「企業は人なり」と言うが、特に労働集約型産業の飲食店は人の管理が大切である。
人手不足の飲食店が応募に飢えた状況の中、せっかく来た応募者を逃がすまいと簡易な面接で済ませ、「取りあえず入れてダメならすぐ辞めらそう」という店がある。
そんな安易な考えは禁物だ。辞める人間は店の環境を悪くし、他の従業員の士気を下げて出ていくもの。また権利意識が強く店の不当解雇に徹底抗戦して、裁判沙汰になりかねないので要注意だ。
基本は「当たり前のことが当たり前にできる普通の人を採ること」である。店でのパートのキーパーソンを面接に立ち会わせるなど採用プロセスに関与させることも重要だ。
「勝手にいれて後は任せる」ではその中核人材もあまり育成に力を入れないだろうし、人を採用する重要な任務を任せることで店での存在感と経営への参画意識を持ってもらうことができる。
そして店側に立ってもらうことで店との対立を回避できることもある。100点の人を採るのではなく赤点の人を絶対に避け、平均点の人を採ることを心がければいいと思う。自己アピールが強い人は積極的でいいかもしれないが、協調性に欠けるなど難点もあるので気をつけよう。
モラルの低い飲食店の中には、「従業員はとことん使い倒す」を方針にしている店がある。常に求人媒体誌に掲載しており、人をモノ扱いにしている。
調子の良いことばかり言って店の実態を知らないアルバイトに虚偽の説明ばかりしている。近隣の店と比べ高い時給を売り物にしているので、応募はけっこうあるようだ。
長続きしない従業員による、その場しのぎの運営では店の先行きは暗い。従業員満足=顧客満足という事を認識せねば。従業員は消耗品ではない。その内、悪評が浸透して応募がなくなるだろうが。その前に裁判沙汰になり社会から敬遠されるかだから気をつけないといけない。
飲食店で従業員に長時間労働を日常的にさせていると、トラブルも多く発生する。特に飲食店で致命的なトラブルが食中毒である。
飲食店での「食中毒」は店の存続を不可能にする大事件だ。どの店も地域密着でやっており、そんな食中毒の噂が流れたら狭い地域に一瞬で伝わるもの。
ましてやSNSを使えば、これもまた一瞬で多くの人に拡散されてしまい店の継続が困難になる。
ロードサイドの郊外型で車での流動客が多いと感じる店でも売上の8割は地元客であることを認識しなければならない。
いくらマニュアルで衛生管理の仕組みがあっても、過重労働の環境の中、調理師も注意力散漫になり食中毒を起こしてしまうものだ。
多額の資金を投入してきて築き上げたのに、一つの過ちで総て水の泡になることは悲しい話だ。飲食店で食中毒を起こせば店が終焉するという意識を思って経営しないといけない。
(まとめ)
今まで述べてきたように、飲食店経営は簡単なように見えるがけっこう大変な商売である。人の能力とやる気が業績を大きく左右させる業態なので、人・モノ・金の経営資源の中でも特に人に気を使うもんである。また飽きやすい惚れやすいお客さんを相手に商売する以上、店が陳腐化することは許されない。
継続事業の為に、運営上、色々な創意工夫の仕方があるが、個々の店の適性に応じた施策を講じて、「食を通じて社会貢献する」という飲食店経営の基本に立ち返り頑張ってもらいたいものである。