必死に働き、息子には自分と同じようなしんどい目には合わせたくないと、大学まで行かせた中小企業の社長。
大学卒業後、就職させたもののすぐに会社を辞め、今は無職のボンクラ息子。甘やかしすぎたのか、どう見ても後継者になる資質・能力がない。いくら親バカでもそんなボンクラ息子を社長の権限で無理やり社長にはできない。
もし強引に進めたら、今までともに会社の成長の為に頑張ってくれた従業員達が、悲鳴を上げるだろう。
だから、そんなことはできない。会社をボンクラ息子に任せたら従業員の雇用だけでなく取引先や顧客にも迷惑がかかるだけだ。
熟慮に熟慮を重ねた結果、自分の右腕でここまで会社を一緒に大きくしてくれた番頭を後継者に指名することにした。
従業員や金融機関にも伝えて了承され、承継準備に着手することにした。もちろん、①共に頑張ってくれたから、②従業員達の信頼があるから、③社内の事に精通しているから、といって、二番手では優秀な人が社長でも優秀とは限らない。でも息子に継がせるよりは間違いないだろうとの判断である。
社内外で番頭を後継者にすると宣言し、準備を進めていた矢先、社長が事故で急死。生前いくら周囲に「番頭に会社の将来を託す」と宣言していても、法律上の効力はない。株式など事業資産の相続人はボンクラ息子である。
自分ではなく赤の他人の番頭に後継者任命されたボンクラ息子は面白くなく、色々な画策をしていたようである。その結果、この会社は社内が混乱し、半年後には廃業したそうである。
事業承継を予定している中小企業の社長は、こういう会社を反面教師にして、取り組みましょう。
事業承継は、まず事業承継の方針を策定(誰にどのように承継させるか、後継者・承継時期・承継方法)し、行動計画を明確にした上で確実に推進させねばならない。
後継者に求められるものとして、「経営意欲と継ぐ覚悟があるか・資質があるか」がある。 「後継者のやる気が見えない」「創業者の親から見て子供はもの足りない」はよく言われるものである。
参考までに、後継者に求められる資質としては、
1)カリスマ性=確固たる経営理念を抱き、それを言葉でみんなに伝えることができるか否かである。
2)マネジメント能力=人・モノ・金など経営資源のマネジメントが必要になる。社長はいかに自分自身が動かずに済むかを考えねばならない。もちろん自分が楽をすることではなく、従業員達とは違う視点で経営に立ち向かうことが必要だ。
3)リーダーシップ=カリスマ創業者は自らのアイデアや技術で会社を立ち上げ会社をここまで大きくしてきたが、後継者も同様のリーダーシップとはいかないもの。息子が承継するなら、最初はボトムアップでの体制を構築しみんなと共に汗をかき、続いて、みんなを後方支援するような形で仕事を進め、そして、みんなに人間力を認めてもらった上で、父とは異なるリーダーシップを発揮したほうがいい。
4)交渉力=社内外のあらゆるところで交渉力は必要になる。円滑な人間関係を構築できる能力が必要である。
5)戦略性=中長期的視野に基づき、環境変化に柔軟、且つ、迅速に適合させながら、経営目的を達成する為の戦略と戦術をみんなに示す。そして、ベクトルを合わせられるように経営のかじ取りをする。
*これらを踏まえたうえで後継者の選定と教育を徹底しなくてはいけない。