外部から招聘された専務が、「金は使っただけ返ってくるもの」どケチで器の小さい創業社長を説得し、成果主義で高額の報奨金という人参をぶら下げ店長を鼓舞した。店長は俄然やる気になって従業員達と共に目標に向け邁進する
集団とみんなが変わっていった。
店長達はみんなが競い合い、報奨金がもらえるように必死に働き続けた。時間で評価されるのではなく業績で評価される制度にみんなが満足し、自ら残業して目標利益を達成しようと頑張った。アルバイトからは自分の残業代が減らされるという不満も噴出したが、店長は達成した報奨金でみんなを食事に招待するなどの気配りをして、何とかアルバイトの機嫌を取っていたのであった。
そして店長達は待遇を改善しやる気を高めてくれた専務を慕うようになったのである。それらが功を奏し、全員が一致団結したこともあり、業績向上を実現できたのである。みんなは、専務を持ち上げ、社内は社長よりも専務中心の体制になり、そういう空気になってきた社内を敏感に感じ取った社長は、疎外感を持ち出してきて社内は不穏な空気が漂うになった。
そして社長と専務の戦いの構図が明確になった。オーナー企業だから社長に逆らうと会社から追放されるのが普通だが、全従業員を味方につけた専務の会社に於ける存在感は大きくなりすぎており、オーナー企業の社長といえ、なかなか自分の思うようにいかなくなっていた。
社内に不穏な空気が漂い、社長色を払拭しようと支持してくれる店長連中を巻き込み躍起になる専務に対して、いちいちケチをつける社長。意思決定も遅延気味になり社内は混乱状態である。営業どころではなく社内政治に必死となり、段々と業績が低下してきた。それでも報奨金制度は継続させていたが、段々と達成できなくなり、今度は店長クラスからも制度に対する不満が続出した。
その為、報奨金の支払い基準のハードルを下げて、店長のやる気を再び起こしていったが、その為に資金繰りが苦しくなった状態に陥っている。
結局、報奨金を払い過ぎて経営が傾き、ついに民事再生を申し立てる事となってしまった。再生計画でスポンサーが決まり新たな社長も着任し、社長も専務も姿を消した。短期・長期の利益バランスを考えずに人事評価制度を設計したお粗末な会社であった。
店長も結局は金の切れ目が縁の切れ目の状態だったという事である。非金銭的動機でも一丸とならねばならない事を痛感した会社であった。
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