中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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フランチャイズ契約の難しさ(下)

 

・・・・・続く

 

最近は、業態開発してちょっと成功したら、自らが本部を設立して他人資本を活用して、一気に多店舗展開しようとする会社がある。「何故、成功したのか」の大した根拠もないのに、また本部として加盟店を牽引する組織能力もないのに、加盟店を募集して、あの手この手で加盟させて加盟金を取ろうとする本部もある。

 

 

 

本部がしっかりしているか、否かの見極めが必要で、本部の言うことを一方的に信用してはいけない。脆弱な本部と共に心中しないようにしなければ大変なことになる。加盟店募集の際に、全く裏付けのない都合のいい数字を並べて、詐欺のような本部もたまにいるので注意が必要である。

 

 

フランチャイズ契約における紛争で特に多いのは、加盟時の説明とは異なるという情報提供義務違反である。全く根拠のないバラ色の数字を素人の加盟希望者に示し、且つ、相手は事業主なので、その場では、「オーナー、オーナー」と持ち上げ、気分の良くなる話ばかりする。そして期待させるだけさせて、加盟させるという手口が多い。

 

 

 

いかにも自社ブランドは価値があるとの説明で、大した指導もせず、返金不要な加盟金さえもらえればいいという、あつがましい詐欺本部もあるから見極めは本当に重要だ。

 

こういう脆弱な本部が成長するフランチャイズ市場の足枷となることは否めない。一生懸命やっているフランチャイザー本部が気の毒である。

 

 

中小小売商業振興法や独占禁止法のガイドラインでは、加盟店募集の際に、本部が加盟店に開示すべき事項が定められている。

 

一定の説明事項を記載した書面を加盟店に交付し、JFA(日本フランチャイズ協会)にも提出する旨を義務付けている。但し、これらは法律上の義務ではないとの事だかから、気をけなければいけない。

 

また契約を解除して独立したら訴えられたという紛争も後を絶たない。一般的にフランチャイズ契約では、秘密保持義務とこれを補うものとして競合禁止義務が定められている。

 

いくら定められているとはいえ、一生同じ業態や地域で商売ができないと強制されれば、「職業選択の自由」という憲法に違反するものである。

 

 

 

 

これらは個別具体的に判断されるもので、一般的は同一エリアで複数年ほど商売を禁止するくらいであれば、裁判所も有効としているようだ。

 

もちろん、大したブランド価値もなく、指導もいい加減な本部であれば、いくら本部が元加盟店に営業差止めや損害賠償を求めても認められないようである。

 

ブランドにそこまでの活用価値があるのなら、ロイヤリティを払い続けても加盟を続けるほうがいいだろうが、そこまで価値がないと判断すれば、脱会して自らが看板を入れ替えて、新ブランドで展開するのも一つの手でだと、みんな考えるものだろう。

 

実際の話、この手のやり方を実行する元加盟店は多い。最初は素人同然で本部からノウハウを提供してもらい、それらノウハウを吸収して自らが独力で運営できるとすれば、わざわざ本部にロイヤリティを払うことはないだろうと思い、本部からの脱退を考えるのだ。

 

 

 

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メガフランチャイジーも増えており、中には複数の異なるフランチャイズ本部に加盟してそれぞれのノウハウを吸収して、それら複数の業態ノウハウを融合させた新たなブランド・業態で、今度は自らが本部となり、全国展開している外食チェーン企業もある。

 

今後は更に、フランチャイジーでありながら、フランチャイザーとしても活躍する企業が増えてくることも予測される。

 

私も外食チェーン企業で、直営店の店長もやり、本部で経営指導員やオープンマネージャーもやり、そして本部を退社して自ら加盟店となり経営もした。だから本部と加盟店、双の立場も熟知している。

 

フランチャイズの担当になった時、加盟店オーナー全員に挨拶をした時、曲者だらけにびっくりしたものであった。とにかく経営理念共同体をスローガンに掲げ、共に顧客市場に攻めていこうと双方が誓っても口ばかり。他人資本ということもあり、足並みが揃わず苦労した経験がある。

 

業績が向上しているときは本部・加盟店も良好な関係を維持しているが、業績が下降気味になると、お互いが責任の擦り合いである。加盟店も独立経営している以上、業績が落ちれば死活問題で、本部に責任を持っていきたいという姿勢が強くなる。

 

 

 

重箱の隅をつつくように本部の落ち度を探し、損失補てんをさせようとする加盟店やロイヤリティを払う価値なしと、払おうとしない加盟店も多くあった。

 

こうなるとお互いが維持になり、顧客無視の不毛な争いが始まるのである。業績悪化の加盟店は従業員の意欲も低下しており、下手すると店舗内事故(食中毒や接客クレームなど)を起こしかねない。

 

1店舗の不始末が全店舗に負の波及効果を及ぼしてしまうので、多店舗展開している本部としては要注意である。またお客さんも直営店かフランチャイズ店かの見分けもつかないから、何でもかんでも本部に苦情を言ってくるから、その処理だけでも大変であった。

 

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そういう実体験も踏まえて、フランチャイザーで展開したいという個人飲食店の支援をした時は、それらの問題や課題を解決するノウハウも提供している。それらを放置していると、将来的な経済価値を失うことも念頭に置かねばならない。

 

フランチャイザーになろうとする者も様々だ。自身が開発したブランド・業態を全国に広めていきたいという者もいれば、加盟店から加盟金とロイヤリティをもらって、単に売上を拡大したいという者もいる。

 

加盟店を自らの為に利用するという本部は、その内、加盟店からの協力を得るのは難しくなり、自ら苦労して創り上げたブランドと業態の価値を毀損するだけだ。

 

有名な話を一つ紹介するが、

あるコンビニに加盟して一生懸命頑張り、地域でも絶対的な存在の店となった。そして近隣の競合する他のコンビニを撤退に追いやったが、その撤退跡に属する本部が他の加盟店に出店させて、今度は自らが撤退する事となったという、仁義なき残酷物語はよくあることだ。そんな「敵は身内にあり」と言った悲しい本部と加盟店の状態は絶対に避けなければいけない。

 

本部と加盟店が運命共同体として、お互いが協力をし合い、ブランド価値を高めていかなければ、この競争が激しく競合他社が乱立するフランチャイズ市場で生き残ることは難しいだろう。