中小企業診断士/行政書士 中村事務所

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同族会社も良し悪しがある!

 

同族会社と言えば、身内で経営陣を固めている閉鎖会社と連想する人は多いだろう。中には、一般社員を雇用して経営するも、要職には就かせず、要職にはできが悪かろうがボンボンの我が子を就かせて優秀な一般社員を支えさせる体制を構築する。そういう風に勝手にイメージが形成されているが、税法上96%は同族会社であり殆どが同族が嫌であるといっても過言ではない。

 

 

 

同族会社というと親族で経営しているような会社をイメージすることが多いと思うが、実際の定義はそうではない。同族会社の定義は「会社の株主の3人以下、並びにこれらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社」。

 

つまり、3人以下の会社の株主か、株主と「特殊な関係」を持っている個人、あるいは法人が株主の半分超を所有している会社のことを指のである。ここでいう「特殊な関係」は決して親族だけを指しているものではない。

 

だが一般の人が思う同族会社とはやはり身内で固めた会社と連想するだろう。そういう同族会社は社長の個人財産と事業資産の混同、オーナ一族の傲慢さと会社の私物化、社長の暴走を止めにくい、など悪いイメージを人は強く持っているだろう。

 

分かっていながら入社した社員も、オーナー一族からの疎外感を過剰に意識して、不快感を示している。でも同族で権限が分散していないから、「意思決定が早く長期経営を目指すから経営が安定する」という同族会社の良い面を理解しようとしない一面もある。

 

 

 

私も会社員時代に勤務した外食チェーン企業は、同族会社の中でも身内で上層部を固めた業歴の長いファミリー企業であった。代表取締役会長は祖父、社長は父、専務は母、その他取締役は息子と娘及びその旦那と奥さんと典型的な同族会社であった。

現場を仕切る営業本部長は、誰もが知る有名企業で実績のある人を選定し就かせるなど、ブランド好きのファミリーであった。

 

その営業本部長も一見、三顧の礼でお迎えするような感じで外部から招聘するが、いざやらせてみて、あまり結果を出さないでいると、使えないとすぐ判断しポイ捨てする。数値責任もすべて取らせるなど、高額報酬というニンジンをぶら下げてダメだったらペナルティとして言及すると言ったことを当然のようにやっている。営業本部長曰く、待遇を含めて扱いは非常に失礼だと憤っておられたものである。

 

 

そして責任は取らせる割には権限は委譲しないなど権限と責任は一致しないといけない原則を無視したやり方には呆れておられよく愚痴っていたものであった。予算権や人事権などの権限は総て身内に集中させ、責任だけ取らせるので1~2年サイクルで、営業本部長は入れ替わっていた。

 

一般社員はいくら頑張っても、取締役や本部長にはなれず、せいぜい部長止まりなので上位職を虎視眈々と狙う出世意欲のある人は、数年勤めてキャリアを積んだ後、それを武器に競合他社に転職。そして、スキルアップと出世を実現するというのが、社員の間でパターン化されており、社員養成所のような会社でもあった。

 

だから会社を牛耳るファミリーに忠誠心を持って従事する人は少なく、身内と一般社員には大きな壁があった。結局そういう会社だったから景気がいい時は好業績を上げたが、景気低迷時には極端な業績不振に陥ったものであった。

 

業績が低迷した時には、社員に対して業績が安定するまで減給、及びボーナスは自社のギフト券を支給するなどの現物支給をして、「頑張らないとずっとこういう待遇だよ」と言わんばかりの強引さだ。

 

みんなが渋々とやっている時に、ファミリーたちは高級車を購入するなど贅沢三昧だ。ファミリーも営業本部長を頻繁に呼び叱咤激励してV字改革を目指して対策を講じようとする。

 

 

しかし肝心の社員の心が離れて求心力のないファミリーにはどうしようもできなかったのだろう。結局は債務超過に陥り、民事再生法を使い、法的整理になることになった。

   

 

同族企業のメリット・デメリットとしては、

1.同族企業のメリット

 

・経営の中心メンバーが家族であることにより、チームとしての力が高まりやすく、意思決定や実行が素早く進む

・ 後継者候補となる者が現経営者の子どもであることから、企業の雰囲気や内情に通じやすい。結果、後継者育成が順調に進む可能性が高くなる。

・ 自社株の保有が身内に限られるため、第三者に経営を脅かされる可能性が低い。

 

2.同族企業のデメリット

・ 「会社の信用=現経営者(特に創業者)個人の信用」であることから、経営者の交代以降、会社の取引が不安定になりやすい ・ 相続と事業承継が複雑に絡むため、相続問題により経営者一族が「争族」になった場合には、会社経営そのものに危機が訪れる可能性がある

・ 相続を繰り返すにつれ、気心の知れた身内で保有していた株が、徐々に遠い親戚に承継されることで、会社の経営基盤が危うくなる恐れが生じる

・ 後継者にふさわしい人物が身内にいなかった場合、会社の存続が危ぶまれる。

 

<まとめ>

これらから分かるように、人をモノのように扱う同族企業の終焉は惨めなものである。一方で人を大切にして良い社風を創出した同族企業の成長は目を見張るものがある。社員自らが率先して働き、絶えまぬ業績向上への挑戦といった企業文化や風土のある会社は経営陣が黙っていても成長するもの。会社は箱よりもその中身である人が大切である。箱は金で買えても、人の心とやる気は金だけでは買えない。

 

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