「パワハラ」だけが問題ではない。「パワハラ」と違う「クラッシャー上司」も今話題になっている。会社にはいろいろとそういった厄介な存在の人がいるようだ。好んでその会社に入って、将来その仕事で生きていこうと目的を定めても、自分を取り巻く職場環境にそういう人物がいたら、たまったものではない。その結果、仕事に専念できなくなり、離職を余儀なくされる。新卒で入って最初に世話になる上司で人生が左右されることも多いだろう。
クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち (PHP新書)
- 作者: 松崎一葉
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2017/01/13
- メディア: 新書
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「わかっているよな」「空気を読めよ」「あまり言わせるなよ」など、過剰な労働や命令などで部下をつぶす「クラッシャー上司」はけっこう周りを見渡せばいる。
パワハラ上司と違う点は、クラッシャー上司は仕事ができるという点だ。また自分の行動が業績を上向かせ、組織の利益につながっているという自負が強い。その為、自分の行いを善と考え、突っ走ることが事態を悪化させている。一方で被害を受ける側も「自分を育てるために厳しいことを言ってくれている」と洗脳されるケースも多い。そういった心のマネジメントもクラッシャー上司はうまいのである。
クラッシャー上司を生み出す原因は会社にもある。従業員からそういう不満が頻発し、組織の和が乱れることを懸念しても、そのクラッシャー上司は優秀であるため、会社は利益貢献度の高いそのクラッシャー上司に苦言を呈することができないこともある。
要は、大勢の従業員達の不満とクラッシャー上司の機嫌を損なうことを、比較してどちらを選択する方が会社にとって利益になるかを考え決断するのである。その結果、会社組織としては利益を優先し、そのクラッシャー上司を処罰できないことが多い。
これらが常態化すると、組織の一体感は低く、組織に対する無関心度は高くなる。そういう傾向の組織は、崩壊するのは時間の問題である。終身雇用制度の崩壊やインターネットによる迅速な情報収集と発信の時代などで、他社の情報もすぐ入手できて自社との比較で嫌気さす人も多い。
また愚痴の聞き手や相談の乗り手もSNSでは多く存在し、それらに誘発されて離職を検討する人も増えている。そうやって組織に対する忠誠心が、低下していくことも大きな要因だ。
クラッシャー上司が存在する原因として、人材の選定にも問題がある。安定経済成長の時代ならいいが、均一な人材の選定と育成による、人材の同質化はクラッシャー上司が得意分野とする部下管理であり、だから温存させることになる。
今の不確実性の時代には想定外のことが起こる時代でもあり、柔軟に、且つ、迅速に対応させる為には単一の発想に拘束された組織ではなく、多様性を持った人の集団が強いのは当然だ。
外国人や女性の役員登用・シニアの積極採用など人材の多様化が進展する中、社員の同質化より個性や独自性も求められる現在である。同調圧力を求める職場環境ではクラッシャー上司に活躍の機会を与えるばかりである。
これらを排除し、個人の特性や個性に応じた適材適所な人員配置をする事に変えることが、クラッシャー上司を生まない組織の土壌として重要になるだろう。総ては発想の転換である。
私が勤務時代もそういう上司がいた。相当な不満があって、仲のいい同僚や言いやすい他部署の上司に相談しても、この「仕事ができて業績向上に貢献度が高い」上司には誰も文句が言えないのである。それを分かって傍若無人な振る舞いをするその上司をみんな嫌っていたのである。
普通なら誰もついてこないためにその上司も自分がやりたい仕事ができないだろうが、社内で絶対的な地位を持っていたので強制的にやらせることができたのである。しかしその上司も結局は、業績に陰りが見えてきた時に、社長にこの上司の酷評が耳に入り、その結果、降格されてついには辞めていく事となった。
「上司は絶対」という威光を背景に部下を恐れさせ、無理やり従わせたり、こき使っていれば、いずれその罰を受けることになる。「因果応報」である。