前回から続く・・・・・・
融資に失敗した社長は工事が止まることを恐れて、下請けへの支払いはできるだけ優先するが、下請の中でも資金繰りが潤沢した会社を調べ上げ延滞を要請し、同時に友人・知人やサラ金からの借入で何とか賄っていた。
金が底をつきどうしても支払うことができなくなると、開き直る社長であった。催促する下請けに、「仕事をもらっている分際で何を言う。」と態度が豹変するが、それはあくまでも担当者に言うセリフで、社長自らは逃げ回るのである。
支払いの時は立場が逆転する関係となる。財務担当者を下請けからの批判の窓口にし、雲隠れする社長。支払いより売上入金の方が少ないという状態が続き、そうなるのが分かっていても動かない怠け者の社長でもあった。
通常は支払日に支払い原資がないことが事前に分かって入れば前もって資金対策を講じたり、スポットの仕事を引き受けきて支払い原資を確保する手段を講じて何とかしようと考えるものだが、それをせず、いざとなったら開き直り下請けに我慢を強いるなど平然と下請けいじめをする。
下請けも支払いをまともにされないのが分かっているから、見積もりの段階でその立替金利を充当させるべくそれらを上乗せした数字を見積書に乗せている。だからこの会社の外注費用はいつも高く、それも低利益の原因となっている。
またある時は、何度も支払いを遅らされ激怒した業者が、直接社長に電話してもいつも居留守を使われるので、財務担当者に直談判に来た。そして手形を渡すということで解決したものの、その業者が期日に手形を銀行に預けるのをうっかり忘れてしまったらしい。
期日の二日後に連絡があり、財務担当者がその旨を社長に説明すると、「それは業者が悪い」と言って、その決済用にお金を口座に入れていた分をすぐに引き出し、他に流用したそうである。結局、その業者への支払いはまた先延ばしにされたのである。財務担当者はこの件で、もうこの社長の人間性についていけないと辞めていった。
一般的には大概の建設会社は下請けを鉄骨や塗装など工事の機能ごとに組織化しているのが通常であるが、この会社はこういう支払い状況なので、長期継続的な取引をしてくれる下請けが少ないので下請けの電話番号リストはやたらと多い状態である。今回一緒に仕事をしても次はしないという下請けが多いから番号リストが膨らんだ状態となっている。
新人担当者が新たな工事の下請けを編成する時に、最近仕事をしてくれた会社にお願いするとみんな異口同音に断られるので、過去の電話リストを頼りに引き受けてくれる会社選びをしていた際に、電話すると、「もうお宅と取引するのはこりごりです。だからうちの電話番号がリストにまだ乗っているなら消しといてください。」と言われる等、過去の取引実績が全くの無意味な状態の会社である。
何だかんだと言いながら何とか経営で来ていた会社だが、受注工事にトラブルが発生し、決まっていた三か月後の大口工事もキャンセルになるなど、先行きの見通しが全くできなくなってきた。
続く・・・・・・・・・・