建設業派遣会社の知人から独立したいのでサポートしてほしいと要請があった。知人と言っても、29歳と若い子で、私の以前の取引先で良く可愛がっていた青年である。建設業界専門の派遣会社の営業で経歴は7年あり、同じ年の同僚と意気投合してスピンオフして独立する決意をしたようである。
ビジネスシステムも理解しており、資金的にも準備できそうということで彼らなりに「機は熟した」と思ったようである。自分でもやれる自信も満ち溢れており、そんなに甘くはないことを助言しても決意は揺らがないようである。ある意味頼もしいものである。
創業知識も経営管理に関しては無知なので、私の方でその関連業務の一切は総て受任することとなった。この業界は法改正で基準が厳格となっており2.000万の資金も必要だと伝えたら、資金は大丈夫で、スタート時の派遣人材もあまり大きな声では言えないが、既存の会社からの引き抜きで何とかいけそうだと経営資源の要である人・金の算段は立てている。
人材派遣会社は通常派遣先からもらう料金の3割程度を収益として計上する。50万であれば15万が派遣元会社の取り分である。売上は事業当初は10人を派遣することを想定して計画。社会保険料の負担なども考慮した一人当たりの費用、事務所や商品である人材等の固定費などから損益分岐点を算出して今、事業計画書を作成中である。
建設業界は建設需要が大阪では特に万博やカジノなど一大イベントが目白押しである。人手不足と相俟って派遣需要は高まる一方だが、派遣会社も人材の確保に必死の様相を呈している。派遣会社の人材不足はお客さんはあっても売るものがないといった一番悔しい状態にある。各派遣会社はあの手この手で人集めに奔走している。マス媒体による広告よりもリファラル採用(縁故採用)のように友人からの紹介に力を入れている大手もある。
聞けば一人紹介すれば紹介者に20万円、本人にも就職祝い金として10万支給すると太っ腹である。計算したらマス媒体に年間10億円程度支払っているらしく、そのリファラル採用の方が費用対効果は高いとの試算済みとの事である。実際に数字が物語るので、なるほどなと感心したものである。
こういった需給バランスが乱れた建設業界だが、派遣先の固定客化は必須である。派遣先も業歴の浅い会社は、実績もなく信用度に欠ける。与信で問題があれば取引でも大きな影響になる。その若い子は幾多と営業先を持っていることから自信を持っているようだが、それは今の会社の後ろ盾による顧客であり、後ろ盾を失った若者と取引をしてくれるとは限らない。
慎重に顧客を固定化せねば、いくら人材不足で供給者優位の力関係にあっても事業を継続させるのが困難になる。人材を抱えても派遣先がなければ自社でタダ飯を食わさなければならない状態に陥ってしまう。その点も考えて事業の円滑な立ち上げをしなければならない。
今回、受任して思ったことは、
独立志向を持ち準備している若者だが、物足りない所が多く「本当にやる気があるんか」とダメな所ばかり見てムリと決めつけず、良い一面を見て伸ばしてあげる事が必要だなと感じた。
相手の嫌な所が見えてきたら、あれもこれもと悪い所ばかり見えてくるもの。そういう時こそ良い所を思い出し冷静に考えねばいけないと痛感した。