ある老舗外食企業が民事再生の申し立てをした。その社長は人柄が良く仕事も一生懸命な人だったが、市場環境の変化に適合できなかったのである。私もいろいろな経営不振企業を見てきたが、こうやって再建型の倒産手続きが円滑に進むのは珍しい。
- 作者: アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシー,西浦裕二
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2009/12/17
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その会社は支援したいとの会社も多く存在し、取引先や顧客、そして何よりも従業員達が再生に向けて必死である。そして、その会社は事前にスポンサー企業からの支援を確約した上での、「プレパッケージ型」の申請をした。
プレパッケージ型=民事再生手続を裁判所に申し立てる前に、スポンサー候補や事業譲渡先が決まっている場合の民事再生手続きのこと。スポンサーが事前に決定していれば、スポンサーから支援表明やDIP(debtor in possession)ファイナンスを受けることができ、再生企業の信用を保全した状態で再建を実施することが可能となり得る。
個人保証で銀行に自宅を担保に取られていたが、銀行は長年の取引で十分利益を受けてきたからと担保権を行使せず。温情ある話だ。もちろん銀行も債権者としての経済合理性も考慮した上の事だろうが、何よりも社内の合意形成の中で、担当者のこの会社を何とか助けたいという強い思い等、そういった熱意が上層部に伝わった上での決定であろう。
この会社は、仕入れ先からも前向きな協力が得られ、何より多くのお客様から応援メッセージを頂くなど強固な顧客基盤が存在し、支援先企業を含め、多くの利害関係者を味方につけられたのが大きい。
そして従業員達も当面の給料の減額を快く受け入れてくれ、皆が一致団結して再生に取り組む姿勢を強く感じたものである。
もちろん、不採算店舗は閉めざるを得ず、その閉店店舗の従業員・顧客・地域の皆さんは非常に残念がっておられた。後ろ髪を引かれる思いだったが、また会社の業績が上がり、出店できる財務基盤が整えば、また帰ってくるとの約束をして閉店した。
皆は会社のV字改革を目指し、「自分の事より会社の復活を」をスローガンに一生懸命働き、また色々な知恵を出し合って、お客さんが魅力を感じる企画などイベントも定期的に実施した。
その効果があって、売上が上がってきており、以前の好況時に近い状況にある。今はまだ再生に取組み中だが、一日も早く再生し、銀行への恩返しや再生に協力してくれたみんなに、恩返しをしたいとその社長は言っていた。こういう会社の再生は間違いないだろう。