中小企業診断士/行政書士 中村事務所

飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士です。事業承継の支援も致します。

深刻なカスタマーハラスメント被害!

カスハラ(カスタマーハラスメント)で被害を受けた人は多い。私も飲食店時代にはよくあったもの。自分では一生懸命に顧客満足の為に頑張っているのに、「お前の態度が気に入らん」と大勢の人の前で罵声を浴びた事もある。何か嫌な事があったのだろうが、人に八つ当たりしかできない可哀想な人だなと思ったものだが、その時はショックだった。接客業が嫌になり、辞めようかと真剣に悩んだものであった。

 

カスハラ モンスター化する「お客様」たち

カスハラ モンスター化する「お客様」たち

 

 

 

 

またある時は、ホテルの中国料理店で接客サービスをしていた頃の話だが、一人でたくさんの料理を注文されたお客様がおられたので、その注文数は多いのではと丁寧に言って差し上げたら、「うるさい。俺は残すのが趣味なんだ。いらんことは言わんでええ。とにかく持って来い。」とブチぎられた経験もある。善意で言ったつもりなのに悲しくなった。こうやっていろんな心無い人から罵声を浴び心が折れまくりの時もあったもので苦い思い出である。

 

それでも、その仕事を貫けたのは、そういう嫌なお客様を忘れてさせてくれる、いいお客様も多かったからである。お客様に、「ありがとう」と感謝されることは仕事をしていて、これ程、人の役に立っていると自分を思わせてくれることはない。自分の存在意義がそのお客様のその言葉で実感したものであった。その「ありがとう」を聞けば嫌なことも吹き飛ぶものである。

 

 

飲食店は未熟な若いアルバイトの子が多く働く業態である。私は店長時代には、そういう若いバイトの子に、「嫌なお客様もたまにはいるが、いいお客様の方が圧倒的に多いから、挫折しようとなった時は、そういったいいお客様の存在を思い出そう」と、よく話したものである。

 

 

 

「カスハラ」が起きる背景には、過剰なサービスが過剰な期待を生む日本独自の文化と風土があると思う。行き過ぎた「お客様満足主義」や「顧客第一主義」が勘違いする「カスハラ」を生んでいるのではなかろうか。

 

 

 

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同様の言葉に「クレーム」があるが、「クレーム」と「カスハラ」は線引きは難しいが、度の過ぎた「クレーム」も問題だが、基本的にはそれらは異質なものであると私は思う。

 

 

クレームとは、購入した商品・サービスに意見や不満をもつお客さんが、それを提供した店や企業に対して問題点を指摘したり、苦情を述べたり、損害賠償を要求したりする行為や内容のことである。 商品・サービスについて何らかの意見や不満をもつ人のうち、実際にそれをクレームの形で企業に伝えてくる人はごく一部であり、多くの人は何も言わずに他の企業の商品・サービスに乗り換えるものである。

 

 

スイッチングコストの低い業種業態では日常茶飯事に起きる現象である。飲食店であれば、誰だって食事を楽しみに来てるのに、その楽しかった時間を台無しにする行為はしたくないものである。それをあえてその店を思うが為に、苦言を呈してくれるお客様は本当の意味で自店の事を考えてくれている、店にとってはありがたいお客様である。

 

 

こういうお客様の離反を防ぐために、店や企業はお客様のクレームに耳を傾け、有意義な情報として活用する必要がある。自分たちには分からない事や気づかない事を客観的な視点で助言してくれるので、可能な限り店や企業の運営に反映したほうがいいはずである。わざわざ問題点の指摘や助言をしてくれたお客さんも自分のそういったアドバイスが採用されたと思うと、より一層のご愛顧をして頂けて、ブランドロイヤリティが高まっていく。その結果、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)が高められるのであろう。

 

LTVとは、店や企業と顧客が継続的に取引をすることによって、顧客が店や企業にもたらす価値(利益)を指す。サブスクリプションなど、月額課金のサービスが増える中、新規顧客の開拓だけでなく、既存顧客へのサポートを充実させ、解約率を下げる施策が一般的になっている。一般的に飲食店では新規のお客さんを誘致するよりも既存の顧客の来店促進を促した方が販促費用などが五分の一で済むと言われている。また顧客離反率を下げることで売上と利益が安定し、アップセル・クロスセルにより、更に安定収益を拡大させることができる。

 

 

 

こうやって、クレーム対応を真摯に行うことで、店や企業の高感度アップにつながるし、商品やサービスの質をさらに高めることもできる。クレームは、企業の成長に不可欠なものでそうやってクレームを言ってくれるお客様は「第2の従業員」でもある。

 

 

 

クレームはそうやってうまく活用することで店や企業が進化するきっかけとなるが、「カスハラ」はそうはいかない。「カスハラ」をするお客さんは自分のその姿を一度鏡で見たラいいと思う。自分が周りから受けているストレスを、「自分はお客様だから」と理不尽なことを当然のように店や企業に押し付けてはいけない。

 

またそういう人こそ相手を見ながら攻撃するので、特に飲食店などお客様が優位な業態には上から目線でエラそうな態度をするもので、店側も見ていて気分が悪くなり、店によっては態度も悪くなり、そうなると双方にメリットがない。

 

 

 

そういう「カスハラ」には、誠意を持って対応するのは当然だが、できる事とできない事を明確に伝えて、言われっぱなしではなくある程度毅然とした態度も必要である。

 

人は他人の何気ない言葉に相手は傷ついてしまうものである。気分よく「ハレの場」でもある食事を楽しく快適にしようと思えば、店のスタッフへの配慮ができるような度量を持つ事も必要だと言いたい。