績不振を消費税増税が諸悪の根源だという風潮があるようだ。
「幸楽苑」は、今回の大量閉店により、「閉店対象地域にかかる広告費・物流費等の販管費の大幅削減が見込まれ、配置替えによる人材の有効活用が可能となることから、収益率は向上」と説明し先行きの明るさを強調している。
今回の件は、「いきなり!ステーキ」と同様、急激に店舗を拡大し、成長スピードに管理スピードが追い付かず、収益の源泉である現場が疲弊しているのが、そもそもの原因でその打開策が撤退だろう。性急過ぎる出店で対応が疎かになり顧客離反が進んでいたからの歯止め策だ。
結局は経営陣が既存店の前年割れを新規出店で補完しようと、態勢が整わない内に出店を急ぎ過ぎたからそうなったのである。この点は現場と本部をつなぐ連結ピン的役割を果たすはずのマネージャークラスにも問題があると思う。
もちろん経営的に資金繰りが苦しくなったらオープン景気による現金集めの為に新規出店を続ける一面がある事は否めない。
一時期、同業態の「日高屋」に圧倒的な差をつけられ、経営危機が報じられた「幸楽苑」の業績が急速に回復し、数少ない外食の勝ち組になった頃が懐かしい。
そもそも以前の「幸楽苑」の業績低迷の原因は、①売り物であった低価格ラーメンの値上げによる客離れ、②郊外型を中心とした出店戦略だったが都心回帰の流れもあり駅前を中心に立地戦略を展開し居酒屋客も吸引して業績を伸ばした「日高屋」に差をつけられた、③従業員が調理中に指を欠損しそれが料理の中に入っていたという不測の事態が発生し、それが瞬く間に酷評として広がり顧客離反が加速した、等が業績不振の原因であった。
そこで新たに経営陣が選択した新経営戦略はプライドを捨て、他社の経営資源を有効に活用した成長戦略であり、V革の主要因である。今まで商圏内で同じ「幸楽苑」がお互いにお客さんを食い合いしてグループ内で競争しあっていた。
それを「いきなりステーキ」へのFC加盟で食い合い(カニバリゼーション)を解消し直接的な売上増大に繋がった、間接的には「幸楽苑」の社員への奮起の促進、等である。
社内に成熟事業と成長事業を抱え、双方で競い合うことで組織の活性化にもつながった。次の手は焼き肉業態へのFC加盟で「いきなりステーキ」にも緊張感を与えているようである。確かに「いきなりステーキ」のお蔭でV革のきっかけにはなったが、恩は感じながらも今後の取引としての力関係を考え、咬ませ犬的な新事業で「いきなりステーキ」にも取引先として競わせるようにしていたのである。なかなかしたたかな会社であった。
「幸楽苑」と「いきなりステーキ」がタッグを組み、共に勝ち組として注目されたが、それも長続きしないのが外食の特性と外食を取り巻く環境の厳しさであろう。
外食業界は廃業率が非常に高く、1年未満で閉店した割合は34.5%、2年以内で閉店した割合は15.2%。合計すると49.7%となり、約半数の飲食店が2年以内に閉店しているということである。
さらに、開業3年では約7割が廃業し、10年後も営業している飲食店はわずか1割程度と言われている。こうやって、次々と新店舗がオープンする一方、どんどん潰れているのが、飲食業界の実態で新陳代謝が激しいものである。
「いきなりステーキ」も「幸楽苑」も多くの利害関係者が存在する東証一部上場企業としての自覚と責任を持って経営してもらいたいものである。両社は再度、傘下に持つ多様なブランドを整理統合し、業態ポートフォリオを最適化させる必要があるだろう。
今後の動きに目が離せない。