中小企業診断士/行政書士 中村事務所

飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士です。事業承継の支援も致します。

中小企業の事業承継問題!

中小企業白書によると、最近の事業承継の経営者の就任経緯を見ると、同族承継の割合は減少し、従業員や役員など親族外承継(内部昇格)と同水準の34%となっている。承継方法がこれまでの親族内承継から、親族以外への承継にシフトしてきたようだ。①子がいない、②子がいても継ぎたがらない、③子に経営者としての能力がない、が主な原因になっている。昔と違い家業を絶対に継がなければという意識が希薄になっているようである。

 

事業承継方法別に経営者の交代時期の年齢を見ると、同族承継では69歳、同族承継以外では63歳と同族承継の方が承継時期が遅い傾向にある。

 

一方で承継時の後継者年齢は同族で47歳、同族以外で55歳と同族の方が若い。

 

理由は子などの後継者が、一定の経験やスキルを蓄積するのを待ち承継するから、時期が遅くなるようだ。

現在日本では60%ほどの中小企業が後継者不在に悩んでおり、コロナ禍による業績悪化などが重なり、事業継続を断念するケースが想定されることから、事業承継支援が重要視されている。

 

こうした状況を踏まえ中小企業庁は、従業員承継や第三者承継(M&A )による事業承継を支援する姿勢を強めている。

 


経営者の年齢が上がると、どうしてもリスクを伴った経営判断は敬遠しがちである。そうすると会社の成長発展は難しくなり、従業員も意欲や能力を喚起することが難しくなり生産性が向上しない。

 

経営資源が豊富で、経営意欲のある若手経営者にバトンタッチすることは、日本経済の活性化に大きく寄与することになるはずである。

昔は乗っ取りという悪のイメージがあった企業買収も、今は事業承継対策に活用され国も推奨されていることもあり、今や全体の20%を超える割合にまで上がっている。先述した通り、後継者候補でも「非同族」が36.1%となり、こちらも「子供」を上回り「非同族への承継」が上回り、従業員承継や第三者承継が進んでいることが顕著に数字に表れている。

会社を第三者承継(М&A)にうまく売却できると、下記のようなメリットがある。

①後継者対策②従業員の雇用の継続③今まで培った技術やノウハウが承継できる④買収先の経営資源を活用し、事業の維持・拡大⑤経営基盤が強化できる(非コア部門を売却し、得意分野に集中するなど)⑥ブランド力の強化(譲受企業のブランド力や信用力を活用)⑦創業者利潤が得られる⑧経営者の個人保証の解除、等である。

 

会社に強みや他社との差別化が図れ、競争上の優位性などの特徴があり、買手が買収したがるように会社を磨き上げた会社はスムーズに売却できる。

後継者がいなくても会社を売却できれば事業を存続できるが、そうでなければ廃業を選択せざるを得ない。中には、①廃業費用がないから会社を廃業できない、②経営者の老後の資金がない、等の為に、会社を廃業できずにとずるずる経営しないといけない会社もあるが、そうならないように、自らが経営時にしっかり貯金しとき、老後の事を悩まないようにせねばならない。

売り手側のメリットで今注目されているのは、「経営者の高齢化による後継者問題」の解決である。人材難により後継者がいない、または親族や社内に後継者がいる場合でも、自社株式の承継に伴う税負担やコストに耐えられない。

 

このような課題を抱えている場合でも、上場企業や同業の大手企業をはじめとした経営・財務基盤の強固な信頼できる企業に譲渡することで、事業を継続させる事ができるだけでなく、更なる成長発展も期待することができる。

 

一方で、買い手側の最大メリットとして、「事業成長に必要な時間を買える」という点がある。新規事業への参入や事業の多角化、市場シェアの拡大を目指す場合、ゼロから事業を育てるには膨大な時間とコストが必要になる。

 

でも、M&Aを活用し、事業譲渡や株式譲渡で優良企業(事業)を買収すれば、企業が保有するノウハウや取引先、人材、技術などを継承できるため、時間やコストを抑えて加速度的に自社の事業を発展させることが可能である。

しかし、どちらに於いてもリスクはつきものであり、リスクを洗い出し、リスクの重要度や対策を優先順位をつけて対処していかねばならない。

2025年には団塊世代の経営者がすべて後期高齢者の仲間入りをする事になる。そして70歳を超える経営者は245万社あり、そのうちの半数である127万社は後継者が不在であり、且つ、70歳超えの総数245万社の60%は黒字経営の会社である。黒字なのに後継者不在の為に廃業を余儀なくされるのは地域経済にも大きな痛手である。事業承継の必要性を認識し、早く準備に取り組まなければならない。