会社が経営効率や生産効率を高める為の行動基準に、3ム主義(ムリ・ムダ・ムラの排除)がある。特に無駄の排除に力点を置く中小企業は多い。だがこれを重視し過ぎると社内が窮屈になり、従業員の頭の中は乾いたタオルを更に絞って無駄を吐き出し、少しでも利益を出そうとする縮小均衡型の経営に埋没する。コスト削減を頑張りすぎたら自由で柔軟な発想ができなくなり、付加価値の高い製品開発もできなくなる。
「できる人」の時間の使い方~なぜか、「時間と心に余裕のある人」の技術と習慣~
- 作者: 箱田忠昭
- 出版社/メーカー: フォレスト出版
- 発売日: 2005/11/16
- メディア: 単行本
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経営に必要な資源である人・モノ・金に余裕を持った経営をすることも考えなければならない。例えば、工場で機械が100%動いていなければ利益が出ないようでは、何かがあればすぐに利益が出なくなる。80%稼働でも利益が出る仕組みを確立しなければならない。
人も同様で常に100%の力をフルに発揮しなければ利益が出ないようであれば、従業員が疲弊するだけだ。従業員の80%が働けば利益が出るのであれば、従業員も精神的に余裕が出てきて、その分を他のことに回したり、前向きな意見交換で会社の今後の更なる成長が期待できるであろう。
金に対しても同様で、資金繰りがぎりぎりの状態で融資申請しても銀行に足元を見られれるだけで交渉時に優位に立てない。余裕のある時に、次の投資を考えて追加融資を申請するなど、計画的に交渉を進めれば相手も納得して、前向きに協力してくれるものである。その時はもちろん返済に余裕のあるような返済計画で交渉しなければならない。
とにかく余裕のないぎりぎり経営はその場では利益が出るかもしれないが、会社を中長期視野に基づき考えたら先が暗い。
急速に進展する少子高齢化などの人口減少に起因する市場規模の縮小、市場の成熟化による多様性と複雑化、更には働き方改革が叫ばれる令和の時代には、過去の経験・ノウハウ・ガンバリズムなど時代遅れの手法に依存した経営では、会社を存続させることは困難である。だから「余力のある経営」を目指すべきである。
人・モノ・金の限られた経営資源を常にフル稼働させねば利益が出ない会社は、不測の事態に対応できない。あの「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」をスローガンに「必要なモノを時に、必要な時に、必要なだけつくる」といった無駄を排除した生産方式にこだわり続けた自動車メーカーでさえ、東北大震災の時に生産現場がストップしたものである。
「在庫は諸悪の根源」と在庫を徹底的になくし、無駄な在庫を一切持たなかったが為に、生産現場が停止したのは有名な話だ。それでも何年の一度こういう災害が発生するかという発生起率から、やはり在庫は持つべきではないと相変わらず従前のやり方に固執する生産現場もあるようだが。
とにかく不測の事態に備え少し余裕を持ち、保有する経営資源の80%稼働で利益が出せる仕組みを確立して余裕のある経営から、また新たな付加価値を創出する経営を目指しましょう。