中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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パワハラが横行する会社に未来はない

 

 

生まれも育ちも文化も習慣も違う人間達が一つの会社で働くには、必ず合う合わないやタイプ的に好き嫌いといった問題など、複雑な人間関係が生じるのは当然である。

 

通常は明確な経営理念やビジョンを従業員たちに示し、ベクトルを合わせて強固な企業文化や組織風土を築き上げて共通の価値観や行動様式で摩擦を発生しにくくしていくが、それでも企業規模が肥大化すると、部署ごとの都合や自らを優先し、分化と統合の為の調整に相当な苦労をする者であろう。

 

昔ながらの組織体系と明確なトップダウンで、上が下を徹底的に抑え込み、徹底したノルマ主義の中、上層部が予算権と人事権を盾に、強権政治で組織運営すると組織に歪が出るのは当然である。

 

今、世間を騒がせているビッグモーター社では、権力を持つ上司が、現場の店長などに上から目線で労働時間も無視した奴隷的拘束の中で、実現不可能な数値目標を押し付け、自分のいう事を聞き頑張って成果を上げれば、常識を逸脱した高額報酬を支給すると叱咤し続けている。その為、不正行為や非常識な不当営業で消費者だけでなく社会全体から批判を浴びている。そして、いよいよ重い腰を上げた消費者庁・国交省・金融庁などからも総てを調査され、今後の経営のめども立たない状態になっている。

 

急速に規模を拡大できた要因は多くの従業員やお客様の犠牲の元で実現したようで、その反動が恐ろしくらい大きく、取り返しのつかない状態だ。

 

 

その中でも上司からのパワハラが極端に多く、元従業員や現役従業員から暴露されている。不当解雇やパワハラによりうつ病になった事例が多く報道されており、異常な職場環境の中で従業員は仕事されてきたんだなと改めて思う。記者会見の場で、新経営陣は再起を図りたいと宣言しているが、まず難しいだろうというのが多くの予想である。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、パワハラの6つの行動類型を説明します。

 

①身体的な攻撃

叩く、殴る、蹴る、胸ぐらをつかむ、物を投げつけるなど、身体に攻撃を与える行為です。
②精神的な攻撃人格を傷つける発言をする、大声で罵倒して暴言を吐く、必要なく長時間にわたり叱責する、相手の失敗を嘲笑する、というように精神的に傷つける行為です。指導する際に、「何をやらせてもダメだな……」「また失敗か。使えないな」といった人格を否定するような言葉を繰り返し継続的に伝えている場合、このハラスメントに該当します。

③人間関係からの切り離し

職場や仕事仲間との関係において、特定の人物を排除する行為です。気に入らない人を無視する、必要な情報を与えず孤立させる、メンバーであるのに理由なく一人だけ会議に呼ばないなどの行為が該当します。

④過大な要求本人の努力では、明らかに実現することのできない無理な要求をする行為です。達成不可能なノルマを課し、達成できないことで強く叱責する場合が該当します。また、業務とは関係ない私的な用事を強要する場合も、この行為に含まれます。

 

⑤過小な要求

特定の人にだけ仕事を与えない、明らかに相手の能力や経験に見合わない仕事ばかりを与えることで、不安にさせる行為です。気に入らない労働者を辞めさせるために、意図的に仕事を与えず手持ち無沙汰にさせる場合などが該当します。

⑥個の侵害

プライベートの時間に私的な誘いに無理に付き合わせたり、個人的なことを詮索したり、本人の了解なく個人情報を暴露したりする場合が該当します。(ALL aboutより引用)

世間を騒がせ、業界への不信感を煽らせているビッグモーターの不正保険金請求事件では、保険会社と共犯ではないかと保険会社にも疑いの目がかけられているから驚きである。

 

 

 

代表取締役社長と副社長を辞任すれば問題解決が図れると思っていたビッグモーターの社長親子。やりたい放題で無茶苦茶だったので辞任くらいであっさり済むはずがなく保有する株式をすべて売却しないと世間は許さない。見事に読みが甘く、周りは何も言わないのだろうか。それにしても問題の張本人である息子の副社長は雲隠れして一切顔を出さない。

