「親がなくても子は育つ」とは言うが、息子はいつまで経っても頼りなく見えるものである。意外に外ではうまくやっているようだが、親としてはいつまでも危なく見えるものだ。
少年野球でもよく光景だが、親が子供にダメ出しをする。よその子と比べると我が子は下手に思えるのである。子供に負け癖をつけたくない、他の親に負けたくない、といつも叱咤激励するものであるが、こういうことは子供に合わせて加減しなければいけないが時にヒートアップして行き過ぎた指導になってしまうことが多々ある。
子供が委縮して上達意欲を失い、野球を嫌いになりやめてしまうことも多い。昔と違い怒られることになれていない今の子供たち。そんな環境の子供たちに親が感情的になって怒れば怖がり逃げ出したくなるものだ。怒ると叱るは違う。子供ながらその点は敏感に受け止めるものである。
このことは事業承継でもよくあることだ。自分では、まだまだ社長が続けられると思っていたが、周りから言われ、一旦退いて息子に社長を譲った。しかし、事あるごとに口を出す社長に後継者である息子は徐々にストレスが溜まってくる。そして、いつまでも権限を渡さず文句ばかり言うので、息子が精神的にやられてやる気がなくなってきているようである。その結果、社長を辞任し心療内科に通院するようになった。
またある会社でも、同様に前社長が会長に退いたのに、いつまでも自分が中核的役割に立ち、先頭に立ち会社を引っ張っていた。自分の居場所がなくなるという「不安」と、自分なしでも会社が円滑に回ることへの「嫉妬」から、なかなか表舞台から消えようとしない高齢前社長。会長職に退いても相変わらず代表権を持っている。
後継者も次第に諦め、逆に甘えるようになり、いつまで経っても一人前にならなかった。その内、会長に不測の事態が発生し、会社がうまく機能しないまま経営危機に陥り、廃業を余儀なくされることとなってしまった。
せっかく後継者がいて会社が存続できるのに、こういったもつれから、事業承継を失敗するケースは多い。
「任せることは育てる事」を理解しないと、いつまで経っても会社の新陳代謝は図れない。勇気と決断を持って譲ると決めたなら、後継者がやりやすいように補佐するようにしよう。