中小企業診断士/行政書士 中村事務所

飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士です。事業承継の支援も致します。

日本の消費者の消費行動は欧米とは違う!(上)

日本の小売市場は134兆円(2018年)で3年連続拡大基調が続いている。しかし小売りも少子高齢化による人口減少、EC事業者による勢力拡大で小売市場の環境は大きく変化している。コンビニ・ドラッグストア・スーパー・家電量販店・ディスカウントストア・百貨店・ホームセンター・専門店など多様な業態が限られたパイを奪い合い、業態間競争が活発になっている。

 

サービス小売業で活路を開こう: 売上げ日本一ではなくサービス日本一を目指す (MyISBN - デザインエッグ社)

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絶望を希望に変える勇気

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欧米の小売企業が、なかなかわが国市場に進出・定着できず、逆に撤退する大手が多い。圧倒的な規模を背景として世界的な調達力と優れた小売り技術を持っているのに、日本ではその優位性を発揮できないのはなぜか。その理由として、もっとも重要と思われるのは、日本の生活者の食文化と食習慣や購買行動にある。

 

日本人は、ほぼ毎日、鮮度の高い食材(生鮮3品)を食べる。しかも、一口に鮮魚といっても、地域によって異なる多彩な産品と、季節ごとに異なる旬のものがある。野菜も、地域ごとに食する種類は大きく異なり、また季節ごとに食する種類は異なる。

 

小売再生 ―リアル店舗はメディアになる

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生鮮3品における「鮮度と多様性と旬」の存在は、わが国の伝統的小売業を形づくる基礎的要因だ。戦後生まれたチェーン経営を軸とする食品スーパーも、この「鮮度と多様性と旬」の壁をなかなか越えることはできなかった。

 

 

リアル店舗の逆襲~対アマゾンのAI戦略~

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歴史を振り返れば、スーパーマーケットが出始めた頃、1960年代から70年代にかけて、「スーパーは、安かろう、悪かろう」と言われたが、それはこの壁を越えることができなかった事が原因である。それを打破する為に、店舗内に広いバックヤードをとり、個人の職人技としてではなく組織として生鮮を扱う設備技術やノウハウを蓄積したのは80年代のことである。

 

小売業のグローバル・イノベーション

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その時期を境にして、それまで「鮮度と多様性と旬」の扱いにおいて圧倒的な優位を誇ってきた小売市場や商店街の生鮮3品の商店が、生鮮食品に特化したスーパーマーケットとの競争に苦戦することになる。

 

「鮮度と多様性と旬」のある商品を扱うための技術に加えて、もう一つ、速い商品回転率の経営を確立する必要がある。加工食品や日用雑貨商品のように本部で一括して大量・安価に仕入れて、チェーン各店で売り減らすという手法は、この種の商品には通じない。

 

できる限り在庫を切り詰め、次々に商品に入れ替えるスピードがカギになる。商品回転率志向の経営は、世界の大手小売企業の目指す方向ではない。たとえば、世界のウォルマートと日本のイトーヨーカ堂の回転率の違いを見ればわかる。在庫回転率では、イトーヨーカ堂のほうが倍くらい高い。他方、販売管理費ではウォルマートが、売上高割合で10%ほど低い。

 

この結果を見ると、ウォルマートが調達力とコスト削減力を背景にして競争優位を確保する経営であること、そしてイトーヨーカ堂は速い商品回転率で勝負していることがわかる。

 

回転率におけるこの大きな違いは、同じ小売業と言っても、やり方に根本的な違いがあることを示すものである。世界の大手小売企業が日本に適応しようと思えば、自らが展開してきた経営の流儀を根本から変えないといけないということになる。

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・・・・・続く

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