中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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共に店を経営していた内縁の妻へ配慮した判決!

 

母と別れた父が新たな女性と恋仲になり一緒に居酒屋を始めた。自らが所有する不動産の一階を改装した住居兼店舗である。それほど商売繁盛しているようではない店だが、家賃がいらず何とか二人で仲睦まじく生活と経営ができているようである。いつかは籍をと思っていたが息子(一人)に遠慮してずるずるきていたのである。

 

しかしその幸せはいつまでも続かなかった。体調を崩した父がそのまま帰らぬ人となってしまったのである。相続人は前妻との息子である。

息子は相続した不動産をどうするか悩んでいたが内縁の妻をずっと住ませるつもりはなかった。所有者は権利のない占有者に「出ていけ」という権利がある。だからこの相続を機に建物の明け渡し請求を内縁の妻に求めたのである。

 

家主だった父と一緒に住んでいた内縁の妻との間に賃貸借、つまり家賃を発生させるような契約があれば、賃借人は新しい所有者に賃借権で対抗できる場合が多いが、一般的に一緒に住んでいる家について賃貸借契約を結んでいるケースはあり得ない。そうなると、内縁の妻にあるのはせいぜい「使用貸借」と呼ばれる弱い権利にすぎず、新たな所有者には対抗できないのが原則だ。

だが、内縁の妻がいままで平穏に暮らしていた住まいを追い出されることになってしまってはあまりにも気の毒である。判例は内縁関係には可能な限り法律婚と同様の法的保護が与えられてしかるべきであり、古くからあの手この手を使って、内縁の妻の「居住権」を認める結論を導いてきた。

 その理論構成としてもっとも多いのが「所有者からの明け渡し請求が権利の乱用にあたる」とするものである。それ以外に、内縁の夫と内縁の妻との間で、2人が同居していた内縁の夫が所有する建物について、内縁の妻が死亡するまで「内縁の妻に無償で使用させるという使用貸借契約が黙示的に成立していた」と認定して、内縁の妻に対する建物の明け渡し請求を認めなかった判例もある。不動産を相続した相続人がそれまで住んでいた配偶者を追い出すような請求は、原則的には認められない場合が多いのが現実だそうだ。

 

どうしても建物から退去させなければいけない客観的合理性があれば話は別だが、多くの判例では、相続人に、この建物を使用させなければならない差し迫った必要がなく、逆に、内縁の妻・夫の側で、この家屋を明け渡すと家計上相当な打撃を受けるおそれがある等の事実関係の下では、相続人が内縁の妻・夫に対して明渡請求をすることは権利の濫用に当たるとして、明渡請求を認めていない。

裁判長の温情ある判決には心が温かくなる。

 

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