中小企業診断士/行政書士 中村事務所

飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士です。事業承継の支援も致します。

カスタマーハラスメントには注意せよ!(下)

・・・・・・前回から続く

 

 

小さいトラブルで店側で十分対応できるのなら対応すればいいが、そうでなければ、時間を変え人を変えで、本部に対応してもらうというのがどのチェーン店もマニュアルになっているだろう。

 

でも逆にこういうカスハラ客は、そういう仕組みを分かっているし、相手が巨大なチェーン店であれば、ふっかけたらそれ相当の対応をしてくれると勝手に思い込み、やりたい放題のわがままを言う輩もいる。

 

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正直、相手が巨大な企業ほどこういう対応は手慣れており、変な前例をつくらないもの。だから社会通念上、常識の範囲でしか対応しないものである。無理難題を要求されても、「できることできない事があります。

 

できる範囲で精いっぱいやらせていただきます。」と返すことに終始するものだ。こういうクレームには、中途半端な規模の店の方が、この嫌なトラブルを早く終わらせたいからと言われるがまま従順に対応するところがあるものだ。

  

 

 

 

 

私も飲食店(焼肉店)を経営していたから、色々なカスハラもどきを受けた経験がある。こちらに落ち度があるのであれば、誠意を持って謝罪するのは当然だが、無理難題に対応するにも限度がある。

 

大概多いのは接客態度である。確かに酷い接客態度にはクレームがつけられて当然だろう。しかし一生懸命、従業員が笑顔で接客しているのに自分の機嫌が悪いからと、当たってくる理不尽な客がいるのも事実だ。

 

私が経験した中で、最も憤りを感じた「カスハラ客」は食中毒だと言いがかりをつけて対応に相当な時間をかけらされたのに、食中毒ではなかったことが判明したのに何の謝罪もなかったことである。問題発生から解決まで1か月の時間を要し、その間の心労は相当なものであった。今でこそ笑って話せるが、当時は悩み苦しんだものであった。

 

 

 

それはある日、お客さんから、「お宅の店でユッケを食べたが、帰ったらお腹が痛くなったので病院に行ったが、結果がサルモネラ菌による食中毒と診断されたからすぐに来い。」と電話があった。私も驚き、名前と住所を伺い、すぐに自宅へ訪問することにした。

 

そのクレーム客は、ゴールデンウィークの最終日に来店され、ユッケを食べたが、帰宅してすぐに下痢と嘔吐を繰り返し、病院に行ったという事であった。そして病院の検査結果、サルモネラ菌が検出されたとのこと。私の店に苦情の電話があったのはそれから3日後であった。

 

すぐにお客様の自宅に行き事情を聞きに行ったが、実はその電話の時点で「私の店が原因ではないな」と確信とまではいかなかったが、自信を持っていた。というのは菌には潜伏期間があり、食後すぐにその状態になることはあり得ない。

 

 

 

事実、当日は38個のユッケが販売されたが、そういう被害は他に一件も出ていない。

取りあえず店側としては、食中毒の事実は認めず、「せっかく当店に来店されてお食事をされたのにこういう目に合ってお気の毒です。」とお見舞いの品をお渡しして、当店のこれから実施する衛生検査の内容を説明した。

 

すぐに本部に依頼して店舗厨房を国立感染症研究所に拭き取り調査を実施してもらった。

こういうのはスピードが勝負である。その結果(何も検出されなかったとの検査結果

(大概出ないもの)と当社のセントラルキッチンはHACCPシステム(危害分析重要管理点と訳され、厚労省の認定制度)を導入し徹底した衛生管理をしていることの説明をした。

しかしそれでも、お客様は納得せず病院の医師とのやり取り(発生前の食事履歴)で当店で食べたユッケが原因と断定されたと言ってきたので、、やんわりと「それではその病院と医師名をお教えいただけませんか」と言ったが診断書すら見せてくれず「保健所に言いますよ」と言われた。

 

お客様と喧嘩するつもりはないが店の潔白と主義主張を明確にしないといけないので「どうぞ。保健所に言ってください。当店はやるべきことはやりましたから、後は行政の指示に従います。」と言った。引いたり押したりの駆け引きである。

 

 

 

1週間、こちらからは何もせず様子を見ていたが何も言ってこられなかった。このままの状態では一向に解決しないと思い、こちらから相手に電話してまたお家に伺うことにした。そしてその時の食事代金(12.000円程度)病院代は当店で負担することにして和解する運びとなった。

 

ずっとしつこく「仕事を休んだから休業補償や慰謝料をもらいたい」と要求されていたが、それは丁寧にお断りすることにした。その際、今後も当店の顧客として宜しくお願いしますと形だけの誠意を見せる為に割引券をお渡しした。でも正直、今夏事になったのでもう来店はないだろうと思っていたのだが、ある日、その人が家族で来店されてビックリした。

 

その際、食事をされたのだが何とユッケを注文されてまた驚いた。何とも不思議なご家族だが、私としては苦労もあったが食中毒への対応経験を積めてよかったと思ったものだ。

 

 

通常、どの店もクレームに対する対応マニュアルがあるだろうが、年々クレームの質が変化しており、また要求水準も上がっている。これは行き過ぎた顧客満足主義が生む弊害であろう。変に勘違いして自分たちは神様だからと理不尽な要求を当然としてくるのだ。

 

これから飲食店は忘年会シーズンで1年の中でも最も稼ぎ時である。売上が上がり嬉しい反面、こういう傍若無人のカスハラ客が影を潜めて狙っているかもしれない、と言うリスクもある。気をつけて運営してもらいたいと思う。