中小企業診断士/行政書士 中村事務所

飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士です。事業承継の支援も致します。

準備期間を考えて円滑な事業承継を!

 

 

年商5億の電気工事会社の社長が70歳を超え息子を後継者に選定したので、事業承継の準備をしたいとの相談があった。正直、事業承継には5年~10年の準備期間を要するのが一般的。あまりにも着手するのが遅過ぎる。しかもその子供はまだ若く25歳で社会人経験も浅い。

 

伸びる会社の息子への事業承継

伸びる会社の息子への事業承継

  • 作者:荻原 勝
  • 出版社/メーカー: 法令出版
  • 発売日: 2008/10/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

早速勤めていた会社を退職し、会社に後継者として迎え入れる事になったが、わがままそうで、経営者としての器ではない気もするような若者であった。

 

この会社は堅実経営で毎年前年越えの営業利益を計上している無借金経営の会社である。無借金がいいとは言わないが、財務の安定性を考えたら中小企業の弱点である厳しい資金繰りなどとは無縁の会社だ。

 

 

 

 

息子さんの覚悟と意欲は申し分ないが、経営者としての資質は未知数、業界知識や専門能力は今から必死に習得させねばならない。取りあえず社内の各部門をローテーションで実務経験を踏ませ、外部セミナーへの参加と取引先へ出向させる計画である。

 

 

 

社長の年齢は70歳を超え、肝臓に持病があるので、早く自らは会長職になり社長業務を誰かに任せたいとの事。私としては、それならなぜもっと早く承継準備をしなかったのか理解に苦しむところだ。

 

 

あまり時間がないが、性急すぎて未熟な状態で承継させると会社が混乱し、また当の本人も嫌気が差すだろうから、息子さんへの承継準備期間を長めに設定することにした。

 

そして、取りあえず創業以来社長の右腕であった現部長を、つなぎの社長に任命し雇われ社長として、息子が育つまでやってもらおうと決まった。他の従業員の理解と協力も得られるということで、早速来年4月から社長を任せる段取りで進めることとなった。しかし、話を聞くとその右腕的存在の部長は、二人いるということで、実力もほぼ均衡しているとの事だ。

 

 

 

2人はお互いをライバル視した関係。こういうパターンでは社長に選任されなかったもう一人が気分を悪くして、会社を去るという事がよくある。残留するにしても新社長が経営しにくいものだ。

 

どうしたものかと熟慮に熟慮を重ね決めたことは、息子の成長度合いを見ながら、二人の人気を公平にそれぞれ2年にして、交代で社長をやらせるというシナリオである。

 

そして二人を呼び、会社の承継方針を説明した。2人とも創業以来からの社員で現社長を父親のように慕っている人達である。

 

身内が後継者になるので自分達のような外様が社長をすることはないだろうとの認識を持っていたが、交代ででも任せてもらえることに非常に喜んでいた。

 

 

そして現社長、息子さん、私、二人で食事に行き未来の会社像を語り合った。その場で、全員が団結して会社の安定成長に向け協力し合うことを確認した。

 

 

 

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息子さんも多少の時間的猶予ができたとはいえ、悠長にしている時間はない。

 

承継計画を確実に実行するようにさせたい。話をすると、どうやら気持ちが先走りしているみたいである。自分が社長になったら、あれをもこれもしたいとやりたい事が多くあるようで、またわがままに育っており、何でも自分の思い通りにいかなかったら、すぐキレる弱点もあると聞く。

 

 

地に足をつけた経営をしていかねば、従業員は誰もついて来ない。社長一人では無力なもので皆の協力があってこそやりたいことが実現できることを理解させねばならない。

 

 

意欲が空回りする若い後継者はいきなり前社長のやり方を否定し、社内で軋轢を生じさせることもある。

 

古い役員やベテラン従業員を整理し自分に従順な部下を側近にしてやりやすい体制をつくり、言う事を聞かない者を排除したりする。先代とは違う自分独自の路線を敷こうとするものだが、必ず壁に当たるものだ。

 

自分なりの経営をする為、いきなり自己中心的に第二創業(*1)やベンチャー型事業承継(*2)を展開しようとしても、うまくいかず周りから批判の矢面に立つことになるもの。取りあえずは、父が敷いたレールに乗り、そこから改善点があれば、皆の協力の上で推進しなければいけない。

 

 

社長には、実務能力、業界知識、人柄や人格など人間力、決断力、財務的判断力、リーダーシップ力、コミュニーケーション能力

等、求められる力は多い。先ずは人間力(人格・熱意・手腕)から鍛えねばならないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(*1)第二創業

衰退をはじめた中小企業において、新しい経営者が引き継いだ事業を刷新し、業態を転換したり新しい事業へ進出したりすることを指す。 ベースとなる事業基盤維持しつつ、新たな取り組みをして経営の革新を図るもの

(*2)ベンチャー型事業承継

若手後継者が、先代から受け継ぐ有形・無形の経営資源をベースにリスクや障壁に果敢に立ち向かいながら、新規事業、業態転換、新市場参入など新たな領域に挑戦することで永続的な経営をめざし社会に新たな価値を生み出すこと。』と定義している。