・・・・・・・前回から続く
4)事業のライフサイクルの問題
会社や事業にはライフサイクルがある。「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」という成長カーブになるが、事業承継の時期が「成熟期」若しくは「衰退期」に重なってしまうものである。
5)謙虚な気持ちのなさ
親の業績の良い家業や企業を甘い蜜を求めた子が継いだために潰すパターンは多い。ピラミッドの頂点を経営者に例えると、創業者は従業員と仕入先の土台に支えられて、今の自分があるのはこの人達が支えてくれているからの思いがある。だから従業員とその家族、及び仕入れ先に一番感謝している。また資金繰り支援をしてくれる金融機関などにも、感謝の気持ちを忘れない。そういう謙虚な姿勢が周りの人達から更なる支援を頂けるといった好循環が生まれているのだ。これらの事を経営理念に掲げている会社が多いのは当然だろう。
それらに対して、業績の良い家業や企業を継ぐ3代目息子達は本質的にずる賢さ(狡猾さ)を持っていて、自分は創業の時などの苦労も知らずに落下傘で降りて来て頂点にいるので、従業員や仕入れ先に支えられていることを理解してしない。その謙虚さのなさが周囲の人達の協力を得られなくなり、経営が悪化しても、手を差し伸べる人がいなくなるのである。
6)相続が絡む親子間の事業承継
経営者が所有する株式の構成比(平均)を経営者の代数別(何代目の経営者に 当たるか)に見ると、その構成比は、創業者の平均で75.2%であったが、4代目以降の平 均では59.4%と低下している。したがって経営者の代数を重ねるに連れて、遺産相続などで経営者の所有する株式が分散し、構成比が低減していることが推察される。
経営に関与しない後継者以外の相続人への対策を講じていないと株式分散による支配権が弱体化して経営がスムーズにいかない例が散見される。
他方で、小規模企業は中規模法人に比 べ、経営者の代数を重ねても経営者の株式構成比の低下は少なく、経営者に一定程度株式が集約されているのが特徴といえる。
(まとめ)
創業者は、全てが初体験で手探りのなかで会社を興し、失敗と成功を繰り返しながら事業を成長させている。二代目は創業者の背中を見ながら経営の勉強をしているが、三代目は既にレールが敷かれた上で経営を踏襲した二代目を見て育っているので、会社経営の本当の厳しさや苦しさを体験していない。
また創業者は失敗を繰り返すが従業員、お客さん、仕入れ先の協力の元、事業を成長させ今日に至っている。だからその人達への感謝の念を忘れない。しかし3代目当たりからは創業の苦労を知らず育ち、ずる賢いのでその人達への扱いがぞんざいだ。
その結果、従業員へは給料を払って生活させている、仕入れ先には買ってやっている、と横柄な態度だ。承継時にはこの点の教育や躾が必要だ。事業が成功しても決して奢らず、常に謙虚な姿勢で人と接していれば、困った時に助けてもらえるし、その人柄でまた新たなビジネスチャンスが得られることとなるだろう。
経験を積み重ねる事で、経営技術の熟練度は高めないといけないが、気持ちの部分は、」初心忘るべからず」で頑張ってほしい。