中小企業診断士/行政書士 中村事務所

飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士です。事業承継の支援も致します。

飲食店を甘く見てはいけない!

 

ある中小企業の社長の弟が飲食店をやりたいという相談を受けた。その社長は最近、本業の調子が良くご機嫌で「失敗してもいいからやってみろ。金はあるから」と気持ちが相当大きくなっているようで心配である。

 

 

 

 

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その社長と弟はたまたま郊外型の大型店の居抜きがあって既に下見に行ったきたらしい。「いきなり大型店かい」と思ったが知人の紹介で破格の条件でできるとの説明だったらしい。

 

坪当たりの単価も安く造作物譲渡もタダ当然らしいが、実際に営業をした時の空調代や店が大きいから人手も必要で、人件費などのランニングコストを考慮すれば、イニシャルコストが低くても採算が取れないだろう。ましてや今は人手不足で大型店を廻すだけのアルバイトを確保するだけでも困難であろう。

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地域における需要と競争の実態を見極めて、立地選定をしないと金をどぶに捨てるのも一緒だ。行列ができるくらい来店客があるのであれば、量産効果で固定費負担も軽減されるが、そんな一人勝ちが持続できるほど世の中甘くない。

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  中小企業診断士/行政書士 中村事務所HPhttp://www.nakamura-shindanshi.com

 

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必ず模倣した店舗が近隣にオープンし、売上が落ちていくパターンを私は何度と見てきた。飲食店はよっぽど腕に自信があり絶対に真似されない商品力を持ち、またお客さんもそれを評価した話題ある店であればともかく、模倣の繰り返しの業態特性であることを理解しなければならない。

 

特に企画ものは、あるチェーン店が成功して話題を集めたら、すぐに競合他店が模倣して、その先駆者企業の企画に価値(価格や内容)を付加して追随するものだ。極端に先行者利益が期待できない業態である。

 

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しかしそれが分かっていながらも、追随する競合他店に対する対抗策が価格や割引クーポンしかないといった現実も生じてくるのが実態である。接客などでの差別化にお客さんが満足してくれればいいのだがなかなか伝わらないものだ。また新たにそれらを模倣して、進出する新規出店企業に対しても参入障壁をつくることが、難しいのが実情で本当に熾烈な戦いである。

 

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以前、ある飲食店を経営するオーナーは土日になると、長蛇の列ができる自店を見て優越感に浸っていた。ある日、いつものように繁忙状態の週末に、お客さんが溢れて待つのを嫌い、他店に行かれるのを見ていたオーナーが、その機会損失を勿体ないと感じ、隣の空き地を買い取り増設する計画を立てた。

 

しかし平日は大したことなく、忙しいのは週末や祝日だけの状態で、失う売上とその売上を取りに行く為の設備投資による固定費の増大などを分析し、相談を受けた私が、精度の高い採算シミュレーションを作成し説明をして反対した。

 

目先の損とその売上を取るがために失う将来の損失を必死に説明したのだが、どうしてもやりたいオーナーが、私と同様に反対する人達の制止を振り切り、強行する決断をされた。

 

反対もあった為に、着手から開業まで意思決定を含め、けっこう時間を要し結局1年3か月かかった。その間にそのうまみのある外食市場を狙って同じような店が、近隣に2店舗オープンし、結局8か月で閉めてテナント貸しにすることとなった。

 

飲食業は簡単そうでそんなに甘くないことを失敗から学ぶか、若しくは業界に精通した人から教わるか、どちらかを謙虚な姿勢で耳を傾けなければ致命傷となるだろう。