あまりにも卑怯な行動にテレビニュースやワイドショーはとことん叩きまくっている。それでも出る気配はない。あれだけ人を人と扱わずラインで罵詈雑言の連続だったのに、自らが追い込まれると姿すら見せない。

 

6月26日に第三者委員会が調査報告書を提出する以前から、数々の不正疑惑について報道されてきた。特に現役工場長が客のタイヤに穴を空ける方法を指示し、客に不正に工賃を請求していた実態も報道され、加えて不手際で客の車を炎上させながら隠蔽していた疑惑なども報じられてきた。

沈黙を貫いてきたビッグモーターが記者会見を開いたのは7月25日。兼重宏行氏(71)は社長辞任の発表をし上で、「不正請求問題は板金塗装部門が単独で行い、他の経営陣は知らなかった」と言い切り、自らの関与を否定した。この記者会見を見た元従業員や現役従業員は「ふざけるな」と、強く憤っており、また呆れてしまっている人も多かった。

 

不正が横行した最大の要因とされるのが、創業者である宏行氏と息子で前副社長の宏一氏(35)による強力なトップダウン経営だと指摘されている。もともとビッグモーターは宏行氏が一代で立ち上げた会社であり、その強烈なリーダーシップのもと急成長を続けてきた。

前社長は自ら運転して精力的に『環境整備点検』という視察活動を行うなど、仕事気質な一面もあり、だからこそ社長を支えたいと思ったり、一生ついて行こうという生え抜きが多くいたのであろう。しかし、彼らの息子に対する見方は別物である。

 

息子は親が築いた会社を息子だからと当然に引き継ぎ、社長の取り巻きにも自分のいう事を聞けとばかり、親の七光りをフル活用し前面に打ち出して取り巻き連中を従わせたのである。自分には何の力もないのに親の威光を利用し自分の存在意義を示し周りもこの暴君がやることを見て見ぬふりをする。そんな中、2015年に息子が副社長に着任して次期社長を強力にアピールし、「利益至上主義」へ大きく傾倒したのである。

 

そして無理難題の押し付けや実現不可能なノルマの設定で現場に相当なストレスを発生させ、店長たちをうつ病に導いたのである。さらにハラスメント行為も常態化していたようだ。しつこいくらいのLINE画像が実在しており、報道で流されているが、こんな会社にいたら精神をやられてしまうのは時間の問題とされる職場である。自分の息子にはこんな会社に勤めさせたくない。

会社側が不祥事を認めるタイミングが遅いだけでなく、社員を切り捨てる、店舗前の公共の樹木を除草剤で意図的に枯らせた疑い、など、傍若無人ぶりのやりたい放題は周りから見て腹立たしい。

 

こういう人として受け入れがたい行為が次々と明るみになり、それに対して経営者が会見で従業員への責任転嫁とも取れる発言をしたことで、ビッグモーターのブランドは完全に地に落ちてしまった。そんな、社会からの信用が失われてしまった会社がは難しいのは当然であろう。

事件を起こした会社は社内組織が刷新されるから逆に安心だという声もあるが、創業時から社長を支え会社の意向を熟知している生え抜きに会社が変えられる訳はない。すぐに大株主の前社長から罵声を浴びて軌道修正させられることが目に見えている。

 

6000人の従業員のことを考えたら潰せないというが、それだったらなぜこの従業員やその家族の為に未来永続的に成長できる企業経営をしてこなかったのだろうか。猛省しなければならない。今後どうするか注目したいが、もっと従業員も労働基準法に基づき声を上げたらよかったのにと思うと残念でたまらない。

因みにこの社長は、報道陣の「離職率が高いのでは」という質問に、「そうですか。1000人辞めてもすぐ1000人入ってきており社員の増減に変化はない」と離職率の高さを全く問題にしない、人を人と管理しない社長のようで呆れる。「企業は人なり」とどの会社の経営陣も意識することなのに無関心のようで、この会社の格段に高い給与につられて入社した社員が本当に気の毒である。

こういう会社を存続させる価値はあるのだろうか。