・・・・・続く
中々返してもらえない貸付金、自分の給料も遅れがちで段々不安に感じてきたA社長だがこの状況を打破できず苦しんでいた。担保のないBに担保を要求しても無理な話で、またあまりしつこく言うと嫌がられてしまう。今いろいろとお世話をしてもらっていることもあるのでなかなか言えずにいたのである。
合格トレーニング 建設業経理士2級 Ver.5.0 (よくわかる簿記シリーズ)
- 作者: TAC建設業経理士検定講座
- 出版社/メーカー: TAC出版
- 発売日: 2018/03/24
- メディア: 大型本
- この商品を含むブログを見る
そういう中、勘だけは鋭いBは最近のAを見て借金の催促をされそうな、なんとなく嫌な感じがしたので、すぐに手を打った。それはAの会社を建設会社にしてBの下請けとして取引をするから一までの滞納している給料や貸付金の元利を含めて請求するような仕組みでAを安心させた。その手続きもBが中心となり、専任技術者や経営業務管理責任者もBが紹介して定款変更と建設業許可申請に着手した。
そしてA社長はBの資金繰り担当者として調達の際、窓口となっていた。Bの手形(融通も含む)を発行する権限まで持ち、いつの間にか実印まで自由に扱えるようになっていた。
下請け業者への支払いでは労務費的な支払いは翌月払いが業界の常識であるが、ここは手形をできるがけ使い支払いを先延ばしにしようとしていた。その先延ばしした支払いも遅れることが頻繁で今の工事で嫌気を出し次の工事では取引をしてくれない下請けさんが多く、工事を受注するたびに下請け業者を探索するなどであった。
その酷評も業界に浸透してきて本当に業者探しに苦労していたようである。だから高く仕事の下手な下請け業者しか集まらず、ますますAもBも経営が泥沼状態に陥っていた。
それでも何とか人から金を借りまくりながら会社を存続させていたが、いつまで経っても減らない借金に疲れたのか、誰かが悪知恵を入れたのかは知らないが、今回工事の最終売上入金が月末に入るのを狙って、それを総て引き出し業者への支払いや借金の借手の前から忽然と姿をくらました。
債権者は皆が驚き、事務所に駆けつけたが、もぬけの殻であった。そして三日後に破産申し立ての受任弁護士による張り紙を皆が呆然と見つめるだけになってしまった。
一生懸命頑張って経営して倒産したのなら、やむを得ないが、乱脈経営や詐欺的行為で人から金を借りまくり、個人と法人が別人格であるのを利用して、このような法的手段で処理をしようなんてとんでもない話だ。またこれで免責されることになれば社会正義に反することだと思う。今、被害にあった全債権者が破産管財人に対して再考を促している最中である。