「会社は初代が大きくし、2代目が傾け、3代目が潰す」とはよく聞く。中小企業を倒産させるのは、三代目が6割と最も多く、二代目・三代目社長を足すと9割を超えているとの事だ。
一方で「初代が会社の礎を築き、二代目はそれを発展させ、三代目は新境地を拓くもの」との表現もよく用いられ、永続的な成功発展を目指す会社もある。要は後継社長が勘違いすると会社は潰れるとの事である。中小企業の事業承継がいかに難易度の高いかが、この点からも理解できる。
三代目が潰す場合に共通している原因は、
1)三代目社長としての自覚と意欲不足
三代目は創業者から見れば孫。世間でよくあるように祖父から見て孫は可愛いものである。息子である二代目には厳しく、経営理念や仕事の厳しさを叩きこむが、孫には甘く厳しい事をあまり言わない。
二代目も自分の嫌な経験から、息子には自分が受けた苦痛な思いを味合わせたくない事からあまり言わない。
孫の三代目はその苦労を知らないし、甘やかされて育っているので、その苦労や経営の厳しさを知ろうとも思わない。
そういった風に、二代目はとりあえず、創業者の苦労を目の当たりにしてるし、軌道に乗るまでの苦労や貧しさを子供時代に家族として少なからず体験しているから、経営の厳しさを頭と体で習得している。
しかし、3代目は幼少期から苦労を知らず、創業者が苦労して立ち上げたことを知らずに社長業を務めている。父である二代目社長からの伝聞はあるだろうが、実感がつかめていないのが実情だ。
単純に既得権益の上にあぐらをかいてるだけで、敷かれたレールに乗っかっているだけである。
その為、逆風に弱く、不測の事態に対する対応力もないから、会社を潰してしまうのだ。自ら創業した会社ではなく、先祖から引き継いだだけなので、会社に対する思い入れもない所もある。
もちろん先祖代々の家業を自分の代で潰してなるものかという責任感のある三代目もいる。
2)事業を取り巻く環境変化
事業環境から分析すると、創業者から三代目社長に至るまでの時間は50年~60年が一般的。とすると、三代目社長が承継したビジネスモデルは、半世紀前のものであり、時代に合わなくなっているものもある。
もちろん変わらぬモノを求めるニーズもあるだろうが、一般的には嗜好やニーズの変化に柔軟、且つ、迅速に適合させなければ市場から淘汰されることになる。
三代目社長は、祖父や父親の時代からのビジネスモデルに何の疑問も抱かずに会社を受け継ぎ、問題意識のないまま、敷かれたレールに乗っているだけが多い。
気づいても変える勇気がない三代目もいる。ここ数年のビジネスを取り巻く環境変化は激しい。半世紀も立てば、尚更だ。この時流に乗れなかった事による事業価値の陳腐化は致命傷だ。
一方で、現状を否定して変えたがる三代目もいる。こういう3代目は、収益に対しての責任感や関心はあっても、これまでの歴史や企業風土を無視した自分色の改革を行いがちなところが周りの反感を買うのである。特に優秀な3代目社長であればあるほど、この傾向が強い。
この時の3代目社長の考えや意見がどれだけ正しくても、何かを変えようとすれば、誰かの仕事の内容が変わるもの。この変化を、従業員は普通、嫌いものである。
誰しも従来のやり方の方が慣れていて楽だから変えようとしない。それを変えろと命令されると自然に抵抗勢力になってしまうものだ。現状維持をみんな好むもの。仕事は絶えまぬ改善努力が必要とスローガンに掲げてもみんな中々動かない。
また、愛社精神の強い従業員ほど、変革は創業者や2代目社長を否定することにつながるので相当な反発をしてくるのである。そういった抵抗勢力に屈して頓挫するか、やっても骨抜きの改革に終わるものだ。
目に見える成果が上がらないと、ややこしいことを言うだけの面倒なダメ社長というレッテルを張られ会社内での立場を失うことになる。その結果、社内に不穏な空気が漂い、業績低下を招き潰れていくケースもある。
・・・・・・・続く