中小企業診断士/行政書士 中村事務所

飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士です。事業承継の支援も致します。

事業承継は待ったなしだ!(6)

(前日より続く)

*事業承継後に後継者が求められるスキル

 

後継者が事業承継後、確実に求められるスキルとしては、事業を運営していくために財務や法務・税務を含めた実務的な経営ノウハウが挙げられる。将来に向けて、会社・事業を維持・成長させていくためには、経営戦略やマーケティ ング、第二創業の可能性の分析などを含めた自社の分析能力も必要となる。

 

(1)事業運営に必要な実務スキル ◦決算書の見方など財務に関する知識 ◦企業経営、事業承継に必要な税金の知識、企業法務の知識、 ◦人事・労務の知識 、コンプライアンス

 

(2)企業存続に必要な分析・判断能力 ◦業界の動向、見通しなどを踏まえた自社の経営環 境の分析 ◦経営戦略・マーケティング分析 ◦第二創業プランの策定 ◦利益・資金計画策定 ◦リスクマネジメント

 

 

?4訂版?税理士が見つけた!本当は怖い事業承継の失敗事例55 (失敗から学ぶ実務講座シリーズ)

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*経営権の分散防止に向けて

 

1)事業承継に伴う経営権の分散リスク

事業承継で自社株式の保有者が分散

会社の経営権を安定させるためには、後継者に集中的に自社株式を承継することが望ましいが、遺産分割協議の結果や他の相続人からの遺留分減殺の請求によって、自社株式の保有者が分散してしまう リスクがある。また、個人事業主では、事業用資産について分散リスクがある。だから経営者が生存しているうちの事前の対策が望ましい

 

先代経営者の生前に、後継者に集中的に自社株式を譲渡するといった事前の対策が理想的。自社株式を後継者に集中させる道筋を付けておかないと、相続発生後は、遺産分割が終了するまで遺産は相続人で 共有されるので、遺産分割協議に時間を要した場合などは事業承継の実行が長期化するリスクがある。

 

一方で、自社株式が分散してしまった場合の対策としては、自社株式の買取りに係る特例措置の活用などがある。生前ならば税金対策も豊富にある

 

自社株式や事業用資産の生前贈与には贈与税が課税されるが、年間110万円の基礎控除がある暦年課 税制度や、生前贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する相続時精算課税制度、贈 与税の納税が猶予・免除される事業承継税制を活用することで、贈与税の負担軽減を図ることが可能。

 

 

2)自社株式の生前贈与

生前の対策で確実に承継 、自社株式の分散を防止するための最もシンプルな方法は、経営者が生きているうちに後継者へ承継を進めておくこと。 スムーズな事業承継には早期かつ計画的な取組が欠かせないが、自社株式や事業用資産の生前贈与は経営者の意思で確実に実行できる。生前ならば税金対策も豊富にある

 

自社株式や事業用資産の生前贈与には贈与税が課税されるが、年間110万円の基礎控除がある暦年課税制度や、生前贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する相続時精算課税制度、贈与税の納税が猶予・免除される新事業承継税制を活用することで、贈与税の負担軽減を図ることが可能だ。

 

少数株主の存在で経営上困ること

(1)株式買取を請求された

(2)株主代表訴訟のリスクがある

(3)100%保有ないとM&Aがやりにくい

(4)会計帳簿閲覧請求を 受ける 株主総会が混乱する

(5)株主から役員に するよう要請を受けた

 

 

3)安定株主(役員・従業員持株会など)の導入

(安定株主の導入が株式の円滑な承継に有効)

 

自社株式が分散するケースとして、後継者がすべての株式を取得することは税負担の問題で難しいため、他の相続人等に承継させることがある。

この場合、経営者の他に安定株主を導入する方法が有効。安定株主が一定割合の株式を保有する場合、経営者は、安定株主の保有株式を合計して安定多数の議決権割合を確保でき、経営を安定化することができる。また、後継者が承継する株式の数も減らすことができる。

1963年に法律に基づいて設立された政策実施機関「中小企業投資育成株式会社」は、これまで5,000 社超の中小企業に投資を行っており、長期安定株主としてスムーズな事業承継を支援している。 ①株式会社の設立に際して発行される株式の引受け ②増資に際して発行される株式の引受け ③新株予約権の引受け ④新株予約権付社債の引受け  ※必要に応じて、企業が保有する自己株式の取得や追加投資も可能 ⑤コンサルティング

 

【安定株主】…安定株主とは、基本的に現経営者の経営方針に賛同し、 長期間にわたって保有を継続してくれる株主のこと。安定株主の候補 としては、役員・従業員持株会、中 小企業投資育成株式会社、金融機関、取引先などがある。

 

 

使う?使わない?新・事業承継税制の活用法と落とし穴 平成30年度税制改正

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4)遺言を作成する

■ 遺言書を作成する際の留意点

全財産の相続人を指定する遺言にすべての財産について相続 人が指定されていれば遺産分割協議の必要はない。最後に「その他一切の財産は○○に相 続させる」という一文を入れることで記載漏れもなくなる。

遺留分を考慮した内容 ⇒遺留分を侵害する内容は、相続人 の遺留分減殺請求の原因となる。相続させる財産に差をつける場合、その理由を書いておくことで、相続人が受け入れやすくなるケースもある。

あいまいな表現は避ける 表現があいまいだと、いろいろな解 釈ができるので、トラブルの原因と なります。登記簿などを確認しなが ら、明確な表現で遺言書を作ること。

 

遺言はスムーズな事業承継に役立つ⇒先代経営者が遺言を残しておくことは、相続争いや遺産 分割トラブルを回避することに有効。後継者には株式 や事業用資産、ほかの相続人には事業に関係のない資 産や現金などを相続させるというように、経営者の意思に適った相続が期待できる。 遺言がない場合、遺産の配分は相続人たちの遺産分割協議を経て決定するので、結果として自社株式や事業用資産が分散してしまったり、協議がまとまらずに相続争 いに発展してしまったりするケースもある。そうすると経営に支障をきたすこととなり従業員・顧客・取引先など多くの人に迷惑をかけることになる。

5)遺留分減殺請求を踏まえた生前対策

相続人には相続財産の一定割合を相続する権利がある

相続人(配偶者、子、直系尊属)には法律上、相続財産の一定の割合を相続する遺留分の権利が認められている。後継者だけにすべての財産を相続させて、それ以外の相続人には一切残 さないというような、遺留分への配慮を無視した贈与・遺言などは、他の相続人からの遺留分減殺請求を招く一因となる。

 

 

院長先生の相続・事業承継・M&A 決定版[第2版]

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経営承継円滑化法に基づく遺留分に関する民法の特例

遺留分に関する民法の特例⇒経営者の生前に対策を実施。将来の紛争防止のために、経営承継円滑化法に基づく遺留分に関する民法の特例が設けられている。

除外合意⇒後継者を含めた推定相続人全員の合意の上で、先代経営者から後継者に贈与等された自社株式について、一 定の要件を満たしていることを条件に、遺留分の算定の基礎となる相続財産から除外するなどの取り決めが可能 です。これにより、後継者が確実に自社株式を承継することが可能。

固定合意⇒ 経営者の生前に、後継者が他の推定相続人全員と「後継者に贈 与された自社株式等の評価額」について、遺留分の算定では合意時の株式等の評価額で固定することを合意すること。

 

・・・・・続く

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